四字熟語「心頭滅却(しんとうめっきゃく)」の意味と使い方:例文付き

言葉

心頭滅却とは「心から余計な考えがすべて取り払われた状態」という意味です。

この四字熟語は仏教用語であるため、生活の中で見聞きする機会は少ないですよね。

そのため、「聞いたことはあっても、意味は知らない」という方が多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、心頭滅却の意味や使い方、由来、類義語などについて詳しく解説します。

「心頭滅却」の意味

心頭滅却しんとうめっきゃく

心から余計な考えがすべて取り払われた状態

心頭滅却は仏教用語で、「心が無になった境地に到達する」ことを表します。

心頭と滅却には、それぞれ以下のような意味があります。

  • 心頭
    心の中
  • 滅却
    全てなくす

そのため、心頭滅却は、「心の中のものを全てなくす」ということを表しているのです。

なお、心頭滅却は、“心そのものをなくすこと” を表しているのではありません。

“心にある余計な考えを取り払って、心を整えること” を表しているため、意味を取り違えないようにしましょう。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味

「心頭滅却すれば火もまた涼し」は、心頭滅却という言葉が含まれる故事成語です。

この故事成語は、「心を無にすれば、火の熱さでさえも涼しく感じられるほど、苦しみを感じなくなる」という意味です。

まれに、心頭滅却を「心頭滅却すれば火もまた涼し」の省略形として使う場合もあります。

なお、「心頭滅却すれば火もまた涼し」を「気温の暑さを我慢して克服する」という意味で使う人もいますが、この意味合いは本来は誤りです。

故事成語「心頭滅却すれば火もまた涼し」の意味と使い方:例文付き

「心頭滅却」の使い方

心頭滅却は、「心頭滅却する」という言い回しで使うことがほとんどです。

具体的な例文を見てみましょう。

  1. 悟りをひらくためには、心頭滅却することが大切だ。
  2. 私はあの日、心頭滅却して剣道の試合に挑んだ。
  3. 心頭滅却すれば、人生が良い方向に進むはずです。
  4. 誰も愛さず、それこそ心頭滅却に似た恬淡(てんたん)の心境だったのですが…
    [出典:太宰治『風の便り』]
  5. 心頭滅却すれば火もまた涼しだから、余計な考えをなくせば心も強くなる。

心頭滅却はもともと仏教用語ですが、日常生活でも「心を無にして集中する」というニュアンスで使われることがあります。

また、心頭滅却は自分自身に対してではなく、他人に注意を促す際にも使います。

「心頭滅却」の由来


心頭滅却の由来は、杜荀鶴(とじゅんかく)が書いた漢詩『夏日題悟空上人院(かじつだいごくうしょうにんいん)』にあります。

杜荀鶴は、中国の唐の時代を生きた詩人です。

杜荀鶴が書いた『夏日題悟空上人院』は、仏教の修行がテーマになっている詩です。

詩の内容は以下の通りです。

【原文】

三伏閉門披一衲

兼無松竹蔭房廊

安禅不必須山水

滅却心頭火自涼

【書き下し文】

三伏(さんぷく) 門を閉ざして 一衲(いちのう)を披(き)る

兼ねて松竹(しょうちく)の房廊(ぼうろう)に蔭(かげ)をする無し

安禅(あんぜん) 必ずしも 山水(さんすい)を須(もち)いず

心頭滅却すれば 火自おのずから涼し

この詩を簡単な現代語訳に直すと、以下のようになります。

現代語訳
暑い中でも、僧侶はきちんと僧衣を着る。

この寺には、部屋や廊下を覆うような松・竹がない。

安らかな気持ちで座禅を組むには、山水が必ず要るというわけではない。

心を無の状態にすれば、火も自ずと涼しく感じるものだ。

つまり、『夏日題悟空上人院』では、「心から余計な考えをなくせば、火の暑さを感じられなくなるほどになる」ということを説いています。

この詩に心頭滅却という言葉が登場したため、1つの言葉として定着しました。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の由来

故事成語「心頭滅却すれば火もまた涼し」の由来も、心頭滅却と同様です。

上記で紹介した漢詩『夏日題悟空上人院』の、以下の部分が元となって、「心頭滅却すれば火もまた涼し」という故事成語になったのです。

心頭滅却すれば 火自おのずから涼し

日本で「心頭滅却すれば火もまた涼し」が定着したのは、戦国時代の禅僧・快川紹喜(かいせんじょうき)にまつわる逸話があるからです。

快川紹喜は武将・武田信玄(たけだしんげん)に招かれ、武田家の相談役を務めていた人物ですが、以下のような経緯で亡くなったのです。

快川紹喜の逸話
1582年、武田軍と織田・徳川軍が戦う「長篠(ながしの)の戦い」が起きる
※織田軍:織田信長が率いる軍
※徳川軍:徳川家康が率いる軍

快川紹喜は、自身が住職を務める恵林寺に武田家の人物をかくまっていた

織田軍に「かくまっている人物を引き渡せ」と要求されるが、快川紹喜は引き渡しを断った

この拒否によって織田軍は怒り、恵林寺を焼き討ちにした

炎から逃げきれなくなった快川紹喜は、「安禅は必ずしも山水をもちいず。心頭滅却すれば、火おのずから涼し」と言って火の中に飛び込み、弟子たちの前で亡くなった

つまり、快川紹喜は『夏日題悟空上人院』の一節を引用して亡くなったのです。

このエピソードは現代でも有名であるため、心頭滅却だけでなく、「心頭滅却すれば火もまた涼し」も有名な言葉となっています。

「心頭滅却」の類義語

心頭滅却には以下のような類義語があります。

上記の言葉はすべて、心から余計な考えをなくすことを表します。

そのため、心頭滅却の類義語といえます。

なお、無念無想は、「自分の意思をもっていない」というネガティブな意味で使われることもあります。

「心頭滅却」の対義語

心頭滅却には以下のような対義語があります。

心頭滅却は「心を無にした状態」を表しますが、上記の言葉は「心に余計な気持ちがある状態」を表しています。

そのため、これらの言葉は心頭滅却の対義語といえます。

なお、仏教の世界では、「煩悩」は人間の心身を悩ませ汚すものとして嫌われ、避けられます。

特に「強欲さ」「憎悪」「迷い・惑い」の三つは三毒と呼ばれ、悟りを妨げるものとされています。

「心頭滅却」の英語訳

心頭滅却を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • clearing one’s mind of all mundane thoughts
    (ありふれた考えをすべて消し去ること)
  • innocent
    (無心の)
  • unselfish
    (無欲の)
  • calm
    (落ち着いた)

英語圏は、仏教をバックグラウンドに持つ国は少ないです。

そのため、心頭滅却と完全に一致する英語訳はありません。

なお、心頭滅却に近い考え方として、キリスト教の聖書で “Leave your heart(無心でイエス様に従って)” という言葉が見られます。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」の英語訳

「心頭滅却すれば火もまた涼し」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • Clear your mind of all mundane thoughts, and you will find even fire cool.
    (ありふれた考えをすべて消し去りなさい。そうすれば、火さえも冷たく感じられるほどになるだろう。)
  • If you have established your own philosophy, nothing will trouble you as if you would feel fire cool.
    (悟りを開けば、火さえも冷たく感じられるほどに、何も悩みがなくなる)
  • Suppress your self, and even fire is cool.
    (自己を抑えなさい。そうすれば、火さえも冷たく感じられるほどになる。)

「心頭滅却」のまとめ

以上、この記事では心頭滅却について解説しました。

読み方心頭滅却(しんとうめっきゃく)
意味心から余計な考えがすべて取り払われた状態
由来杜荀鶴が書いた漢詩『夏日題悟空上人院』
類義語明鏡止水
無念無想
則天去私 など
対義語疑心暗鬼
意馬心猿
煩悩 など
英語訳clearing one’s mind of all mundane thoughts
(ありふれた考えをすべて消し去ること)
innocent
(無心の)
unselfish
(無欲の) など

心を研ぎ澄ませたいとき、心頭滅却という四字熟語の意味を思い出してみましょう。