ことわざ「立つ鳥跡を濁さず」の意味と使い方:例文付き

言葉

「立つ鳥跡を濁さず」とは「その場をきれいに始末して立ち去るべきだ」「引き際は潔くあるべきだ」という意味です。

耳にしたことがあっても、「正確な意味がわからない」という方が多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では「立つ鳥跡を濁さず」の意味や使い方、由来、類義語などについて詳しく解説します。

「立つ鳥跡を濁さず」の意味

とりあとにごさず

  1. その場をきれいに始末して立ち去るべきだ
  2. 引き際は潔くあるべきだ

「立つ鳥跡を濁さず」には、上記2つの意味があります。

以下、1つずつ詳しく見ていきましょう。

意味①その場をきれいに始末して立ち去るべきだ

「立つ鳥跡を濁さず」の1つ目の意味は、「立ち去る者は、その場をきれいに始末してから離れるべきだ」というものです。

「立つ鳥」と「跡を濁さず」には、それぞれ以下のような意味があります。

  • 立つ鳥
    飛び立つ水鳥
  • 跡を濁さず
    飛び立った跡が濁っておらず、澄んでいる

つまり、「立つ鳥跡を濁さず」は、「水鳥が水辺を汚さずに飛び立つ」という様子を表しています。

水鳥は、季節ごとにいろいろな場所を転々とします。

その際、滞在した水辺を汚さずに飛び立つという特徴があります。

したがって、「立つ鳥跡を濁さず」は、「水鳥のように、その場をきれいに始末してから立ち去るべきだ」という言葉なのです。

意味②引き際は潔くあるべきだ

「立つ鳥跡を濁さず」には、「引き際は潔くあるべきだ」という意味もあります。

この意味は、1つ目の意味「その場をきれいに始末して立ち去るべきだ」が転じたものです。

「その場を汚さずに立ち去ること」が、以下のような状態のたとえになっているのです。

  • 後悔や未練が残っていない状態
  • 後始末をしっかり終えて、やり残している作業がない状態

「引き際は潔くあるべきだ」という意味で「立つ鳥跡を濁さず」を使う場面としては、ビジネスシーンが多いです。

似ている言い回しの誤用に注意

以下のような言い回しは、「立つ鳥跡を濁さず」の誤用です。

× 飛ぶ鳥跡を濁さず
× 立つ鳥は跡を濁さず
× 立つ鳥は跡を濁さない

ただし、「飛ぶ鳥跡を濁さず」は使う人が増えているため、「立つ鳥跡を濁さず」の言い換え表現として定着しつつあります。

「立つ鳥跡を濁さず」の価値観

「立つ鳥跡を濁さず」が表す「汚さずにその場を立ち去るべき」「潔く引くべき」という精神は、日本で重んじられている価値観といえます。

たとえば武道では、礼節を守ることや、勝負の結果を潔く認めることが重要視されています。

しかし、「立つ鳥跡を濁さず」の考え方は、日本だけのものではありません。

他の国でも、「立つ鳥跡を濁さず」の精神は好意的に受け止められます。

「立つ鳥跡を濁さず」の使い方


「立つ鳥跡を濁さず」は、主に以下のような言い回しで使います。

「立つ鳥跡を濁さず」の使い方
  • 立つ鳥跡を濁さずの状態
  • 立つ鳥跡を濁さずと言うから
  • 立つ鳥跡を濁さずに従って
  • 立つ鳥跡を濁さずという表現に匹敵する
  • 立つ鳥跡を濁さずのとおり
  • 立つ鳥跡を濁さずの精神
  • 立つ鳥跡を濁さずだ
  • 立つ鳥跡を濁さずといった様子

ここからは、2つの意味に分けて、「立つ鳥跡を濁さず」を使うシチュエーションや例文を解説します。

「立つ鳥跡を濁さず」の意味
  1. その場をきれいに始末して立ち去るべきだ
  2. 引き際は潔くあるべきだ

それぞれ見ていきましょう。

使い方①その場をきれいに始末して立ち去るべきだ

「その場をきれいに始末して立ち去るべきだ」という意味での「立つ鳥跡を濁さず」は、主に以下のような場面で使います。

使う場面
  1. 使用した場所を汚さずに立ち去るとき
  2. やるべき作業をすべて始末するとき

具体的な例文を見てみましょう。

例文
  1. 彼女が出て行ったあとの部屋は、忘れ物がないだけでなく、ほこりさえも落ちていなかった。まさに、立つ鳥跡を濁さずの状態だった。
  2. 立つ鳥跡を濁さずと言いますから、野外フェスに参加したあとは、ゴミのポイ捨てをしないようにしましょう。
  3. 立つ鳥跡を濁さずに従って、今月すべき作業は、今月中にすべて終わらせよう。
  4. 彼女は別の部署に異動する前、私に仕事を素早く丁寧に引き継いでくれた。立つ鳥跡を濁さずという表現に匹敵する。

上記の例文のように、この意味での「立つ鳥跡を濁さず」は、日常生活からビジネスシーンまで、幅広く使うことができます。

使い方②その場をきれいに始末して立ち去るべきだ

「引き際は潔くあるべきだ」という意味での「立つ鳥跡を濁さず」は、主に以下のような場面で使います。

使う場面
  1. 文句を言わずに組織から抜けるとき
  2. 未練や後悔を残さずに組織から抜けるとき

具体的な例文を見てみましょう。

  1. 最後まで社長に対する不信感は消えなかったが、立つ鳥跡を濁さずのとおり、余計なことは言わずに退職した。
  2. アルバイト先の閉店まであと1週間だ。ここで働けなくなるのは寂しいが、立つ鳥跡を濁さずの精神で、未練を口にするのはやめよう。
  3. A:彼は今の部署を気に入っていたのにも関わらず、潔く異動を受け入れたそうだ。
    B:立つ鳥跡を濁さずだね。
  4. 彼らは、きちんと話し合ったうえで、「恋人としての関係を終える」という決断に至った。お互いに立つ鳥跡を濁さずといった様子だった。

例文からもわかるとおり、この意味での「立つ鳥跡を濁さず」は、ビジネスシーンで使うことが多いです。

しかし、恋愛の別れで使うこともあります。

「立つ鳥跡を濁さず」の由来

「立つ鳥跡を濁さず」ということわざは、江戸時代のことわざ集から生まれました。

 

「立つ鳥跡を濁さず」と同じようなことわざは、安土桃山時代のころにすでに存在していました。

たとえば、『北条氏直時分諺留(ほうじょううじなおじだいことわざどめ)』には、「鷺(さぎ)はたちての跡濁さぬ」という言葉が登場しています。

「鷺は、飛び立っても跡を汚さない」という意味ですから、「立つ鳥跡を濁さず」と同じことを表していますね。

その後、江戸時代のことわざ集では、「立つ鳥跡を濁さず」という表現が使われるようになったのです。

「立つ鳥跡を濁さず」の「鳥」の種類は?

「立つ鳥跡を濁さず」の「鳥」がどの鳥を指しているかという点には、2つの説があります。

  1. 鷺だという説
    『北条氏直時分諺留』では「鷺はたちての跡濁さぬ」と記載されていたため
    さまざまな鷺の種類が各季節に日本に飛来するため
  2. 白鳥だという説
    春・秋に日本に飛来する身近な鳥であるため

「立つ鳥跡を濁さず」の類義語

「立つ鳥跡を濁さず」には以下のような類義語があります。

  • 鷺(さぎ)は立ちての跡を濁さず
    潔く退くこと
  • 鳥は立てども跡を濁さず
    元通りの状態にして去ること
  • 原状回復(げんじょうかいふく)
    本来の状態に戻すこと
  • 原状復帰(げんじょうふっき)
    変化する前の状態に戻すこと
  • 後腐れ(あとくされ)なく
    物事が終わったあとに面倒なことが残らない様子
  • 元に戻す
    元通りの状態にする

「立つ鳥跡を濁さず」の対義語

「立つ鳥跡を濁さず」には以下のような対義語があります。

  • 後ろ足で砂をかける
    人から受けた恩に報いず、裏切ること
  • 後は野となれ山となれ
    やるだけのことはしたので、後はどうなっても仕方がない
  • 先は野となれ山となれ
    やるだけのことはしたので、後のことはどうなっても仕方がない
  • 末は野となれ山となれ
    やるだけのことはしたので、後のことはどうなっても仕方がない
  • 旅の恥は掻き捨て(かきすて)
    旅先では知り合いがいないので、恥ずかしいことを平気でやってしまう
  • 旅の恥は弁慶状(べんけいじょう)
    旅先では知り合いがいないので、恥ずかしいことを平気でやってしまう

「立つ鳥跡を濁さず」は「後始末をしっかりする」「潔く退く」という意味があります。

つまり、「立つ鳥跡を濁さず」は人に迷惑をかけないことを表します。

そのため、秩序を乱すような言動を表す言葉が、「立つ鳥跡を濁さず」の対義語となります。

「立つ鳥跡を濁さず」の英語訳

「立つ鳥跡を濁さず」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • It is a foolish bird that defiles its own nest.
    (自分の巣を汚す鳥はおろかだ。)
  • It is a dirty bird that fouls its own nest.
    (自分の巣を汚すのは悪い鳥だ。)
  • It is a ill bird that fouls its own nest.
    (自分の巣を汚すのは悪い鳥だ。)
  • Cast no dirt into the well that gives you water.
    (あなたに水を与える井戸に、ゴミを捨てるな。)

これらの英語訳は、「潔く退く」という意味合いは含まれていませんから、注意しましょう。

すべて、単に「身の回りを清潔にしましょう」ということのみを表しています。

「立つ鳥跡を濁さず」の中国語訳


「立つ鳥跡を濁さず」を中国語に訳すと、次のような表現になります。

  • 好来不如好去hǎo lái bù rú hǎo qù
    (良い始め方をすることよりもむしろ、良い終わり方をすることのほうが大切だ)
  • 好来好去hǎo lái hǎo qù
    (最初から最後まで、まっとうすべきだ)

“好来不如好去” の意味を詳しく

“好来不如好去” は、「立つ鳥跡を濁さず」と同じ意味をもつ言葉です。

読み方をカタカナに表すと、「ハオライブールーハオチュー」となります。

“好来好去” の意味を詳しく

“好来好去” は、「最後だけでなく、最初も同じようにしっかりとしなければいけない」という意味であるため、最後に重点をおく「立つ鳥跡を濁さず」とは少し異なります。

“好来好去” の読み方をカタカナに表すと、「ハオライハオチュー」となります。

「立つ鳥跡を濁さず」を実現するための心がけ


「立つ鳥跡を濁さず」は、「その場をきれいに始末して立ち去るべきだ」「引き際は潔くあるべきだ」という2つの教訓を表しています。

しかし、具体的にはどのようなことをすれば「立つ鳥跡を濁さず」になるのか、イメージできないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この見出しでは、「立つ鳥跡を濁さず」を実現するための心がけについて、それぞれ解説します。

①その場をきれいに始末して立ち去るための心がけ

その場をきれいに始末して立ち去るためには、まず以下のようなことに気をつけましょう。

  • 掃除をする
  • 整理整頓をする

また、会社を辞めたり、部署を異動したりするときは、以下のような始末も大切です。

  • 上司に早めに連絡する
    (自分の意思である場合)
  • 退職前に仕事を引きつぐ
  • 備品の返却
    (名刺・社員証・制服・鍵など)
  • 残っている有給休暇を消化する

ちなみに、大学卒で、入社から3年以内に離職する人は約3割といわれています。

突然「辞めます」と言ったり、引き継ぎをせずに辞めてしまったりすると、周囲に迷惑がかかってしまいます。

そのため、「立つ鳥跡を濁さず」を目指して、計画的にやるべきことを終わらせましょう。

②引き際を潔くするための心がけ

引き際を潔くするためには、以下のようなことに気をつけましょう。

  • 未練や迷いを残さない
  • 退くことが決まったら勢いよく辞める
  • お世話になった人に感謝を述べる

仕事でも恋愛でも、上記のような点を意識することが重要です。

「立つ鳥跡を濁さず」のまとめ

以上、この記事では「立つ鳥跡を濁さず」について解説しました。

読み方立つ(たつ)鳥(とり)跡(あと)を濁さず(にごさず)
意味①その場をきれいに始末して立ち去るべきだ
②引き際は潔くあるべきだ
由来江戸時代のことわざ集から
類義語鷺は立ちての跡を濁さず
鳥は立てども跡を濁さず
原状回復 など
対義語後ろ足で砂をかける
後は野となれ山となれ
先は野となれ山となれなど など
英語訳It is a foolish bird that defiles its own nest.
(自分の巣を汚す鳥はおろかだ。)
It is a dirty bird that fouls its own nest.
(自分の巣を汚すのは悪い鳥だ。)
It is a ill bird that fouls its own nest.
(自分の巣を汚すのは悪い鳥だ。) など

「立つ鳥跡を濁さず」の意味からは、人に迷惑をかけないことの大切さがわかります。

日常生活やビジネスシーンで、「立つ鳥跡を濁さず」の精神を心がけましょう。