前衛的とは「時代に先駆けていること」という意味です。
芸術やファッションの分野で聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
元はフランス語を直訳した語であるため、意味がわかりにくいですよね。
そこで、この記事では前衛的の意味や使い方、具体例を詳しく解説します。
☆「前衛的」をざっくり言うと……
読み方 | 前衛的(ぜんえいてき) |
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意味 | 時代に先駆けていること |
語源 | フランス語の “avant-garde” (アバンギャルド) |
類義語 | 目新しい 前例のない 新奇性 など |
対義語 | 前時代的 因習的 退嬰的 など |
「前衛的」の意味
時代に先駆けていること
前衛的は、「同じ時代の他のものよりも、考え方などが新しいこと」という意味です。
ただ「新しく現代的である」ことだけでなく、「これまでの価値観にとらわれておらず、攻撃的であること」を表します。
主に芸術やファッションの分野で使われます。
「前衛的」の具体例
ここからは、前衛的の具体例を紹介します。
「前衛的」なファッション
「前衛的」なファッションの画像を見てみましょう。
上記の画像は、服にくまの形を模したものを乗せているため、新しいファッションであるといえます。前衛的な芸術家
前衛的な芸術家には、以下のような人が挙げられます。
- ピカソ
- 岡本太郎
- 草間彌生(くさま やよい)
1960年代には「前衛の女王」の異名があった
ピカソの作品である「アヴィニョンの娘たち」を見てみましょう。
[出典:西洋絵画美術館]
「アヴィニョンの娘たち」では、右手前の女性が背中を向けているのに、顔が全て全面に出ているなど、新しい画法を使っています。
岡本太郎の作品である太陽の塔を見てみましょう。
[出典:「太陽の塔」オフィシャルサイト]
太陽の塔は、ひとつの塔の中に、異なる3つの顔が存在しているため、新しい表現方法だといえます。
草間彌生の作品である「かぼちゃ」を見てみましょう。
[出典:おいだ美術]
「かぼちゃ」は、陰影を水玉模様で表現しているため、新しい表現方法だといえます。
前衛的な作品
前衛的な作品には以下のようなものがあります。
カジミール・マレーヴィチ『白の上の白』
『白の上の白』は、1918年にロシアの画家であるカジミール・マレーヴィチによって描かれた絵画です。発表した時には、何も特徴がないため芸術作品とは言えないと評価されました。
しかし、彼の独自の表現方法で描かれているため、前衛的な作品だとして現在では高い評価を得ています。
マルセル・デュシャン『泉』
『泉』は、1917年にフランス系アメリカ人の画家であるマルセル・デュシャンによって制作された作品です。男性用便器に「R.Mutt」という署名と年号が書かれています。
出品予定の展覧会に出展を拒否されたこともありましたが、現在では20世紀の美術作品の中で最も主要な作品だと言われています。
「前衛的」の使い方
前衛的は名詞として使います。
前衛的なファッションや芸術作品を好む人に対しては、褒め言葉として使うことができます。
- いつも前衛的なファッションだね。
- 新商品の開発は前衛的な発想から始まる。
- 彼は前衛的な話をするから、時々どう答えたら良いかわからなくなる。
「前衛的」の語源
前衛的の語源は、フランス語の “avant-garde” (アバンギャルド)です。
前衛的は、アバンギャルドを日本語に訳した言葉なのです。
「アバンギャルド」の意味
アバンギャルドは、元々は軍事用語で「戦闘の前線で戦う部隊」という意味です。
アバンギャルドは、以下のような経緯で意味が変化しました。
- 第一次世界大戦前:「未来派」運動のことを指していた
※未来派運動:イタリアを中心とした芸術革命運動 - 第一次世界大戦後:「ダダ」運動を指していた
※ダダ運動:ヨーロッパやアメリカを中心とした芸術革命運動 - 第二次世界大戦前:「シュルレアリスム」を指していた
※シュールレアリスム:フランスで起こった芸術革命運動 - 第二次世界大戦の開始によって、アバンギャルドは終わりを迎える
アバンギャルドは、元々は「戦闘の前線で戦う部隊」という意味で芸術革命運動を表しましたが、時代が進むにつれて「時代に先駆けていること」という意味ももつようになりました。
「前衛的」な人の特徴
「前衛的」な人の特徴には以下のようなものがあります。
- 発想がユニーク
- 感性が独特
- 目標がはっきりしている
「前衛的」な人の特徴①発想がユニーク
前衛的な人は、発想がユニークであることが多いです。
誰も思いつかないような新しいことを言ったり、マイペースな行動をしたりして周りを驚かせるため、「何を考えているのかわからない」と思われることもあります。
「前衛的」な人の特徴②感性が独特
前衛的な人は、感性が独特であることが多いです。
身につけるものが派手だったり、珍しかったりします。
また、世界の見方が人とは異なるため、同じ場所で写真を撮っても人とは違う写真になることがあります。
「前衛的」な人の特徴③目標がはっきりしている
前衛的な人は、目標がはっきりしていることが多いです。
目標が「何となくやりたい」ではなく、「これを実現するためにこれをやりたい」と具体的です。
目標が具体的であるため、実現に向かって行動することもできます。
「前衛的」の類義語
前衛的には以下のような類義語があります。
- 目新しい
今まで見たこともない新しさがあること - 前例のない
- 新奇性(しんきせい)
目新しく珍しいこと - 独創的(どくそうてき)
真似ではない独自の発想で生み出すこと - 革新的(かくしんてき)
制度や組織を新しくつくろうとすること - 革命的(かくめいてき)
①革命の実現を目指すこと
②変化が非常に激しいこと - 実験的(じっけんてき)
試しに行ってみること - 先駆的(せんくてき)
最初に行うこと - 個性的(こせいてき)
他と比較して異なる個性をもっていること - 先鋭的(せんえいてき)
考えや行動などが急進的だったり改革的だったりすること - 進歩的(しんぽてき)
進歩していること - 新感覚
これまでになかったという印象を受ける様子 - 新時代
①それまでと物事の傾向などが変わった新しい時代
②ファッションなどが新しく洒落た感じに作られていること - 新機軸(しんきじく)
今までのものとは全く変わった新しい工夫や計画 - 時代を先取りする
その時代で最も新しいことを行っていること - オリジナリティ
独自の新しさがあること - ユニーク
唯一であること - プログレッシブ
進歩的、革新的な様子 - ニューウェーブ
芸術やファッションの新しい傾向 - トレンディ
流行の先端をいくさま - コンテンポラリー
今風の
「前衛的」の対義語
前衛的には以下のような対義語があります。
- 前時代的
ひとつ前の時代のように古めかしいこと - 因習的(いんしゅうてき)
昔からの習慣に従って、新しい考え方を受け入れようとしないこと - 退嬰的(たいえいてき)
進んで新しいことに取り組もうとしないさま - 迎合的(げいごうてき)
自分の考えを曲げてでも、他人の気に入るように調子を合わせること - 伝統的
ある事柄が昔から受け継がれてきたこと - 保守的
これまで続いてきたものはそのまま続けていくべきだという考え方 - コンサバティブ/コンサバ
保守的なこと - ありきたり
珍しくないこと - 代わり映えしない
あまり変化がないこと
「前衛的」のまとめ
以上、この記事では前衛的について解説しました。
読み方 | 前衛的(ぜんえいてき) |
---|---|
意味 | 時代に先駆けていること |
語源 | フランス語の “avant-garde” (アバンギャルド) |
類義語 | 目新しい 前例のない 新奇性 など |
対義語 | 前時代的 因習的 退嬰的 など |
前衛的な考え方はすぐに理解されることは少ないですが、時代が変われば評価も変わります。
時代の変化に柔軟に対応できると良いですね。