今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「手前味噌(てまえみそ)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「手前味噌」をざっくり言うと……
読み方 | 手前味噌(てまえみそ) |
---|---|
意味 | 自分のことをほめること。自慢 |
由来 | その昔、家庭の自家製の味噌を自慢し合ったことから |
類義語 | 自画自賛、唯我独尊、自慢など |
対義語 | 謙遜、卑下 |
英語訳 | blow one’s horn(手前味噌を言う) |
このページの目次
「手前味噌」の意味をスッキリ理解!
「手前味噌」の意味を詳しく
「手前味噌」とは、「自分のことをほめること。自慢」を意味する四字熟語です。
話をする時に、「自慢なのだけど」と言って始めるよりは、「手前味噌なのだけど」と言って始めた方がやわらかい印象を与えるでしょう。
「自慢」を「手前味噌」という言葉で濁(にご)すことができ、あまり角が立たないようにすることができます。
ビジネスシーンなどでは、謙遜(けんそん)する言葉として「手前味噌」が使われる場合もあります。
たとえば、「手前味噌で恐縮でありますが、自社の自慢の商品でございます」というような使い方があります。
「手前味噌」の誤用
「手前味噌」は誤用されやすい言葉です。
「手前味噌」の誤用には主に以下の2つがあります。
- 「手前味噌」の「手前」に「身近の」という意味はない
- 「手前味噌でお恥ずかしいのですが」という表現は間違い
それぞれの誤用について詳しく見ていきましょう。
誤用①:「手前味噌」の「手前」に「身近の」という意味はない
「手前味噌」の「手前」に「すぐ目の前の」「身近の」という意味はありません。
「手前味噌」の「手前」はあくまで「自分の」という意味です。
誤用②:「手前味噌でお恥ずかしいのですが」という表現は間違い
「手前味噌でお恥ずかしいのですが」という表現は間違いなので注意が必要です。
「恥ずかしい」は自分を卑下する言葉であり、「手前味噌」という自慢の意味を持つ言葉と一緒に用いるのには適していません。
「手前味噌」を謙遜して用いたい場合は「手前味噌で恐縮ですが」という表現を用いると良いでしょう。
「手前味噌」の使い方
- 手前味噌だけど、僕の妻は何でもよくできる人なんだ。
- 手前味噌だけど、美味しいカップケーキを作ってきたから食べてよ。
- 手前味噌ながら、自分の英語力を披露させていただきます。
- 手前味噌で恐縮ですが、弊社の商品はどれも高品質なものになっています。
❶と❷の例文では、「自慢すること」の意味として、親しい間柄でされる会話に「手前味噌」が使われています。
一方で❸と❹の例文では、自分よりも上の立場の人に対して、へりくだるために「手前味噌」が使われています。
ビジネスの場面では❹の例文のように、「手前味噌で恐縮ですが」という表現が用いられることが多いです。
「手前味噌」の由来
「手前」は、この四字熟語において「自分の」という意味になります。
そして「味噌」ですが、由来の説が大きく分けて二つあります。
- 食品の「味噌」が由来とする説
- 「自慢」という意味の「味噌」が由来とする説
それぞれの由来について詳しく見ていきましょう。
食品の「味噌」が由来とする説
戦前まで、味噌は基本的に各家庭で手作りをする自家製でした。
味噌の歴史は長く、古代から作られており、特に室町時代に盛んに作られました。
そのため、家庭どうしで自分の味噌を自慢し合うことがありました。
「手前の味噌は・・・」というように、他の人に自家製の味噌を自慢したことから「手前味噌」という四字熟語が生まれたのです。
「自慢」という意味の「味噌」が由来とする説
「味噌」は、「それが話の味噌である」という使い方があるように、「ポイント」「趣向(しゅこう)をこらしたところ」という意味があります。
前の説で述べたように、これは各家庭がさまざまな趣向をこらして、美味しい味噌を作ろうとしていたことが由来です。
「趣向をこらしたところ」という意味で「味噌」が使われるようになり、そこから転じて人に自慢する様子にも「味噌」が使われるようになりました。
「味噌」という言葉そのものに、「自慢」という意味が含まれることから、自慢する言葉として「手前味噌」が生まれたのです。
「手前味噌」の類義語
「手前味噌」には以下のような類義語があります。
- 自画自賛(じがじさん):自分のしたことを自分で褒めること
- 天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん):自分だけが特別に優れていると思い込むこと
- 自慢(じまん):へりくだること
- 自賛(じさん):自分で自分をほめること
- 自負(じふ):自分の才能や仕事に自信を持ち、誇りに思うこと
- 矜持(きょうじ):自分の能力を信じて抱く誇り
- 我褒め(われぼめ):自分で自分をほめること
- 慢心(まんしん):おごり高ぶること
- 自尊(じそん):自分で自分をすぐれたものと思い込むこと
「手前味噌」の対義語
「手前味噌」には以下のような対義語があります。
- 謙遜(けんそん):へりくだること
- 卑下(ひげ):自分をあえて低い位置に下げてへりくだる
「手前味噌」の英語訳
「手前味噌」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- blow one’s horn
(手前味噌を言う) - I hate to brag,but…
(手前味噌ではありますが) - self‐glorification
(手前味噌) - sing one’s own praises
(手前味噌を並べる) - blow one’s own trumpet
(手前味噌を並べる)
まとめ
以上、この記事では「手前味噌」について解説しました。
読み方 | 手前味噌(てまえみそ) |
---|---|
意味 | 自分のことをほめること。自慢 |
由来 | その昔、家庭の自家製の味噌を自慢し合ったことから |
類義語 | 自画自賛、唯我独尊、自慢など |
対義語 | 謙遜、卑下 |
英語訳 | blow one’s horn(手前味噌を言う) |
「手前味噌」は、使い方によっては丁寧な謙遜の表現になります。ビジネスシーンでも使われる言葉です。
また、「手前味噌」は興味深い由来があります。
由来も合わせて覚えると、正しく使うことができるでしょう。
とても便利な言葉なので、ぜひ使えるようになりましょう。