今回ご紹介する言葉は、熟語の「精進(しょうじん)」です。
言葉の意味・使い方・「精進」がつく言葉・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「精進」をざっくり言うと……
読み方 | 精進(しょうじん) |
---|---|
意味 | ひとつのことに集中して努力すること。 |
語源 | 仏教語の「Vīrya(ヴィーリャ)」 |
類義語 | 邁進、精励、精勤など |
対義語 | 怠惰、無精、怠慢など |
英語訳 | devote(献身する)など |
このページの目次
「精進」の意味をスッキリ理解!
「精進」の意味を詳しく
「精進」には以下の4つの意味があります。
- ひとつのことに集中して努力すること
- 雑念を払い、仏教修行に打ち込むこと
- 一定の期間、戒律(かいりつ)を守り、身を清めること
- 肉類を食べないこと
それでは、4つの意味について「精進」の漢字の成り立ちとともに詳しく見ていきましょう。
意味①:ひとつのことに集中して努力すること
「精進」の意味として一番一般的なのは、「ひとつのことに集中して努力すること」という意味です。
「頑張ります」と言う代わりに使われることが多いです。
意味②:雑念を払い、仏教修行に打ち込むこと
「雑念を払い、仏教修行に打ち込むこと」という意味もあります。
「精」という字には、「雑念を除いて励む」という意味があります。
一心に集中した状態で進むことが「精進」なのです。
意味③:一定の期間、戒律(かいりつ)を守り、身を清めること
「一定の期間、戒律(かいりつ)を守り、身を清めること」という意味もあります。
喪に服す期間が終わることを「精進明け」や「精進落とし」と言います。
これは「戒律(かいりつ)を守り、身を清める期間の終わり」のことを表します。
意味④:肉類を食べないこと
「肉類を食べないこと」という意味もあります。
この意味で「精進」が使われる例は、「精進料理」です。「精進料理」とは、肉類を一切使わない料理を指します。
仏教では殺生(せっしょう)が禁じられているため、僧侶は肉や魚を食べません。
そこで、禁止食材を使わない精進料理を食べるのです。
「精進」の漢字の意味
「精進」が以上のような意味になるのは、漢字の成り立ちが関係しています。
「精進」の漢字の意味はそれぞれ以下のとおりです。
- 精:ひたすら励む
- 進:前に進む・高い階級に上がる
つまり、「精進」の漢字は合わせて「ひたすら励んで前に進むこと」を表しているのです。
「精進」の使い方
「精進」には主に以下のような言い回しがあります。
- 精進します
- 精進を重ねる
- 精進してまいります
- 日々精進していく所存です
それぞれの言い回しについて、例文と一緒に見ていきましょう。
「精進します」の使い方
「精進します」は「ひとつのことに精神を集中して、頑張って努力します」という意味です。
上司や目上の人に対して使うことが多い表現です。
なお、文面で「精進します」と言われた時には、以下のような返しをすると無難です。
- ご成功をお祈り致します
- 益々のご活躍をお祈り申し上げます
- ご成功をお祈りしています
親しい間柄の場合は、「頑張ってください」など、もっとくだけた表現でも問題内でしょう。
「精進を重ねる」の使い方
「精進を重ねる」とは、「長い期間、物事に熱心に取り組むこと」という意味です。
「精進します」よりも多く努力するニュアンスを伝えることができます。
「精進してまいります」の使い方
「精進してまいります」は「一生懸命努力します」という意味です。
「精進します」をより丁寧に表現した言い回しと言えます。
「日々精進していく所存です」の使い方
「日々精進していく所存です」は「毎日努力を重ねていきたいと思います」という意味です。
年賀状などでよく使われる表現です。
「精進」がつく言葉
「精進」がつく言葉には以下のようなものが挙げられます。
- 精進料理:仏教の教えに基づいて、殺生などを避けて調理された料理
- 精進明け:喪に服す期間が終わること
- 精進潔斎:仏教の修行に専念すること
- 精進揚げ:動物性の食品を用いない揚げ物
- 精進固め:精進料理を食べる期間の前に、魚や肉などを食べておくこと
- 精進根:ひたすら仏教の修行に励むこと
- 精進腹:精進料理ばかりを食べている腹
- 精進物:肉・魚などを用いず、仏教の教えに反しない食べ物
- 一心精進:ひとつのことに集中努力すること
- 刻苦精進:心身を苦しめて努力すること
- 日々精進:日々努力していくこと
「精進」の語源
「精進」はもともと仏教用語です。
サンスクリット語に「Vīrya(ヴィーリャ)」という言葉があり、「勇敢さ」という意味を持ちます。
仏教が中国に渡るとともに、「Vīrya(ヴィーリャ)」は「精進」と訳されました。
仏教では、自らを苦しめる煩悩からの解放が謳(うた)われており、それには「勇敢さ」が必要とされます。
そこから、「煩悩や苦悩を乗り越えて修行に打ち込む」という勇敢さが伴う行為を、「精進」と表現するようになりました。
やがて、仏教での「精進」が「一心に努力をする」という意味に転じて、一般的にも使われるようになりました。
「精進」の類義語
精進には以下のような類義語があります。
- 邁進(まいしん):目標に向かって突き進むこと
- 精励(せいれい):非常に熱心に励むこと
- 精勤(しょうごん):精を出して励むこと
- 尽力(じんりょく):努力すること
- 専心(せんしん):ひとつのことだけに集中すること
- 一生懸命(いっしょうけんめい):ひたむきに努力すること
- 粉骨砕身(ふんこつさいしん):力の限りを尽くすこと
- 鋭意努力(えいいどりょく):集中して努力すること
- 精一杯(せいいっぱい):持てる力のすべてを使って
- 研鑽(けんさん):学問をみがき深めること
- ひたむき:ひとつのことに集中すること
「精進」と「邁進」の違い
「精進」と「邁進」には以下のような違いがあります。
- 精進:「努力する」おとに重点が置かれている
- 邁進:「まっすぐ進む」ことに重点が置かれている
「精進」も「邁進」も目標に向けて努力している点は同じなのですが、重点を置く場所が異なるのです。
「一生懸命努力して」目標に向かう場合には「精進」を、「迷いなく」目標に向かう場合には「邁進」を用いましょう。
「精進」の対義語
精進には以下のような対義語があります。
「精進」の英語訳
精進を英語に訳すと、次のような表現になります。
- devote
(献身する) - abstain
(慎む) - strive
(励む)
「精進」を直接表す訳語はありません。
そこで、「精進」とはつまり努力を指すことから、どのように努力をするかに応じて訳語が設定されています。
“devote” の意味
“devote” は「献身する」「捧げる」という意味です。
スピーチなどの改まった場で使われる一方で、カジュアルな会話の中ではあまり使われません。
また、”devote” は、“I want to thank him for his devotion.(彼の献身に感謝したい)” のように、名詞形で使われることもあります。
“abstain” の意味
“abstain” は、「(何かを)断つ」という意味で使われることが多く、 “abstain from alcohol(禁酒する)” のように使います。
“abstain from animal food(精進する)” という言い方もあります。
まとめ
以上、この記事では「精進」について解説しました。
読み方 | 精進(しょうじん) |
---|---|
意味 | ひとつのことに集中して努力すること。 |
語源 | 仏教語の「Vīrya(ヴィーリャ)」 |
類義語 | 邁進、精励、精勤など |
対義語 | 怠惰、無精、怠慢など |
英語訳 | devote(献身する)など |
「精進」は本来仏教語であり、慎しみ深い言葉です。
使う場面を選ぶことはもちろん、意味をしっかり理解した上で使うことが重要です。