今回ご紹介する言葉は、ことわざの「立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
このページの目次
「立つ鳥跡を濁さず」の意味をスッキリ理解!
「立つ鳥跡を濁さず」の意味を詳しく
「立つ鳥跡を濁さず」は、引き際を潔くすることを意味します。
「立つ」は、「飛び上がって去る」ことを示します。
「鳥」は、水鳥を意味しています。水鳥は季節に応じて生活する場所を移動する習性があります。水鳥は移動するとき、住んでいた水辺をきれいな状態に保ちます。そこから転じて、立ち去る者は、あとが見苦しくないようにすべきであるということも表しています。
このことわざは、自分の故郷や旧友に対する感謝などといった日本的な美意識が隠されています。日常生活からビジネスシーンまで多くの場面で使われていることわざです。
しばしば「飛ぶ鳥跡を濁さず」などと誤用されることがあるので注意して用いましょう。
「立つ鳥跡を濁さず」の使い方
- 彼は転職が決まるとすぐに、立つ鳥跡を濁さずといわんばかりに素早く身辺整理を始めた。
- 引っ越しの手続きを終えた私の部屋はまるで、立つ鳥跡を濁さずといったところだ。
- 日本人のトイレの使い方はとても清潔で、立つ鳥跡を濁さずという表現に匹敵する。
「立つ鳥跡を濁さず」の由来
「立つ鳥跡を濁さず」は、飛んで去る鳥の様子が語源です。水鳥は一定期間ある水辺に住みついたあと、別の場所へと飛び去ります。その時の水辺が、草花や餌のごみなどが一切なくよどみのない水の状態に保たれていることの美しさからこのことわざが誕生しました。
このような由来から察するに、水鳥とは具体的には白鳥や鴨などの渡り鳥ではありません。きれいに飛び立つ鳥は、水辺の鳥「鷺(さぎ)」と推測されています。
安土桃山時代のことわざ集「北条氏直時分諺留(ほうじょううじなおじぶんことわざどめ)」では、「鷺(さぎ)はたちての跡濁さぬ」と記されていました。しかしその後、江戸時代のことわざ集では「立つ鳥跡を濁さず」と書かれるようになり、これが主流になりました。
「立つ鳥跡を濁さず」の類義語
立つ鳥跡を濁さずには以下のような類義語があります。
- 鷺は立ちての後を濁さず:潔く退くこと。
- 鳥は立てどもあとを濁さず:元通りの状態にして去ること。
- 原状復帰:元の状態に戻すこと。
「立つ鳥跡を濁さず」の対義語
「立つ鳥跡を濁さず」には以下のような対義語があります。
- 後ろ足で砂をかける:人から受けた恩に報いず、裏切ること。
- 後は野となれ山となれ:自分はやるだけのことはしたからあとはどうなっても仕方がないということ。
- 旅の恥はかき捨て:旅先では普段しないような恥ずかしいことも平気でやってしまうこと。
「立つ鳥跡を濁さず」は広義で人に迷惑をかけないことを意味します。したがって反対語は、秩序を乱すような言動を意味することが多いようです。
「立つ鳥跡を濁さず」の英語訳
「立つ鳥跡を濁さず」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- It is a foolish bird that defiles its own nest.
(自分の巣を汚す鳥はおろかだ。) - Cast no dirt into the well that gives you water.
(井戸にごみを捨てるな。)
英語圏においても、自分がお世話になったものを冒涜することはタブーとされています。
まとめ
以上、この記事では「立つ鳥跡を濁さず」について解説しました。
読み方 | 立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず) |
---|---|
意味 | 引き際を潔くすること。 |
由来 | 鷺の立ち去る様子 |
類義語 | 原状復帰、鷺は立ちての後を濁さず、鳥は立てども後を濁さずなど |
対義語 | 後ろ足で砂をかける、後は野となれ山となれ、旅の恥はかき捨てなど |
英語訳 | Cast no dirt into the well that gives you water.(井戸にごみを入れるな) |
このことわざは、自分の思い入れのある場所や人に対する礼儀を表す日本独特のことわざです。別れの季節である春によく耳にする言葉でもあります。ぜひ皆さんも日常生活で使ってみください。