今回ご紹介する言葉は、ことわざの「有終(ゆうしゅう)の美」です。
言葉の意味・使い方・誤った使い方・由来・類義語・「終わりよければ全てよし」について・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「有終の美」をざっくり言うと……
読み方 | 有終(ゆうしゅう)の美 |
---|---|
意味 | 物事をやり遂げ、成果を残すこと |
由来 | 『詩経』の「初め有らざるなし、克く終わり有るは鮮(すくな)し」という一節 |
類義語 | 棹尾を飾る、立つ鳥跡を濁さず、大団円など |
対義語 | 晩節を汚す、名声が地に落ちる、竜頭蛇尾など |
英語訳 | end on a high note(好調のうちに終わる)など |
このページの目次
「有終の美」の意味をスッキリ理解!
「有終の美」の意味を詳しく
「有終の美」は「物事をやり遂げ、最後を立派に仕上げること」という意味のことわざです。
「有終」は、「終わりまでやり通す」ことを表します。つまり「有終の美」は、「終わりまで美しい形でやり通す」という意味なのです。
ちなみに、「有終の美」は「有終之美」と表記されることもあります。意味に違いはありません。
「優秀の美」という表記は誤りなので注意しましょう。
正しくは「有終の美」です。
「有終の美」の使い方
「有終の美」には以下のような例文が考えられます。
- 引退がかかった3年生最後の試合で、チームは負けてしまった。しかし、キャプテンは普段以上の好プレーを見せ、観客を沸かせた。結果には結びつかなかったが、有終の美を飾ったといえるだろう。
- 15年間続いた人気漫画の連載は、作者の引退と共に幕を閉じた。普段から読者を惹きつける漫画だったが、最終回のクオリティは群を抜いていた。作者は有終の美をもって連載を終了した。
- 卒業式で壇上にあがった元生徒会長は、見事なスピーチをした。まさに有終の美といえるだろう。
- 社長は前年比売上50%アップという結果を残して、有終の美を飾られた。
上記の例文のように、「有終の美」は人生の節目まで努力を続け、最後に良い結果を残した時に用いられます。
具体的な場面としては、引退や卒業、退職、連載の修了などが挙げられます。
「有終の美」は「有終の美を飾る」という言い回しで用いられることが非常に多いです。
それ以外には、以下のような言い回しで用いられます。
- 有終の美をもって
- 有終の美となる
- 有終の美で
そして、「有終の美」を敬語の形で用いたい時には、❹の例文のように「有終の美を飾られる」と表現すると良いでしょう。
「有終の美」の誤った使い方
「有終の美」は以下のような誤った使い方をされていることがあります。
- 「有終の美を迎える」は不自然
- 「有終の美で終える」は二重表現
- 死・結婚式には用いるのは不適切
それぞれの誤った使い方について詳しく見ていきましょう。
誤用①:「有終の美を迎える」は不自然
「有終の美を迎える」という表現は不自然なので用いないようにしましょう。
「迎える」は「来るものを受け止める」という意味の言葉です。「ただ待っている」というような、受動的なニュアンスがあります。
「有終の美」は努力して最後に最高の結果を残すことを表す能動的な表現なので、「有終の美を迎える」という表現は不自然な日本語になってしまいます。
誤用②:「有終の美で終える」は二重表現
「有終の美で終える」は二重表現なので注意しましょう。
二重表現とは、同じ意味の言葉を繰り返して使ってしまうことです。「頭痛が痛い」などが有名です。
「有終の美」は「物事をやり遂げ、最後を立派に仕上げること」という意味で「終える」というニュアンスが含まれています。
そのため、「有終の美で終える」としてしまうと、「終える」という意味の言葉を2回使った二重表現になるのです。
誤用③:死・結婚式には用いるのは不適切
「有終の美」を死や結婚式に用いるのは不適切です。
「有終の美」は「最高の最後を迎える」という意味の表現です。
死は悲しむべきものであり、死自体を指して「最高の最後」と言うと不謹慎ですので注意しましょう。
また、結婚式は人生の区切りではあるもの、「終わり」ではなく「新しい人生の始まり」なので、「有終の美」を使うのは適切ではありません。
「有終の美」の由来
「有終の美」の由来は中国最古の詩集『詩経』にある、以下の一節です。
「初め有らざるなし、克く終わり有るは鮮(すくな)し」
これを現代語訳すると「民は初めは善の心を持っているが、善を最後までやり遂げる人は少ない」となります。
つまり、はじめはやる気に満ちていたとしても、最後までやり遂げる人は少ないということです。
この一説の後半部分には、「有」と「終」があります。これが由来となり、「有終の美」ということわざが生まれました。
「有終の美」の類義語
「有終の美」には以下のような類義語があります。
- 棹尾(ちょうび)を飾る:物事を立派に締めくくること
- 立つ鳥跡を濁さず:去る人は、残された人のために始末をつけるべきであるということ
- 大団円(だいだんえん):すべてがめでたく収まること
- 花道(はなみち)を飾る:最後に立派な活躍をして引退すること
- 最後を飾る:物事の最後を立派に締めくくること
- 達成(たっせい):目指していたものをやり遂げる
- 栄光(えいこう):輝かしい名誉
- 栄冠(えいかん):輝かしい勝利
- 有終完美(ゆうしゅうかんび):物事を最後までやり遂げること
- ハッピーエンド:物語などで物事がめでたく終わること
「有終の美」と「終わりよければ全てよし」は類義語ではない
「有終の美」と「終わりよければ全てよし」は響きこそ似ていますが、意味が大きく異なり、類義語ではないので注意しましょう。
2つの言葉の意味は以下のとおりです。
- 有終の美:物事をやり遂げ、最後を立派に仕上げること
- 終わりよければ全てよし:結末が良ければ過程が良くなくても問題ないということ
この2つの言葉は最後に成果を挙げている点は似ていますが、過程は全然異なります。
「有終の美」には「努力して良い過程を経ている」というニュアンスがありますが、「終わりよければ全てよし」は「過程は良くない」というニュアンスがあります。
混同して用いないように注意しましょう。
「有終の美」の対義語
「有終の美」には以下のような対義語があります。
- 晩節(ばんせつ)を汚す:人生の最後に失敗をし、それまでの地位・名誉を失うこと
- 名声が地に落ちる:今までの名声が失われること
- 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):初めの勢いは良いが、後半には振るわなくなること
- 仏作って魂(たましい)入れず:良いものを作っても大事なものが抜けていれば無駄になるということ
- 枡(ます)で量(はか)って箕(みの)でこぼす:苦労して蓄えたものを無駄に使い果たすこと
- 針で掘って鍬(すき)で埋める:苦労して積み上げたものを一度になくしてしまうこと
- 尻すぼみ:物事の勢いが終わりに近づくにつれてだんだん小さくなったり弱まったりすること
「有終の美」の英語訳
「有終の美」英語に訳すと、次のような表現になります。
- crowning glory
(最高の栄誉) - end on a high note
(好調のうちに終わる) - the last hurrah
(最後の努力) - winning the last game of the season
(シーズン最後の試合で勝つ) - end successfully
(成功に終わる) - bring 〇〇 to a successful conclusion
(良い結果になる) - crown
(栄光) - To make up one’s mouth.
(最後に美味しいものを食べて食事を終える) - Done to perfection
(完璧にやる)
まとめ
以上、この記事では「有終の美」について解説しました。
読み方 | 有終(ゆうしゅう)の美 |
---|---|
意味 | 物事をやり遂げ、成果を残すこと |
由来 | 『詩経』の「初め有らざるなし、克く終わり有るは鮮(すくな)し」という一節 |
類義語 | 棹尾を飾る、立つ鳥跡を濁さず、大団円など |
対義語 | 晩節を汚す、名声が地に落ちる、竜頭蛇尾など |
英語訳 | end on a high note(好調のうちに終わる)など |
人は時間とともに物事を忘れていきます。そのため、引退間際の行動・業績が人の印象に残りやすいのは、当然といえるでしょう。
ただ、「有終の美」のポイントは、「物事をやり通す」という点です。
最後さえ良ければ、それまでの過程がどうでもいいというわけではないので、注意しましょう。