今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「海千山千(うみせんやません)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類語、英語訳についてわかりやすく解説します。
このページの目次
「海千山千」の意味をスッキリ理解!
「海千山千」の意味を詳しく
「海千山千」は、「多くの経験を積んで、物事の表も裏も知り尽くしており、ずる賢いこと」「狡猾(こうかつ)なこと、また、そういった人のこと」を表す四字熟語です。どちらかといえば、マイナスの印象を与える言葉です。
よくこの四字熟語を「経験豊富なこと」「多くの物事に通じている人」といった意味で使っている人がいますが、それは誤用です。
確かに「経験豊富な」という意味は含んでいますが、本質はそこではありません。厳密には、「(様々な経験を積んでおり)ずる賢いこと」「とても狡猾(こうかつ)なこと」という意味を表すことに注意しましょう。
「海千山千」の使い方
この四字熟語は「ずる賢い」という意味ですから、一筋縄ではいかないような物や、曲者に対して用いることが多いです。以下に使い方の例を挙げてみましょう。
- 海千山千の詐欺師に、多くの財産を騙し取られた。
- あの部長は海千山千の曲者(くせもの)だから、用心した方が良い。
- 海千山千の商人と交渉しても、時間の無駄だ。
使うときに注意したいのは、先ほども述べたようにこの言葉は相手を褒める言葉ではない、ということです。相手の駆け引きの巧みさを、皮肉を込めて称える場合などでは褒め言葉として用いられる場合もありますが、基本的には相手に悪い印象を与える言葉だと覚えておきましょう。
目上の人には使わない方が無難ですね。
「海千山千」の由来
「海千山千」は、伝説上の生物である「竜」にその由来を持つ言葉です。
中国の故事には、「海に千年、山に千年住んだ蛇がいれば、その蛇は竜になる」というものがあります。
古来より蛇は世界中で「再生」や「永遠」の象徴とされてきました。もちろん、現実の蛇はそこまで長い間生きられるわけではありません。
しかし、「もしも海に千年間、山に千年間住み続けるような特別な蛇が存在したとすれば、多くのことを経験したその蛇は、竜へと進化する」という言い伝えからこの四字熟語が誕生しました。
現在では「経験豊富」という意味から転じて、「ずる賢い」という悪い意味で使われていますが、言葉の意味とは時代とともに変わるものです。私たちよりも後の世代では、違う意味の言葉になっているかもしれませんね。
「海千山千」の類義語
海千山千には以下のような類義語があります。
- 怜悧狡猾(れいりこうかつ):悪賢いこと。
- 海千河千(うみせんかわせん):ずる賢く、狡猾なこと。
- 百戦錬磨(ひゃくせんれんま):多くの経験を積んで技術を磨くこと。
- 千兵万馬(せんぺいまんば):経験豊富でしたたかなこと。
- 飽経風霜(ほうけいふうそう):世渡り上手で、したたかなこと。
「海千山千」には聞いたことのある人も多い「百戦錬磨」をはじめとして様々な類義語があります。共通しているのは、「多くの経験を積むことで、技術やしたたかさを身につける」という意味です。
このような意味を含んでいる熟語は、「海千山千」の類義語と言えますね。
「海千山千」の対義語
海千山千には以下のような対義語があります。
- 浅学寡聞(せんがくかぶん):知識があまりなく、経験が乏しいこと。
- 口尚乳臭(こうしょうにゅうしゅう):まだ年が若く、経験が足りないこと。
「経験豊富でずる賢い」という意味である「海千山千」の対義語ですから、当然「経験が浅い」「知識が乏しい」といった意味の四字熟語が当てはまります。
「海千山千」の英語訳
海千山千を英語に訳すと、次のような表現になります。
- as cunning as Captain Drake
(ドレイク提督のように老練な) - an old fox
(年老いた狐)
ドレイク提督とは、16世紀のイギリス人海軍提督であるフランシス・ドレイクのことを指しています。
彼はイギリス人として初めて地球を一周した人物であると同時に、当時異常な強さを誇っていたスペインの無敵艦隊(かんたい)を破った人物でもあります。
英語圏ではそんな彼の功績を称えて、日本語の「海千山千」にあたる表現に彼の名前を用いています。
“an old fox”という表現は、「狐」という言葉が使われています。日本にも「狐に化かされる」という言葉があるように、狐には「ずる賢い」「狡猾」といったイメージがあると言えます。
そう考えると「年老いた狐」は、「海千山千」がその由来を長い年月を生きて年老いた蛇に持つように、「経験を重ねておりずる賢い」ものだとわかりますから、「海千山千」の同義語だと理解できますね。英語で会話する際には、ぜひ使ってみましょう。
「海千山千」の中国語訳
「海千山千」を中国語に訳すと、次のような表現になります。
(豊富な経験の結果、物事の裏側まで知り尽くしていて、ずる賢いこと)
・奸诈狡猾
(ずる賢い)
・老奸巨滑
(ずる賢い)
まとめ
以上、この記事では「海千山千」について解説しました。
読み方 | 海千山千(うみせんやません) |
---|---|
意味 | 経験豊富でずる賢いこと |
由来 | 中国に伝わる故事 |
類義語 | 怜悧狡猾、海千河千、百戦錬磨など |
対義語 | 浅学寡聞、口尚乳臭など |
英語訳 | as cunning as Captain Drake, an old foxなど |
「海千山千」は経験が豊富で熟練しており、一筋縄ではいかないようなものや人物に対して使います。
現在は悪い意味で使われていますが、1つのことに熟練している人物というのは脅威であると同時に頼もしい存在でもありますよね。
ずる賢くなるべきだ、とは言いませんが、何かに熟練し、「これなら負けない」というものを持った人間になりたいものですね。