今回ご紹介する言葉は、ことわざの「蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「蓼食う虫も好き好き」をざっくり言うと……
読み方 | 蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき) |
---|---|
意味 | 人の好みは様々で、一概には言えないということ。 |
由来 | 蓼という苦みや辛みのある植物を好んで食べる虫もいるというところから。 |
類義語 | 面面の楊貴妃、人の好き好き笑う者馬鹿者、割れ鍋に綴じ蓋など |
対義語 | 熊野松風は米の飯 |
英語訳 | There is no accounting for taste. (人の好みを説明することはできない。) |
このページの目次
「蓼食う虫も好き好き」の意味をスッキリ理解!
「蓼食う虫も好き好き」の意味を詳しく
「蓼食う虫も好き好き」は人の好みは様々であり、一概に人の好みを決め付けられないことという意味です。
「蓼食う虫も好き不好き」と表記されることもあります。
「蓼食う虫も好き好き」を使う場面は主に以下の2つです。
- 人の悪趣味を評価する場面
- 他人の好みはそれぞれで、どうこう言うべきものではないとする場面
使う場面①:人の悪趣味を評価する場面
「蓼食う虫も好き好き」は人の悪趣味について言及する時に用いることが多いです。
悪趣味とは、ここでは品のよくない趣味や、人への嫌がらせを好むことを言います。
一般的に考えると、品のよくない趣味を好むことはよくないことですし、好む人は多くいるとは思えません。しかし、中には悪趣味を好む人もいます。
例えば、人の話を盗み聞きすることを趣味とする人や、人の恋愛の失敗を平気で馬鹿にするような人です。
そのような人に対し、人の好みはそれぞれで、悪趣味を好む人もいるのだと評する場面で使います。
「人の好みはそれぞれだもんな…」と自分に言い聞かせたり、相手に皮肉を込めて言ったりするイメージです。
使う場面②:他人の好みはそれぞれで、どうこう言うべきものではないとする場面
「蓼食う虫も好き好き」は他人の好みはそれぞれで、どうこう言うべきものではないとする場面でも使われることが多いです。
特に恋愛の趣味について、多くの人が魅力的だと思わない人と結婚した場合などに、「蓼食う虫も好き好き」という言葉を使います。
しかし、何度も言うようですが人の好みは様々です。
そして、あくまでも「変な趣味」という印象は、その人自身の持つ印象でしかなく、非常に自分勝手なものなのです。
そのようなときに「蓼食う虫も好き好き」という言葉を用います。人の好みはそれぞれで、決めつけてはいけないという意味になります。
「蓼食う虫も好き好き」の使い方
- 人の携帯画面を覗くとは悪趣味にもほどがある。でも蓼食う虫も好き好きで、色んな人がいるもんな。
- 私がずっと好きだった男性が、あんなにだらしない子と結婚するなんて。蓼食う虫も好き好きだ。
- 蓼食う虫も好き好き、牛タンを好きな人もいれば、嫌いな人もいる。決めつけてはいけない。
➀は、品が良くない趣味に対して、「蓼食う虫も好き好き」と自分に言い聞かせている場面です。
➁は、異性のタイプについて、皮肉を込めて「蓼食う虫も好き好き」と言っている場面です。
このように、悪趣味でなくとも、人の好みに対して皮肉を込めて言う場合があります。
➂は、人の好みは決めつけてはいけないということを表現している例文です。
牛タンは焼き肉の中でも人気メニューですが、好まない人もいます。
「蓼食う虫も好き好き」の由来
「蓼食う虫も好き好き」は、蓼(たで)という植物を好んで食べる虫もいるということに由来します。
蓼は「柳蓼(やなぎたで)」という種類を指す場合がほとんどです。
柳蓼は水辺に生えることが多く、実や葉には辛みや苦みがあります。しかし、中にはそれを好んで食べる虫もいます。
このように、苦みや辛みを持つ蓼を好んで食べる虫もいるということから、「蓼食う虫も好き好き」ということわざが生まれました。
また、中国の何宋(なんそう)時代の随筆集(ずいひつしゅう)に、『鶴林玉露(かくりんぎょくろ)』というものがあります。
そこに、「氷蚕(ひょうさん)は寒さを知らず、火鼠(かえん)は熱さを知らず、蓼虫(ここではりょうちゅう)は苦さを知らず、蛆虫(しょちゅう・うじむし)は臭さを知らず」という記述があります。
これが現在のように、ことわざとして使われるようになった由来であるとも言われています。
「蓼食う虫も好き好き」の類義語
「蓼食う虫も好き好き」は以下のような類義語があります。
- 面面の楊貴妃(めんめんのようきひ):人は誰もが自分の妻、恋人を楊貴妃のような美人だと思っているということ
- 人の好き好き笑う者馬鹿者:人の好みを笑うものはおろかであるということ
- 割れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた):どんな人にもそれにふさわしい配偶者がいるということ。また、両者は似通っている者同士だということ
- 蓼の虫葵に移らず(たでのむしあおいにうつらず):人は好みに従い、他に心は移さないということ
- 蓼食う虫苦みを知らず:人にはそれぞれ好みがあるということ
- 馬と女はてんで目きき:人にはそれぞれ異なった趣味や好みがあるということ
- 十人十色(じゅうにんといろ):好みや考えなどが人によって異なること
- 三者三様(さんしゃさんよう):好みや考えなどが人により異なること
- 多種多様(たしゅたよう):状態・性質などがさまざまなこと
- 千差万別(せんさばんべつ):さまざまに異なって同じでないこと
- 物好き(ものずき):わざわざ好んで風変わりなことをすること
「蓼食う虫も好き好き」の対義語
「蓼食う虫も好き好き」には以下のような対義語があります。
- 熊野松風は米の飯(ゆやまつかぜはこめのめし):謡曲(ようきょく)の『熊野』や『松風』は誰にでも好まれる名曲であるということ。
「蓼食う虫も好き好き」の英語訳
「蓼食う虫も好き好き」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- There is no accounting for taste.
(人の好みを説明することができない。) - Every man has his delight.
(すべての人にそれぞれ好みがある。) - One’s man’s meat is another man’s poison.
(ある人の肉は別の人の毒。) - There is no disputing about tastes.
(人の好みについて議論することはできない。) - Tastes differ.
(好みはさまざま。) - One’s man’s meat is another man’s poison.
(ある人の食べ物はほかの人の毒になる。) - Every man to his taste.
(人それぞれに好みがある。) - So many men, so many opinions.
(たくさんの人がいればたくさんの意見がある。)
“There is no ~ing” は「~することができない」という意味を表します。
また、“account for ~” は、「~を説明する」という意味です。
まとめ
以上、この記事では「蓼食う虫も好き好き」について解説しました。
読み方 | 蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき) |
---|---|
意味 | 人の好みは様々で、一概には言えないということ。 |
由来 | 蓼という苦みや辛みのある植物を好んで食べる虫もいるというところから。 |
類義語 | 面面の楊貴妃、人の好き好き笑う者馬鹿者、割れ鍋に綴じ蓋など |
対義語 | 熊野松風は米の飯 |
英語訳 | There is no accounting for taste. (人の好みを説明することはできない。) |
「蓼食う虫も好き好き」ということわざの、意味や使い方を理解することはできたでしょうか。
様々な価値観を認め合おうという流れがある中、使うことが今後より増えそうな言葉です。
しかし、場面によっては皮肉を含む場合や、非難を込める場合もあります。どのような状況、場面、意味で使うのか、使われているのかを見極める必要があります。
その意味で、しっかりと正しい意味や使い方を押さえておくのは重要ですね。