七難八苦は「多くの災難や苦難が重なること」という意味です。
七難八苦はよく聞く四字熟語ですが、「なぜ七と八が付くんだろう?」と気になりませんか?
この謎は、七難八苦の由来を見ればわかるんです!
そこで、今回は七難八苦の意味から由来まで詳しく解説していきます。
☆「七難八苦」をざっくり言うと……
読み方 | 七難八苦(しちなんはっく) |
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意味 | 多くの災難や苦難が重なること |
類義語 | 四苦八苦 艱難辛苦 千辛万苦 七転八倒 |
英語訳 | series of disasters(重なる災難) a chapter of accidents(不運が重なる時) など |
「七難八苦」の意味
多くの災難や苦難が重なること
七難八苦は、七つの困難と八つの苦しみが同時にやってくるほど大変な状況を表す時に使います。
七難八苦は『観音経(かんのうきょう)』という経典が出典の仏教語です。
『観音経(かんのうきょう)』にはそれぞれ「七難」と「八苦」について詳しく記されています。
ここからは「七難」と「八苦」に分けて見ていきましょう。
「七難」の意味
七難とは、以下のような7つの困難のことを指します。
- 火難(かなん)
様々なことに欲を出すことで起きる困難 - 水難(すいなん)
欲に依存することで起きる困難 - 羅刹難(らせつなん)
欲に流されてしまうことで起きる困難 - 刀杖難(とうじょうなん)
自分を完全に信じられないことで起きる難 - 鬼難(きなん)
欲が次々と芽生えることで起きる困難 - 枷鎖難(かさなん)
欲に捉われてしまうことで起きる困難 - 怨賊難(おんぞくなん)
欲を怖がることによって起きる困難
七難はどれも人間の欲望がもととなって起こる苦難です。
「八苦」の意味
八苦とは、以下の八つの苦しみのことです。
- 生(せい)
生まれる苦しみ - 老(ろう)
老いる苦しみ - 病(びょう)
病気を患う苦しみ - 死(し)
死ぬ苦しみ - 愛別離苦(あいべつりく)
愛する人と別れる苦しみ - 怨憎会苦(おんぞうえく)
怨み憎しむ者に会う苦しみ - 求不得苦(ぐふとっく)
欲しいものを手に入れることができない苦しみ - 五陰盛苦(ごおんじょうく)
精神的現象から苦しみが盛んになること
この8つの苦しみはいつどこで生まれても必ず経験するものだと考えられています。
「七難八苦」の使い方
七難八苦は大変な状況があった時のことを表します。
「大変な状況を乗り越えてここまでやってきた」というポジティブなニュアンスで用いられる場合が多いです。
具体的な例文を見ていきましょう。
- 七難八苦の人生があったからこそ、今の自分に繋がっている。
- 実家が火事に見舞われ、さらには恋人に振られた私は、まさに七難八苦だ。
- いかなる時も七難八苦に打ち勝ち、必死に生きてきた。
- 願わくば我に七難八苦を与えたまえ
❹の例文「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」は戦国時代の武将、山中鹿之助の言葉です。
山中鹿之助は尼子(あまご)家の家臣でした。
ある時、尼子家は毛利家の策略によって窮地に立たされてしまいます。
そんな時に、「尼子家が再興できるなら、たとえ私にどんな苦難が降りかかっても構わない」という強い決意を表して、「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」と言ったのです。
「七難八苦」の類義語
七難八苦には以下のような類義語があります。
- 四苦八苦(しくはっく)
非常に苦労すること - 艱難辛苦(かんなんしんく)
非常な困難や苦難にぶつかって苦しむこと - 千辛万苦(せんしんばんく)
さまざまな苦しみのこと - 七転八倒(しちてんばっとう)
ひどく苦しんで転げ回ること、何度転んで起きてもまた倒れること
類義語としてあげた4つ全てに、困難や苦難という意味が含まれています。
「四苦八苦」の意味:非常に苦労すること
四苦八苦は「非常に苦労すること」という意味です。
四苦は上で紹介した八苦のうち、前半の4つの苦しみ(生・老・病・死)のことを表します。
四苦八苦は合わせて12の苦しみと言うわけではなく、全部で8つで、四苦では前半の4つの苦しみのみを表すのです。
「艱難辛苦」の意味:非常な困難や苦難にぶつかって苦しむこと
艱難辛苦とは、「非常な困難や苦難にぶつかって苦しむこと」という意味です。
艱難は「非常な困難で苦しむこと」、辛苦は「辛い目にあって苦しむこと」という意味です。
同じ意味の熟語を2つ合わせることで、苦しみを強調しています。
「千辛万苦」の意味:さまざまな苦しみのこと
千辛万苦は「さまざまな苦しみのこと」という意味です。
「千」「万」はそれぞれ数がとても多いことを表します。
「七転八倒」の意味:ひどく苦しんで転げ回ること
七転八倒は「ひどく苦しんで転げ回ること」という意味です。
「七」「八」はそれぞれ数が多いことを表します。
立つたびに転び倒れるような苦難の多い状況を指します。
「七難八苦」の英語訳
七難八苦を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a series of disasters
(重なる災難) - a chapter of accidents
(不運が重なるとき) - extreme difficulty
(非常な困難) - seven defects and eight agonies
(7つの失敗と8つの苦悩) - seven misfortunes and eight pains
(7つの不幸と8つの痛み)
「人生で事故が起こる章」という意味が転じて、「重なる災難」という意訳になります。
また、 “seven defects and eight agonies” と “seven misfortunes and eight pains” はそれぞれ七転八倒を直訳した表現です。
伝わる可能性はありますが、英語圏で一般的に用いられている表現ではないため注意しましょう。
補足:数字が2つ付く四字熟語
七難八苦と同じように、数字が2つ付く四字熟語には以下のようなものがあります。
- 一進一退(いっしんいったい)
良くなったり悪くなったりすること - 一日千秋(いちじつせんしゅう)
とても待ち遠しいこと - 一石二鳥(いっせきにちょう)
ひとつの行為からふたつの利益を得ること - 一攫千金(いっかくせんきん)
一度に大金を手にすること - 唯一無二(ゆいいつむに)
たったひとつしかないこと - 二束三文(にそくさんもん)
わずかなお金 - 二人三脚(ににんさんきゃく)
2人で共通した目的に向かって励むこと - 三寒四温(さんかんしおん)
冬に寒い日が3日続くと暖かい日が4日続く、ということが繰り返される現象 - 三々五々(さんさんごご)
人やモノがバラバラに集まったり散らばったりすること - 朝三暮四(ちょうさんぼし)
①目先の差にこだわって結局同じ結果であることに気づかないこと
②言葉でうまく相手をごまかすこと - 四捨五入(ししゃごにゅう)
4以下は切り捨て、5以上は切り上げる端数処理方法のこと - 五臓六腑(ごぞうろっぷ)
人間の内蔵全体のこと - 七転八起(しちてんはっき)
いくら失敗してもまた立ち上がること - 八面六臂(はちめんろっぴ)
ひとりで何人分もの働きをしてのけること - 九死一生(きゅうしいっしょう)
ほとんど助からないほど危険な状態 - 十中八九(じゅっちゅうはっく)
ほとんど - 十人十色(じゅうにんといろ)
好みや性格や考え方などがひとりひとり異なること - 海千山千(うみせんやません)
ものの裏側まで知り抜いたしたたか者 - 千変万化(せんぺんばんか)
さまざまに変化すること - 千差万別(せんさばんべつ)
さまざまに違って同じでないこと
数字が2つ付く四字熟語はこれ以外にもたくさんあります。
ちなみに、数字が2つ付く四字熟語では後ろの数字が促音(「っ」のこと)になることが多いです。
たとえば、七難八苦の場合は「しちなん”はち”く」ではなく、「しちなん”はっ”く」と読みます。
「七難八苦」のまとめ
以上、この記事では七難八苦について解説しました。
読み方 | 七難八苦(しちなんはっく) |
---|---|
意味 | 多くの災難や苦難が重なること |
類義語 | 四苦八苦 艱難辛苦 千辛万苦 七転八倒 |
英語訳 | series of disasters(重なる災難) a chapter of accidents(不運が重なる時) など |
「山あり谷あり」とはよくいったものですが、長い人生ではきっと七難八苦の経験をすることもあるでしょう。
それでも困難を乗り越えることで、きっと次の自分に繋げることができます。