「遜色ない」とは「劣っていない」という意味です。
「遜色ないね」と言われたら、褒められているのか、貶されているのかわかりにくいですよね。
「遜色ない」は、「遜色」というネガティブな意味を「ない」で打ち消しているので、ポジティブな意味をもちます。
褒め言葉として使えますが、少し注意点があるので、意味や使い方をしっかりおさえましょう。
☆「遜色ない」をざっくり言うと……
読み方 | 遜色ない(そんしょくない) |
---|---|
意味 | 劣っていない |
類義語 | 引けを取らない、互角、負けず劣らずなど |
対義語 | 引けを取る、見劣りする、敵わないなど |
英語訳 | A is comparable to B(AはBに相当する)、not inferior to〜(〜に遜色ない)、stand comparison with〜(〜に匹敵する)など |
このページの目次
「遜色ない」の意味
劣っていない
「遜色ない」とは、「何かと比べて劣っていない」という意味です。
「遜色ない」は以下の2語から成り立っています。
- 遜色
何かと比べて劣って見えること - ない
打ち消す意味
ネガティブな意味を打ち消すことで、「見劣りしないこと」「引けを取らないこと」というポジティブな意味になっているのです。
次に、「遜色」と「ない」の意味についてそれぞれ詳しく解説します。
「遜色」の意味
遜色は、「何かと比べて劣って見えること」というネガティブな意味の言葉です。
「遜」と「色」という漢字には、以下のような意味があります。
- 遜:へりくだる
- 色:形にあらわれる様子
へりくだる様子が形にあらわれていることから、「何かと比べて劣って見えること」という意味をもつのです。
「ない」の意味
「ない」は、前の言葉を打ち消す意味があります。
「ない」がつく言葉には、以下のようなものがあります。
「遜色ない」の使い方
「遜色ない」はポジティブな意味なので、褒め言葉として使います。
褒めたいモノやコトより明らかに格上で、誰の目から見ても評価が高いものと比べることで、モノやコトを褒めることができるのです。
「遜色ない」の言い回し
「遜色ない」は、主に以下のような言い回しで使われます。
- 遜色のない〇〇
- 遜色なき〇〇
※やや古めかしい表現 - 遜色がない
- 遜色なし
- 遜色はあるまい
- 何の遜色もない
- 遜色ありません
- 遜色ございません
- 遜色ないと思います
- 遜色ないと存じます
「遜色ない」を目上の相手に使う際は、「遜色ありません」など敬語を続けて使います。
「遜色ない」の例文
「遜色ない」は「〜と比べて」や「〜と比較して」と一緒に使われることが多いです。
「遜色ない」の例文には、以下のようなものがあります。
- 世界的なピアニストと比べて遜色のない演奏だった。
- わたくしは唯墨堤の処々に今なお残存している石碑の文字を見る時鵬斎米庵(ほうさいべいあんら)が書風の支那古今の名家に比して遜色なきが如くなるに反して、東京市中に立てる銅像の製作西洋の市街に見る彫刻に比して遥に劣れるが如き思をなすのみである。
[出典:永井荷風『向嶋』] - 「この青磁(せいじ)の形は大変いい。色も美事だ。ほとんど羊羹(ようかん)に対して遜色がない」
[出典:夏目漱石『草枕』] - 彼女が作るケーキはお店で売られているものと遜色なしだ。
- 彼の握る寿司は職人の握る寿司と遜色はあるまい。
- このバッグはブランド物と比べても何の遜色もない。
- 彼の実力はプロと比べても遜色ありません。
- 弊社の商品は大手メーカーと比較しても品質に遜色ございませんので、ぜひご検討ください。
- 彼はまだ新人ですが、実績は中堅社員と比べても遜色ないと思います。
- こちらの製品は、最新モデルと比較しても遜色ないと存じます。
「遜色ない」の誤用
「遜色ない」の誤用には以下のようなものがあります。
- 明らかに格下のものと比べる
- 「ずば抜けて勝っている」という意味で使う
それぞれ見ていきましょう。
誤用①:明らかに格下のものと比べる
「遜色ない」は明らかに格下のものは、比べる対象として使いません。
たとえば、以下の文章では「遜色ない」の誤った使い方をしています。
- この店のラーメンは美味しいので、カップ麺と遜色ない。
カップ麺は「お店のラーメンより格上」とは言い難いので、誤用です。
誤用②:「ずば抜けて勝っている」という意味で使う
「遜色ない」は、劣っていないという意味の褒め言葉ですが、「ずば抜けて勝っている」という意味はありません。
そのため、人によっては「失礼だ」「見下されている感じがする」と思われることがあります。
特に、目上の相手に使う際は注意しましょう。
「遜色ない」と間違いやすい語
「遜色ない」と間違いやすい語には、以下のようなものがあります。
- 謙遜(けんそん)ない
- 損色(そしき)
- 遜職(そんしょく)
それぞれ見ていきましょう。
間違いやすい語①:謙遜ない
「謙遜ない」とは、「謙遜」と「遜色ない」が混ざった言葉です。
このような言葉はありません。
「謙遜」と「遜色」にはどちらも「遜」という漢字が使われていますが、混同しないように注意しましょう。
間違いやすい語②:損色
損色とは、建物の破損部分の図面や見積書のことです。
「麁色」とも表記します。
間違いやすい語③:遜職
遜職とは、「官位を辞する」という意味です。
「遜色ない」の「遜色」と同音異義語なので、混同しないように注意しましょう。
「遜色ある」の意味
「遜色ある」とは、「何かと比べて劣って見えること」という意味です。
誤用ではありませんが、現代では使うと不自然なのでほとんど使われません。
昔は、「遜色ある」「遜色のある」という表現が使われていました。
たとえば、芥川龍之介の『秋山図(しゅうざんず)』(1921年)に、「遜色のある」という表現を見ることができます。
しかし家蔵の墨妙(ぼくみょう)の中でも、黄金(おうごん)二十鎰(いつ)に換えたという、李営丘(りえいきゅう)の山陰泛雪図(さんいんはんせつず)でさえ、秋山図の神趣に比べると、遜色のあるのを免れません。
[出典:芥川龍之介『秋山図』]
「遜色急行」とは
遜色急行とは、格がやや低い急行列車のことです。
具体的には、急行列車として使うことを想定していない車両を使った急行列車を指します。
主に鉄道ファンが、俗称として「遜色急行」と表現します。
遜色急行には、以下のようなものがあります。
- 準急しれとこ
- 準急くなしり
- 準急らうす
- 急行いなわしろ
- 急行ときわ
「遜色ない」の類義語
「遜色ない」には以下のような類義語があります。
- 引けを取らない
負けていないこと - 互角(ごかく)
互いに優劣がないこと - 負けず劣らず
互いに優劣がつけにくいさま - 伯仲(はくちゅう)
ほとんど差がなく優劣がつけにくいこと - どっこいどっこい
両者の力や勢いなどが互いに同じ程度で優劣がないさま - 大差ない
同じように見えること - 匹敵(ひってき)する
比べると能力や価値などが同じ程度であること - 肩を並べる
同じ程度の力や地位をもって張り合うこと - 比肩(ひけん)
肩を並べること
「遜色ない」の類義語として間違えやすい言葉
以下の言葉は、「遜色ない」の類義語ではありません。
- 忌憚(きたん)のない
遠慮のないこと - 途方もない
道理に合わないこと。並々ではないこと
「遜色ない」の対義語
「遜色ない」には以下のような対義語があります。
- 引けを取る
劣ること - 見劣りする
他のものと比較して劣っているように見えること - 敵わない
勝負して勝てる見込みがほとんどないさま - 及ばない
敵わないこと - 変わり映えしない
前のものと変わらないさま - 後手(ごて)に回る
相手に先を越されてしまうこと
「遜色ない」の対義語として間違えやすい言葉
以下の言葉は、「遜色ない」の対義語ではありません。
- 水をあけられる
競争相手を目立ってひきはなす - ビハインド
後ろに。残って。隠れて。遅れて
上記の2語は、リアルタイムで負けている状況のときに使います。
「遜色ない」の英語訳
「遜色ない」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- A is comparable to B
(AはBに相当する) - not inferior to〜
(〜に遜色ない) - stand comparison with〜
(〜に匹敵する) - bear comparison with〜
(〜に匹敵する)
「遜色ない」のまとめ
以上、この記事では「遜色ない」について解説しました。
読み方 | 遜色ない(そんしょくない) |
---|---|
意味 | 劣っていない |
類義語 | 引けを取らない、互角、負けず劣らずなど |
対義語 | 引けを取る、見劣りする、敵わないなど |
英語訳 | A is comparable to B(AはBに相当する)、not inferior to〜(〜に遜色ない)、stand comparison with〜(〜に匹敵する)など |
「遜色ない」は、打ち消しのないがつくことでポジティブな意味になり、褒め言葉としても使える言葉です。
格上のものと比べられて「遜色ない」と言われたら、素直に喜びましょう。