今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「行雲流水(こううんりゅうすい)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
このページの目次
「行雲流水」の意味をスッキリ理解!
「行雲流水」の意味を詳しく
「行雲」は空を移動する雲を、「流水」は流れる水を指します。
つまり、「行雲流水」は、空や水のように決まった形をもたず、自然が移り変わるものを指すのです。このことから、「行雲流水」には「物事に深くこだわらず、ただ自然の成り行きに身をまかせること」という意味があります。また、雲や水のように、自由気ままな旅人などを例える語としても用いられます。
さらに、禅宗では、いろいろな国を修行する僧のことを行雲流水といいます。その際には、行雲流水を省略して「雲水(うんすい) 」ともいいます。
「行雲」と「流水」の順番を入れ替えて、「流水行雲(りゅうすいこううん)」ともいいますが、一般的には「行雲流水」の方がよく使われます。
「行雲流水」の使い方
- 全力を尽くしたのだから、あとは行雲流水のごとく、自然に身をまかせるしかない。
- 出家した者はみな、物事への執着がなくなり、行雲流水の境地に達する。
- 姉は行雲流水な人で、一年の半分は日本にいない。
①と②の例文では、行雲流水を、「物事にこだわらず、自然に成り行きをまかせること」という意味で使用しています。
③の例文では、姉が「自由気ままに行動する」ということを、行雲流水という語で表現しています。
行雲流水は、前向きな意味で使われることが多いといえます。ちなみに、坂口安吾(さかぐちあんご)の小説にも、『行雲流水』という題名の作品があります。
「行雲流水」の由来
行雲流水の出典は、『宋史(そうし)』に収録されている「蘇軾伝(そしょくでん)」です。
11世紀後半の北宋に、政治家であり文学者でもある蘇軾という人がいました。
蘇軾は、推官(すいかん)という役職に就いた与謝民(しゃみん)に、『与謝民師推官書(しゃみんしすいかんにあたうるのしょ)』という文書を贈りました。
文書の内容は、「文を作るときは空を行く雲や流れる水のように、決まった形があるわけではない。自然の成り行きに任せ、行くべきところへ行き、止まるべきところで止まるのだ」というものです。
水や雲のように流れに任せれば、良い文章が書けるという意味です。つまり、行雲流水とは、もとは文章を書くときの心構えだったのです。そこから、より広い意味で使われるようになりました。
「行雲流水」の類義語
行雲流水には以下のような類義語があります。
- 雲水行脚(うんすいあんぎゃ):僧がいろいろな国を巡り歩きながら、仏教の修行をすること
- 雲遊萍寄(うんゆうひょうき):物事に執着せずに、自然にまかせて行動すること
- 雲水不住(うんすいふじゅう):雲や水のように、一か所にとどまらないこと
- 一所不住(いっしょふじゅう):一定の場所に住まないでいろいろな国を回ること
上に挙げた類義語はすべて、行雲流水と同じく、禅宗の僧を意味します。
「雲水行脚」の「行脚(あんぎゃ)」とは、僧が修行のために旅をすることです。「雲遊萍寄」の「萍(ひょう)」とは、浮き草のことです。
「雲水不住」の「不住」は、文字通り、一か所に住みとどまらないことを意味します。
「行雲流水」の対義語
行雲流水には以下のような対義語があります。
- 定雲止水(ていうんしすい):雲も水も止まった静かな状態
「行雲流水」の英語訳
行雲流水を英語に訳すと、次のような表現になります。
- floating with the tide
(行雲流水、自然にまかせる) - let it be
(なるがままに) - let it go
(あるがままに)
“floating with the tide” の “float” は「浮く」という意味の動詞です。また、 “tide” は「潮(しお)の流れ」という意味の名詞です。
つまり、「潮と一緒に浮かぶ」というような意味です。自然に身をまかせるという意味ではぴったりな英語訳です。
まとめ
以上、この記事では「行雲流水」について解説しました。
読み方 | 行雲流水(こううんりゅうすい) |
---|---|
意味 | 物事にこだわらず、自然に成り行きをまかせること。また、自由気ままに行動すること |
由来 | 『宋史』の「蘇軾伝」にある『与謝民師推官書』 |
類義語 | 雲水行脚、雲遊萍寄など |
対義語 | 定雲止水など |
英語訳 | floating with the tide(行雲流水、自然にまかせる) |
物事にこだわらず、自然体で生きることは、簡単なことではありません。
しかし、いろいろな経験をしたり、年を重ねたりすることで、行雲流水な生き方ができるようになるでしょう。