面従腹背とは「表面上は従うように見せかけて、心の中では従わないこと」という意味です。
ネガティブな意味であるため、どんな時に使うのか知っておきたいですよね。
組織の中で働いていると、やりたくないことをやらないといけない時もあります。
この記事では、そんな時の気持ちを表す面従腹背の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「面従腹背」をざっくり言うと……
読み方 | 面従腹背(めんじゅうふくはい) |
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意味 | 表面上は従うように見せかけて、心の中では従わないこと |
語源 | 面従後言が変化した |
類義語 | 面従腹誹 面従後言 面従背毀 など |
対義語 | 絶対服従 忠義 忠誠 など |
英語訳 | double-faced(両面) pretended obedience(見せかけの服従) Many kiss the hand they wish to cut off(多くの人が、手を切り落としたいほど憎い相手の手にキスをする) など |
よくない性格を表す語 | 阿諛追従 慇懃無礼 内股膏薬 など |
このページの目次
「面従腹背」の意味
表面上は従うように見せかけて、心の中では従わないこと
面従腹背は、うわべだけ従うふりをして、心の中では従っていないことを表します。
「心の中では従わないこと」という結果が重要であるため、心の中で本当はどう思っているかは関係がありません。
例えば、嫌いな上司に反発するために従わない場合も、反発ではないけれど従わない場合も、面従腹背だといえます。
ここからは、面従と腹背に分けて解説します。
「面従」の意味
その人の前でだけ従うこと
面従は、「本人の前では従う」という意味です。
「腹背」の意味
- 腹と背中。前と後ろ
- 心の中で反発すること
面従腹背では、②の「心の中で反発すること」という意味で使われています。
腹背は、「ふくはい」と呼びます。
「はらせ」と間違えて読まないように注意しましょう。
「面従腹背」の使い方
面従腹背は、「心の中で従っていないこと」」という意味をもつため、主にネガティブな意味で使われます。
例文を見てみましょう。
- 嫌いな上司に面従腹背の態度をとる。
- 世渡りをするためには、面従腹背が必要な時もある。
- 君主である織田信長を裏切った明智光秀は、面従腹背だったのかもしれない。
- 彼等は面従腹背を人の当然の行為であると信じていた。
[出典:坂口安吾『道鏡』]
「面従腹背」の語源
面従腹背は、元は面従後言(めんじゅうこうげん)だったとされています。
面従後言が以下のように変化したとされています。
- 古代中国の歴史書に面従後言という言葉がある
- 面従後言が面従腹誹に変化する
※誹は「ののしる」という意味 - 明治時代、面従腹誹の「ふくひ」を「ふくはい」と読み間違える
- 「ふくはい」を腹背と表記する
- 面従腹背が広まる
「面従後言」の語源
面従後言の語源は、古代中国の歴史書『書経』にある「皋陶謨(こうようぼ)」という部分です。
『書経』では、中国の神話に登場する王・舜(しゅん)が、次の王となる禹(う)に、次のように言ったとされます。
予(よ)汝(なんじ)の弼(たすけ)に違(たが)へば、汝面従して、退きて後言有ること無かれ。
(私がもし間違ったことをしたら、そなたは私を補佐せよ。そなたは表面では服従し、陰で悪口を言うようなことをしてはいけない。)
この文章から、面従後言は「表面上では良い顔をして、後で裏で陰口を言うこと」という意味になりました。
「面従腹背」する人の特徴
面従腹背する人の特徴には以下のようなものがあります。
- 不満がある
- 軽はずみである
- 野望がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「面従腹背」する人の特徴①不満がある
面従腹背する人は、現状に不満があることが多いです。
自分の思う通りにならないとすぐに不満を感じますが、口に出すことはありません。
そのため、表面では従いますが、心の中では従わない態度をとります。
「面従腹背」する人の特徴②軽はずみである
面従腹背する人は、軽はずみであることが多いです。
自分の意見が明確ではなく、権力の強い人の言うことにはとりあえず従っておけば良いと思っています。
そのため、表面では従いますが、心の中では納得しておらず、悪口を言います。
「面従腹背」する人の特徴③野望がある
面従腹背する人は、心の中に野望があることが多いです。
野望には良いことも悪いこともありますが、とりあえず今は従わないと自分に不利益が生じるため、従っているのです。
そのため、表面では従いますが、心の中ではいつか裏切ろうと思っています。
「面従腹背」される人の特徴
面従腹背される人の特徴には以下のようなものがあります。
- リーダー性がない
- 思いやりがない
- 自分に甘く人に厳しい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「面従腹背」される人の特徴①リーダー性がない
面従腹背される人は、リーダー性がないことが多いです。
人に頼られるほどの実力や、人の話をよく聞く優しさがないため、周りの人に好かれません。
そのため、周りの人に軽く見られて裏切られるのです。
「面従腹背」される人の特徴②思いやりがない
面従腹背される人は、思いやりがないことが多いです。
相手の気持ちを考えずに、自分の利益ばかり追い求めているため、敵をつくってしまいます。
そのため、周りの人に疎まれ、従ってもらえないのです。
「面従腹背」される人の特徴③自分に甘く人に厳しい
面従腹背される人は、自分に甘く人に厳しいことが多いです。
人には文句ばかり言うのに、自分の悪いところは直そうとしないため、人が離れていきます。
そのため、いつの間にかひとりになっているのです。
「面従腹背」の類義語
面従腹背には以下のような類義語があります。
- 面従腹誹(めんじゅうふくひ)
表面上では良い顔をして、心の中で悪口を言うこと - 面従後言(めんじゅうこうげん)
表面上では良い顔をして、その人がいないところで悪口を言うこと - 面従背毀(めんじゅうはいき)
表面上では良い顔をして、その人がいないところで悪口を言うこと - 巧言令色(こうげんれいしょく)
相手に気に入られるように、口先だけ調子の良いことを言って顔色をうまくつくろうこと - 腹黒い
心に悪だくみをもっていること - 裏腹(うらはら)
①腹と背中。表と裏
②背中合わせ。隣り合わせ
③反対であること - 裏がある
表向きの顔とは違う顔があること - 二心(ふたごころ)
①裏切りの心
②浮気の心 - 二心(にしん)
①反抗する心
②疑う心 - 二枚舌
①言動が食い違うこと
②嘘をつくこと - 二枚舌を使う
①言動が食い違うこと
②嘘をつくこと - 意地悪
わざと人を困らせること - 天邪鬼(あまのじゃく)
わざと人に逆らう言動をする人 - ひねくれ者
思っていることを素直に言えない人 - 心裡留保(しんりりゅうほ)
本来の意思とは異なる決定だと自覚しながら、意思決定すること
「面従腹背」の対義語
面従腹背には以下のような対義語があります。
- 絶対服従
少しも逆らうことは許されず、何があっても命令に従うこと - 忠義(ちゅうぎ)
主君や国家に対して、真心を込めて仕えること - 忠誠(ちゅうせい)
真心を込めた正直な心 - 眼横鼻直(がんのうびちょく)
当たり前のことを、ありのまま受け入れること - 如実知見(にょじつちけん)
現実を正しく見ること - ツンデレ
①表面上はぶっきらぼうな態度だが、特定の条件下では好意的な態度を取ること
②何らかの理由で、本当の気持ちとは反対の態度を取る人
「面従腹背」の英語訳
面従腹背を英語に訳すと、次のような表現になります。
- double-faced
(両面) - pretended obedience
(見せかけの服従) - Many kiss the hand they wish to cut off.
(多くの人が、手を切り落としたいほど憎い相手の手にキスをする。) - Being pretended to obedient only on the surface and mediating against it.
(表面だけ従順であるふりをして、それに対してとりなす。)
関連:よくない性格を表す語
面従腹背は、一般的に、よくない性格です。
それと同じく、よくない性格を表す語には以下のようなものがあります。
- 阿諛追従(あゆついしょう)
相手に気に入られるために、お世辞を言ったり命令に従ったりして機嫌を取ること - 慇懃無礼(いんぎんぶれい)
言動が丁寧すぎるため、かえって無礼であるさま - 内股膏薬(うちまたごうやく)
しっかりした意見がなく、都合しだいで立場を変えること - 依怙贔屓(えこひいき)
好きなほうだけ特別扱いして、公平でないこと - 頑迷固陋(がんめいころう)
自分の考えに固執して柔軟でないために、正しい判断ができないこと - 気随気儘(きずいきまま)
自分勝手に振る舞うこと
「面従腹背」のまとめ
以上、この記事では面従腹背について解説しました。
読み方 | 面従腹背(めんじゅうふくはい) |
---|---|
意味 | 表面上は従うように見せかけて、心の中では従わないこと |
語源 | 面従後言が変化した |
類義語 | 面従腹誹 面従後言 面従背毀 など |
対義語 | 絶対服従 忠義 忠誠 など |
英語訳 | double-faced(両面) pretended obedience(見せかけの服従) Many kiss the hand they wish to cut off(多くの人が、手を切り落としたいほど憎い相手の手にキスをする) など |
よくない性格を表す語 | 阿諛追従 慇懃無礼 内股膏薬 など |
面従腹背と呼ばれるような行為は、誰もが少なからず行っているのではないでしょうか。
もしも、自分が指示を出す立場になった時には、面従腹背されたくないものですね。