今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「首鼠両端(しゅそりょうたん)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「首鼠両端」をざっくり言うと……
読み方 | 首鼠両端(しゅそりょうたん) |
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意味 | ぐずぐずして、どちらか一方に決めかねているようす |
由来 | 中国の歴史書『史記』から |
類義語 | 右顧左眄、狐疑逡巡、首施両端、遅疑逡巡、優柔不断 |
対義語 | 一刀両断、敢作敢当、剛毅果断、斬釘截鉄、即断即決、進取果敢 |
英語訳 | to be unable to make up one’s mind(決断を下すことができない) sitting on the fence(中立の・どっちつかずの・曖昧な態度でいる) ride on two horses(二頭の馬に乗る) |
このページの目次
「首鼠両端」の意味をスッキリ理解!
「首鼠両端」の意味を詳しく
「首鼠両端」は、「あいまいな態度で、なかなか決断をしないようす」「どちらの味方につくのか、形勢を伺っているようす」を表す四字熟語です。
つまり、「決断できずに迷っている状態」を例えた四字熟語です。
ネズミが、自分の巣穴から顔を出して、左右をキョロキョロと見まわしているようすから、この四字熟語が生まれました。「首鼠」が「ネズミの首」という意味です。
ネズミは非常に疑り深いので、すぐには穴から出ずに、頭だけ出してあたりをうかがいます。このような、「ネズミが外に出るか迷っているようす」から「決断しきれずに迷っているさま」という意味に転じたのです。
「首鼠両端」の使い方
- 首鼠両端を持する態度は、人から嫌われるぞ。
- 首鼠両端を持するまでもなく、可能性はひとつしか残されていなかった。
- 彼が首鼠両端の態度を変えなかったせいで、けんかになってしまった。
➊➋のように「首鼠両端を持する」という使い方をすることが多いです。
「首鼠両端」の由来
「首鼠両端」は中国の歴史書である『史記(しき)』が出典の言葉です。
「首鼠両端」というフレーズが登場するエピソードは、次のような話です。
田蚡(でんふん)と竇嬰(とうえい)という二人の将軍がいました。彼らは、どちらも帝 (天下を治める最高君主)と近い立場の有力者でした。
この二人が、ある事件をきっかけに犬猿の仲になってしまいます。二人は、自分の言い分の正しさを帝に訴えようと、帝のもとに出かけ、お互いの悪口を言いあいました。
二人からの主張を受けた帝は、判断に困ってしまいます。そこで、臣下に意見を求めました。
内史(古代中国の重要な役職)であった鄭(てい)は、始めのうちは竇嬰の肩を持っていました。しかし、竇嬰の形勢が良くないと感じ、はっきりした意見を述べませんでした。
それを見て、帝は鄭をしかりつけました。「お前は普段、二人のことをあれこれと批判しているのに、このような肝心な場面では何も言わない。そんなことで内史がつとまるか。」
また、御史大夫(ぎょしたいふ)という役職の韓安国(かんあんこく)も同様です。御史大夫とは、官吏(かんり)の罪を断罪する役職のことを指します。
彼も「どちらの言い分も、それぞれ一理あります。私には判断がつきません。これより先は、陛下のご裁断を仰ぐばかりです」などと言い、決断をしません。
田蚡は帝を悩ませてしまったことを恥じて、退出します。そのあとに、次のように韓安国を叱りました。
「お前は、まるで穴から首だけ出して、出るか出るまいかとキョロキョロしている鼠だ。なぜはっきりと決断をしないのか」
この、田蚡が韓安国をしかりつけるフレーズの中で「首鼠両端」という言葉が登場します。
「首鼠両端」の類義語
「首鼠両端」には以下のような類義語があります。
- 右顧左眄(うこさべん):周りの様子をうかがうだけでなかなか決断を下さないこと
- 狐疑逡巡(こぎしゅんじゅん):いつまでも物事を決めることができないようす
- 首施両端(しゅしりょうたん):「首鼠両端」と同じ意味
- 遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん):迷って、なかなか決断を下せないこと
- 優柔不断(ゆうじゅうふだん):ぐずぐずしていて物事の決断ができないこと
「右顧左眄」の「顧」と「眄」はどちらも、「周りをうかがうこと」という意味があります。「左右をキョロキョロとして様子をうかがうだけで、決断をしない」という意味です。また、「周りが気になって、決断力が鈍ってしまうこと」という意味もあります。
「左顧右眄(さこうべん)」という非常に似た四字熟語もあります。意味は「右顧左眄」と同じです。
「狐疑逡巡」の「狐疑」は、「狐のように疑い深いこと」を表しています。また、「逡巡」は「思い切りがつかなくて、考えを巡らせること」という意味があります。
「遅疑逡巡」の「遅疑」は「疑い、迷ってなかなか決断できないようす」を表しています。また、「逡巡」は「尻込みしてぐずぐずしているようす」のことです。
「首鼠両端」の対義語
「首鼠両端」には以下のような対義語があります。
- 一刀両断(いっとうりょうだん):ずばりと物事を処理したり、判断したりすること
- 敢作敢当(かんさくかんとう):思い切って事を断行し、その結果には潔く責任をとること
- 剛毅果断(ごうきかだん):意志が強く決断力があること
- 斬釘截鉄(ざんていせってつ):毅然とした態度で、決断力があること
- 即断即決(そくだんそっけつ):その場で判断し、その場で直ちに決めること
- 進取果敢(しんしゅかかん):物事に積極的に取り組み決断力に富んでいること
「敢作敢当」の「敢作」は「思い切って行動する」という意味があります。また、「当」という文字は、ここでは「取り掛かる」という意味で使われています。
「斬釘截鉄」の漢字には、「釘や鉄を断ち切る」という意味があります。そこから、「思い切ってい決断する」という意味が生まれたのです。
「剛毅果断」の「剛毅」には、「気性が強く屈しないこと」という意味があります。また、「果断」は「思い切って事を行う」という意味です。
「進取果敢」の「進取」は、「積極的に物事に取り組む」という意味があります。「果敢」は、「決断力に富み、大胆に物事を行うさま」を表します。「果敢に挑む」などの表現で使われるときと、同じ意味です。
「首鼠両端」の英語訳
「首鼠両端」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- to be unable to make up one’s mind
(決断を下すことができない) - sitting on the fence
(中立の・どっちつかずの・曖昧な態度でいる) - ride on two horses
(二頭の馬に乗る)
「二頭の馬に乗る」という意味のride on two horsesは、「どちらの馬に乗るのか決めきれない」ということから「決断できないようす」という意味になりました。
まとめ
以上、この記事では「首鼠両端」について解説しました。
読み方 | 首鼠両端(しゅそりょうたん) |
---|---|
意味 | ぐずぐずして、どちらか一方に決めかねているようす |
由来 | 中国の歴史書『史記』から |
類義語 | 右顧左眄、狐疑逡巡、首施両端、遅疑逡巡、優柔不断 |
対義語 | 一刀両断、敢作敢当、剛毅果断、斬釘截鉄、即断即決、進取果敢 |
英語訳 | to be unable to make up one’s mind(決断を下すことができない) sitting on the fence(中立の・どっちつかずの・曖昧な態度でいる) ride on two horses(二頭の馬に乗る) |
「首鼠両端」は、日常生活で頻繁に使われる四字熟語ではありませんが、この機会に使いこなせるようになりましょう。
首鼠両端を持さずに、決断できるといいでしょう。