今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」です。
言葉の意味、由来、使い方、類義語、対義語についてわかりやすく解説します。
☆「臥薪嘗胆」をざっくり言うと……
読み方 | 臥薪嘗胆(がしんしょうたん) |
---|---|
意味 | 何かの目的のため、苦労や努力をすること |
由来 | 復讐の気持ちを忘れないよう、古代中国の王がとった行動から |
類義語 | 堅忍不抜、捲土重来、漆身呑炭など |
対義語 | 一蹶不振、再起不能など |
英語訳 | perseverance,enduranceなど |
このページの目次
「臥薪嘗胆」の意味をスッキリ理解!
「臥薪嘗胆」の意味をもっと詳しく
「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」には以下のような2つの意味があります。
- 敵を討つために苦痛や困難に耐えること
- 目標のために努力をすること
それぞれの意味について、日本での「臥薪嘗胆」の流行と合わせて詳しく見ていきましょう。
意味①:敵を討つために苦痛や困難に耐えること
「臥薪嘗胆」には「敵を討つために苦痛や困難に耐えること」という意味があります。
これは「臥薪嘗胆」の由来に近い意味です。
現在では「恨みを持つ相手に復讐するために苦痛や困難に耐えること」というニュアンスで使われることが多いです。
意味②:目標のために努力をすること
「臥薪嘗胆」には「目標のために努力をすること」という意味もあります。
現在ではこの意味で使われることが多いです。
達成するのに多大な努力や、長期間に渡る苦労を必要とする目的を果たそうとする時に使われます。
逆に、短時間の努力で達成できてしまうような場合にこの言葉は使いません。
「臥薪嘗胆」の日本での流行
「臥薪嘗胆」という言葉は三国干渉の時期に、日本で大きく流行しました。
当時、日本は日清戦争で清(現在の中国)に勝ち、遼東半島を手に入れました。
しかし、ロシア・ドイツ・フランスの3つの国は日本に遼東半島を返還するよう、「三国干渉」という圧力をかけました。
これに日本は従い、清に遼東半島を返還しました。
これに日本国民は大きく反発し、「臥薪嘗胆」が流行して、特にロシアへの復讐を誓いました。
その後、日本は日露戦争でロシアに勝利し、復讐を遂げることになります。
「臥薪嘗胆」の由来
臥薪嘗胆の由来は、古代中国、春秋時代にまで遡ります。
春秋時代、中国には呉(ご)、越(えつ)という2つの国があり、覇権を巡って激しい戦を繰り広げていました。
当時の呉の王、闔閭(こうりょ)は、越の王である勾践(こうせん)との戦いの中で深い傷を負い、それが原因で亡くなってしまいます。
このことを知った闔閭の息子である夫差(ふさ)は、父の仇である勾践を打ち破ることを誓ったのです。
夫差は硬い薪の上で寝ることで自らの体に痛みを刻み込み、この痛みによって勾践への復讐心をいつまでも忘れないようにしました。
それから3年後、夫差はついに勾践を打ち破り、これを降伏させることに成功するのです。
しかし、これだけでは終わりませんでした。
夫差に敗れた後、勾践は同じように夫差への復讐を誓います。
勾践は動物の苦い肝を舐めるという苦行によって、夫差への復讐の思いが消えてしまわないようにしながら、夫差の国である呉に侵攻する準備を進めました。
そしてついに、一度は敗れた夫差を打ち破り、呉を滅ぼして覇者となるのでした。
このように「臥薪嘗胆」という言葉は、古代中国において復讐を誓った2人の王が、仇への復讐心を忘れないように行った行動に由来します。
「臥薪嘗胆」の漢字はそれぞれ以下のような意味があります。
- 臥薪:硬い薪の上で横になること
- 嘗胆:苦い胆(きも)を嘗(な)めること
これら2つの熟語を合わせて、「仇を打つために、苦痛や困難に耐えること」「目的のために苦労の日々に耐えること」を意味するようになったとされています。
「臥薪嘗胆」の使い方
同じ苦労をすることであっても、徹夜での作業や短期間の努力に臥薪嘗胆は使いません。
受験勉強や病院でのリハビリのように、長期にわたる苦労や強い意思の力を必要とする物事に対して使われます。
例としては以下のようなものが挙げられます。
- 彼女は臥薪嘗胆した結果、国立大学に合格した。
- 臥薪嘗胆の日々を過ごし、成功を掴み取る。
- 臥薪嘗胆の末、ようやく退院することができた。
- 臥薪嘗胆の思いでリハビリを重ねた。
上記の例文からもわかるとおり、「臥薪嘗胆」は以下のような言い回しで使われることが多いです。
- 臥薪嘗胆の思い
- 臥薪嘗胆の末
- 臥薪嘗胆する
- 臥薪嘗胆の日々
「臥薪嘗胆」の類義語
臥薪嘗胆には以下のような類義語があります。
- 座薪懸胆(ざしんけんたん):目的のために苦痛に耐えること。
- 越王之胆(えつおうのたん):目標達成のため困難に耐えること。
- 堅忍不抜(けんにんふばつ):困難に動じず、耐え忍ぶこと。
- 捲土重来(けんどちょうらい):一度敗れた者がもう一度巻き返すこと。
- 漆身呑炭(しっしんどんたん):仇討ちや復讐のために苦労をすること。
- 彫心鏤骨(ちょうしんるこつ):とても辛い苦労をすること。
- 艱難辛苦(かんなんしんく):困難にあって悩み苦しむこと。
- 粒々辛苦(りゅうりゅうしんく):細かな努力を積み増さねて大変な苦労をすること
- 名誉挽回(めいよばんかい):失われた名誉や信頼を取り戻すこと
- 汚名返上(おめいへんじょう):不名誉な評判を覆すこと
「臥薪嘗胆」の対義語
臥薪嘗胆には以下のような対義語があります。
- 一蹶不振(いっけつふしん):一度の失敗で挫折し二度と立ち上がれないこと。
- 再起不能(さいきふのう):以前の状態に戻ることができないこと。
- 堪忍(かんにん):怒りを抑えて人の過ちを許すこと
- 安楽(あんらく):心身の苦痛や苦労がない状態
- 穏便(おんびん):物事が穏やかであること
「臥薪嘗胆」の英語訳
臥薪嘗胆を英語に訳すと、次のような表現になります。
- perseverance
(我慢強さ、不屈) - endurance
(忍耐)
英語では単純に「忍耐」や「不屈」を意味する単語に訳されるようですね。
さらに原義に近づけたい場合には、effort(努力)を使って、a long and hard effort(長く厳しい努力)などと表現すると良いです。
「臥薪嘗胆」の中国語訳
「臥薪嘗胆」を中国語に訳すと、次のような表現になります。
(目的を達成させるために苦労の日々に耐えること)
ただし、日本語表記と中国語表記とでは漢字が少し違うので、気をつけましょう。
まとめ
以上、この記事では「臥薪嘗胆」について解説しました。
もう一度、意味や由来、使い方、類義語や対義語、英語訳を振り返ってみましょう。
読み方 | 臥薪嘗胆(がしんしょうたん) |
---|---|
意味 | 何かの目的のため、苦労や努力をすること |
由来 | 復讐の気持ちを忘れないよう、古代中国の王がとった行動から |
類義語 | 堅忍不抜、捲土重来、漆身呑炭など |
対義語 | 一蹶不振、再起不能など |
英語訳 | perseverance,enduranceなど |
「臥薪嘗胆」は、目的のために辛い努力を長時間続けることを後押ししてくれる言葉です。
このため、座右の銘にされることも多いですね。
あなたが困難にぶつかった時、挫折しそうな時、この言葉を思い出せばきっと勇気を与えてくれるはずです。
四字熟語というものは偉大ですね。