今回ご紹介する言葉は熟語の「俯瞰(ふかん)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・対義語・英語訳・同音異義語についてわかりやすく解説します。
☆「俯瞰」をざっくり言うと……
読み方 | 俯瞰(ふかん) |
---|---|
意味 | 高所から見下ろして、眺めること |
類義語 | 鳥瞰、展望、客観、など |
対義語 | 仰望、仰視、近視眼的、など |
英語訳 | overlook(見渡す)など |
「俯瞰」の意味をスッキリ理解!
「俯瞰」の意味を詳しく
「俯瞰(ふかん)」には以下のような2つの意味があります。
- 【物理的に】高いところから見下ろして、眺めること
- 【比喩的に】物事を客観的、または広い視野で見ること
それぞれの意味について、「俯瞰」の漢字の意味と一緒に詳しく見ていきましょう。
意味①:【物理的に】高いところから見下ろして、眺めること
「俯瞰」とは、高いところから見下ろして、眺めることを指します。
一般的に、山頂や建物、空などとても高いところから、街や下界を眺める際に使われます。
たとえば、山の頂上から下の景色を見下ろすような、あるいは高い建物から下を見下ろすイメージです。
意味②:【比喩的に】物事を客観的、または広い視野で見ること
「俯瞰」は比喩的に客観的に物事を捉えること、または広い視野で物事を見ることという意味を表します。
この意味は、ビジネスシーンで用いられる場合が多いです。
「俯瞰」の漢字の意味
「俯瞰」の漢字にはそれぞれ以下のような意味があります。
- 俯:下を向く
- 瞰:高いところから下を眺める・見下ろす
ちなみに、「俯瞰」はどちらも常用漢字ではありません。
そのため、新聞など常用漢字の使用が求められる場面では「ふかん」とひらがなで表記します。
「俯瞰」の使い方
「俯瞰」は以下のような言い回しがよく用いられます。
- 俯瞰的
- 俯瞰する
- 俯瞰して見る
- 俯瞰の目を持つ
- 俯瞰図
- 俯瞰撮影
- 俯瞰視点
- 俯瞰力
- 俯瞰風景
それぞれの言い回しについて、例文と一緒に詳しく見ていきましょう。
「俯瞰的」の使い方
「俯瞰的」は「物事を客観的に見る」という意味で用いられます。
比喩的に使う「俯瞰」とほぼ同じ意味です。
「俯瞰的に〇〇する」という形で用いられることが多いです。
ちなみに、「俯瞰的に見る」は二重表現なので、用いないほうが無難です。
- 俯瞰的に考えると、この事業計画は詰めが甘い。
- 状況を俯瞰的に解釈するのがニュースを見るポイントだ。
「俯瞰する」の使い方
「俯瞰する」は「高いところから見下ろす」という意味の時に使われることが多い表現です。
まれに「物事を客観的に見る」という意味で用いられることもあります。
- 高層ビルから俯瞰する夜景はとても綺麗だ。
- 高所から俯瞰すると、人がちっぽけな存在に思えてくる。
- 社会の流れを俯瞰する。
「俯瞰して見る」の使い方
「俯瞰して見る」は「物事を客観的に見る」という意味で、ビジネスシーンで用いられることが多い表現です。
ちなみに、「俯瞰」には「見る」という意味が含まれているため、「俯瞰して見る」という表現は厳密に言えば二重表現です。
二重表現は間違いとされることが多いですが、「歌を歌う」など、あまりにも一般的になってしまって、誤りと言えなくなってしまったものもあります。
「俯瞰して見る」は正確には間違った表現なのですが、一般的に用いられているため、使っても特に間違いを指摘されることはないでしょう。
「俯瞰の目を持つ」の使い方
「俯瞰の目を持つ」は「物事を客観的に考える視点を持つ」という意味です。
「俯瞰の目を持つべきだ」という形で、視野が狭くなっている人にアドバイスする言葉として用いられることが多いです。
- 上司の君こそ俯瞰の目を持つべきだ。
- 俯瞰の目を持つ人はマネジメントに向いている。
「俯瞰図」の使い方
「俯瞰図」とは、地面を上空から斜めに見下ろしたような形式の画像やイラストのことです。
たとえば、以下のような画像が「俯瞰図」になります。
地形や建物の立体感を効果的に見せることができるので、よく用いられています。
「俯瞰撮影」の使い方
「俯瞰撮影」とは、料理や洋服などを真上から撮影する手法のことです。
写真として映えるため、SNSなどでよく用いられています。
また、真上から撮影された写真のことは「真俯瞰ショット」と呼ばれます。
- 作った料理を俯瞰撮影して、SNSにアップロードする。
- 会心の真俯瞰ショットが撮れたので、いいねをたくさん稼げるかもしれない。
「俯瞰視点」の使い方
「俯瞰視点」とは、高所から下を見る時の視点のことです。
物理的に「高い所から見下ろす」という意味で用いられることもありますが、「物事を客観的に見る」という比喩的な表現で用いられることが多いです。
- 君が部長に昇進するために必要なのは、俯瞰視点だ。
- 俯瞰視点で都市の風景を写真に収める。
「俯瞰力」の使い方
「俯瞰力」とは、「物事を全体を客観的に見ることができる力」のことです。
「俯瞰風景」の使い方
「俯瞰風景」とは、高いところから見下ろした景色のことです。
「物事を客観的に見る」という比喩的な意味で用いられることはほとんどありません。
「客観的に俯瞰する」は間違った使い方なので注意しましょう。
「客観」「俯瞰」がほぼ同じ意味を表しており、二重表現になっているからです。
「俯瞰」の類義語
「俯瞰」には以下の類義語があります。
- 鳥瞰(ちょうかん):鳥が空から下を見下ろすように、高いところから広い範囲を見下ろすこと
- 展望(てんぼう):遠いところまで見渡すこと
- 客観(きゃっかん):第三者の立場から物事を見て、考えること
- 包括的(ほうかつてき):すべての要素を広く網羅していること
- 大局的(たいきょくてき)に見る:物事を全体的に見ること
- 瞰視(かんし):見下ろすこと
- 達観(たっかん):全体の様子や将来をよく見通すこと
- メタ認知(にんち):自分の認知を客観的にとらえること
- 総合的(そうごうてき):物事をひとつにまとめるさま
- 総括的(そうかつてき):物事の全体を大きなひとつのくくりとしてまとめること
- マクロに見る:距離を置いたところから全体を捉えようとすること
- 概観(がいかん)する:全体を大まかに見渡すこと
- 見下(みお)ろす:上から下の方を見ること
「俯瞰」と「鳥瞰」の違い
「俯瞰」と「鳥瞰」には以下のような違いがあります。
- 俯瞰:高い所から見下ろすこと
- 鳥瞰:空高く飛ぶ鳥の視点で見下ろすこと
「俯瞰」には高さの指定は特にないのですが、一般的には「鳥瞰」よりも低い場所から見下ろす様子を表します。
つまり、「俯瞰」と「鳥瞰」では、見下ろす場所の高さが異なるのです。
ただ、「俯瞰」と「鳥瞰」は極めて意味が似ているため、特に使い分けをしなくても困ることはないでしょう。
「俯瞰」と「展望」の違い
「俯瞰」と「展望」には以下のような違いがあります。
- 俯瞰:現在の状況を広く見渡す
- 展望:現在から未来にかけてを広く見渡す
「俯瞰」と「展望」では見渡している場所の時間が異なるのです。
「俯瞰」と「客観」の違い
「客観」は「第三者の立場から物事を見て、考えること」という意味です。
「俯瞰」と「客観」には以下のような違いがあります。
- 俯瞰:物事を広い視野で見る
- 客観:物事を第三者の視点で見る
「俯瞰」と「客観」では視点が異なるのです。
ただ、「俯瞰」と「客観」は「主体から離れた場所から対象を見る」という意味は共通しています。
「俯瞰」と「包括的」の違い
「包括的」は「すべてをひっくるめているさま」という意味です。
「俯瞰」と「包括的」には以下のような違いがあります。
- 俯瞰:高い位置から全体を見渡す
- 包括的:全体をひっくるめる
「包括的」は「俯瞰」と違ってどこから見ているかの指定がないのです。
「俯瞰」の対義語
「俯瞰」には以下の対義語があります。
- 仰望(ぎょうぼう):仰いで見ること、敬い慕うこと
- 仰視(ぎょうし):仰ぎ見ること
- 近視眼的(きんしがんてき):目先のことだけにとらわれていること
- 偏狭(へんきょう):考え方が狭いこと
- 主観(しゅかん):その人ひとりの物事の見方
- 虫瞰(ちゅうかん):虫の視点で見上げた構図のこと
- ミクロな視点:細かい視点から見ること
- 微視的(びしてき)な視点:とても細かい視点から見ること
「俯瞰」の英語訳
「俯瞰」を英語に訳すと以下のような表現になります。
- overlook
(見渡す) - look down
(見下ろす) - objectively
(客観的に)
「俯瞰」の同音異義語
「俯瞰」の主な同音異義語とその意味は以下のとおりです。
- 不堪(ふかん):技芸が未熟なこと
- 付款(ふかん):法律の効果を制限するために付ける制限のこと
- 不感(ふかん):感じないこと
- 不換(ふかん):交換することができないこと
- 普寛(ふかん):江戸時代中期~後期の修験者
- 浮環(ふかん):水面上に浮かんで位置を示す浮き輪のこと
- 阜康(ふかん):中国の新疆ウイグル自治区にある市
- 普観(ふかん):極楽浄土と仏の厳かさについて観察すること
まとめ
以上、この記事では「俯瞰」について解説しました。
読み方 | 俯瞰(ふかん) |
---|---|
意味 | 高所から見下ろして、眺めること |
類義語 | 鳥瞰、展望、客観、など |
対義語 | 仰望、仰視、近視眼的、など |
英語訳 | overlook(見渡す)など |
物事を「俯瞰」することができたら、一点集中していた頃には気づかなかった発見ができるでしょう。
全体を見渡して、問題点を解決し、よりよく改善できると良いですね。