今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「付和雷同(ふわらいどう)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「付和雷同」をざっくり言うと……
読み方 | 付和雷同(ふわらいどう) |
---|---|
意味 | 自分の意見をもたずにむやみに他人に賛同すること |
由来 | 『礼記』の一説で、雷にあらゆるものが共鳴して音を立てることから派生 |
類義語 | 阿附雷同、軽挙妄動、唯々諾々など |
対義語 | 志操堅固、堅忍不抜、和而不同など |
英語訳 | To follow the herd(大勢に従う)など |
このページの目次
「付和雷同」の意味をスッキリ理解!
「付和雷同」の意味を詳しく
「付和雷同」とは、自分の意見をもたずに、他人の意見にすぐ同調することを意味します。
「安易に他人の意見に賛成する」というネガティブなニュアンスで用いられることが多いです。
空気が読める、心遣いができて控えめである、などのポジティブなニュアンスで用いられることはありません。
「付和雷同」を構成する熟語には以下のような意味があります。
- 付和:他人に賛成すること
- 雷同:雷が鳴ったときに物が共鳴して音を立てること
「付和雷同」は雷が鳴った時に物が共鳴して音を立てるように、他人の意見にすぐ同調することを指すのです。
「付和雷同」の表記
「付和雷同」には以下のような表記があります。
正しい表記 | 付和雷同 |
---|---|
別の表記 | 雷同不和 |
附和雷同 | |
誤った表記 | 不和雷同 |
不破雷同 |
「付和雷同」の使い方
「付和雷同」には以下のような例文があります。
- 上司に気に入られるために付和雷同しても、自分の意見がなければ出世はできないだろう。
- ただ付和雷同するのではなく、他人の意見も尊重しながら自分の考えを述べることが重要だ。
- 政治家は国民の意見を尊重すべきだが、国民の意見に付和雷同するのは良くない。
上記の例文のように、「付和雷同」は自分の意見を持たない人を批判する目的で用いられることが多いです。
①の例文では、上司の意見に常に賛成して機嫌をとろうとしても、出世には繋がらないということを述べています。
②の例文では、人の意見を認めつつも、自分の考えも伝えることのバランスの重要性を説いています。
「付和雷同」の由来
付和雷同は、古代中国の書物である『礼記(らいき)』の中の話が由来となっています。
『礼記』には、以下のような文章があります。
「勦説する毋かれ、雷同する毋かれ(そうせつするなかれ、らいどうするなかれ)」
これはつまり、他の人の説を盗んであたかも自分の説のようにしてはいけないということであり、他の人の意見にむやみに賛成してもいけない、という意味です。
この時代でも、人の意見に簡単に流されないことが難しかったことがわかります。
しかし、これは頑な(かたくな)に自分の意見を突き通すべきである、という教えではありません。
人との良好な人間関係を心掛けるけれども、その場かぎりに無責任に賛成したりしないことが重要だということです。
『礼記』は、儒教が尊重する5つの経典のうちのひとつです。
これは主に礼(人は道徳的にどのような行いをすべきか)の倫理的意義について解説した古い節が集まった本です。
「付和雷同」の類義語
付和雷同には以下のような類義語があります。
- 阿付雷同(あふらいどう):何も考えずに他人の意見に従うこと
- 軽挙妄動(けいきょもうどう):軽はずみな、むこう見ずの行動をすること
- 唯々諾々(いいだくだく):人の言いなりになり、何事にも従うこと
- 雷同一律(らいどういちりつ):人の意見にむやみに賛同すること
- 付和随行(ふわずいこう):他人がするままに同調し、行動すること
- 優柔不断(ゆうじゅうふだん):ぐずぐずしていいて物事の決断ができないこと
- 他力本願(たりきほんがん):他人に頼って物事をしようとすること
- 党同伐異(とうどうばつい):道理に関係なく仲間に味方して対立する人を攻撃すること
- 吠影吠声(ほうえいほうせい):根拠のないうわさでも誰かが言い始めると周りの人たちも言いふらして真実のように広まること
- 大勢順応(たいせいじゅんおう):他人の意見に安易に同調すること
- 尻馬に乗る(しりうまにのる):分別なく他人に同調すること
- 同じて和せず(どうじてわせず):すぐほかの人に同調すること
- 長いものには巻かれろ:権力者には従っておくべきということ
- 一鶏鳴けば万鶏歌う(いっけいなけばばんけいうたう):ひとりの意見につられて多くの人が同調し、世の中に広がること
- 盲目的(もうもくてき):分別がないこと
- 百依百順(ひゃくいひゃくじゅん):何でも人の言いなりになること
- 盲従(もうじゅう):自分で判断することなく従うこと
自分の意見をもたないことは良くないことであるということが、付和雷同と共通しています。
「付和雷同」と「優柔不断」の違い
「優柔不断」とは、「ぐずぐずしていて決断が遅い」という意味です。
「付和雷同」と「優柔不断」には以下のような違いがあります。
- 付和雷同:他人の意見にすぐ同調すること
- 優柔不断:決断をすぐにできないこと
意味が大きく異なることがわかります。
ただ、「優柔不断」な人は自分の意見を決められないため「付和雷同」になることが多いです。
「付和雷同」と「他力本願」の違い
「他力本願」とは、「他人に頼って物事を行おうとすること」という意味です。
「付和雷同」と「他力本願」には以下のような違いがあります。
- 付和雷同:他人の意見にすぐ同調すること
- 他力本願:物事を行う時に他人のちからをあてにすること
意味が大きく異なることがわかります。
「付和雷同」と「唯々諾々」の違い
「唯々諾々」とは、「人の意見にすぐ同調すること」という意味です。
「付和雷同」と「唯々諾々」には以下のような違いがあります。
- 付和雷同:(自分の意見がないまま)他人の意見に同調すること
- 唯々諾々:(自分の意見はあるが)他人の意見に同調すること
「付和雷同」と「唯々諾々」は自分の意見を持っているかが異なるのです。
「付和雷同」と「長いものには巻かれろ」の違い
「長いものには巻かれろ」は「権力が大きい人には従っていたほうが良いということ」という意味です。
「付和雷同」と「長いものには巻かれろ」には以下のような違いがあります。
- 付和雷同:ネガティブなニュアンス
- 長いものには巻かれろ:ネガティブなニュアンスはない
「付和雷同」には「何も考えずに他人の意見に従っている」というネガティブなニュアンスがあります。
しかし、「長いものには巻かれろ」は「権力者には従っておいたほうが良い」という教訓であり、ネガティブなニュアンスはないのです。
また、「付和雷同」する相手は権力者とは限りませんが、「長いものには巻かれろ」の対象は必ず権力者になります。
「付和雷同」の対義語
付和雷同には以下のような対義語があります。
- 志操堅固(しそうけんご):志や考え、主義などを堅く守り、何があっても変えないこと
- 堅忍不抜(けんにんふばつ):辛いことに負けず、我慢強く心を動かさないこと
- 独立独歩(どくりつどっぽ):他人に頼らず自力で信じる道を進んでいくこと
- 初志貫徹(しょしかんてつ):初めに決めた志を最後まで突き通すこと
- 剛毅木訥(ごうきぼくとつ):意志が強く容易に屈しないこと
- 泰然自若(たいぜんじじゃく):落ち着いていて何事にも動じないこと
- 和して同ぜず(わしてどうぜず):他人と協調するが、安易に同調することはないこと
これらの四字熟語は、「付和雷同」とは違い、自分の意見を曲げないことを美徳としています。
「付和雷同」の英語訳
付和雷同を英語に訳すと、次のような表現になります。
- To get(jump) on the bandwagon
(一方に加担する、勢いのある側に味方する) - To follow the herd
(大勢に従う) - follow others blindly
(盲目的に他者に従う) - agree with people without thinking
(安易に多数派に賛成する) - follow suit without reflection
(顧みることなく人のまねをする)
英語の表現では、日本語の「付和雷同」に比べて、「無責任であり、かつ卑怯である」という印象がやや強くなります。
「付和雷同」の中国語訳
「付和雷同」を中国語に訳すと、次のような表現になります。
- 随声附和
(他人の言うことに合わせる) - 人云亦云
(自分の意見を持たず、他の人の考えを自分の言葉かのように言う) - 没有主见
(自分の意見を持たない)
まとめ
以上、この記事では「付和雷同」について解説しました。
読み方 | 付和雷同(ふわらいどう) |
---|---|
意味 | 自分の意見をもたずにむやみに他人に賛同すること |
由来 | 『礼記』の一説で、雷にあらゆるものが共鳴して音を立てることから派生 |
類義語 | 阿附雷同、軽挙妄動、唯々諾々など |
対義語 | 志操堅固、堅忍不抜、和而不同など |
英語訳 | To follow the herd(大勢に従う)など |
日本では、和を乱さないように心がけることが美徳とされてきましたが、競争社会の中で勝ち残るためには自分の志を曲げないことも必要です。
これらのバランスを上手く取りながら人と接することが、人間関係を良好に、かつキャリアを積むための秘訣と言えます。