ステレオタイプとは「多くの人に浸透している先入観や思い込み」という意味です。
ステレオタイプはよく耳にする言葉ですが、もともとは社会学の言葉なので難しい言葉だと思ってしまいますよね。
この記事では、ステレオタイプの詳しい意味や具体例を解説していきます。
☆「ステレオタイプ」をざっくり言うと……
英語表記 | ステレオタイプ(stereotype) |
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意味 | 多くの人に浸透している先入観や思い込み |
語源 | ウォルター・リップマンが作った造語である英単語 “stereotype” |
類義語 | バイアス レッテルなど |
対義語 | 融通無碍 臨機応変など |
このページの目次
「ステレオタイプ」の意味
多くの人に浸透している先入観や思い込み
例:ステレオタイプを捨てましょう。
ステレオタイプは「先入観」や「固定観念」という意味の言葉です。
多くの人が持っている思い込みや、当たり前のことだと信じ切っていることがステレオタイプです。
ステレオタイプには以下の特徴があるとされています。
- 極端に単純化されている
- 不確かな情報や知識に基づいて誇張され、一般化されている
- 好悪、善悪、正邪、優劣などの強力な感情が含まれている
- 新たな証拠や経験に出会っても、考えが容易に変容しにくい
また、ステレオタイプは「昔から持っている考えを変えられない古い人間」というマイナスな意味でも使います。
新しいものを受け入れられない人をステレオタイプと言うのです。
ステレオタイプ長年かけて刷り込みされた考え方やイメージですが、科学的根拠があるわけではありません。
ステレオタイプは、「固定的で新鮮味のない考え」にも使うことがあります。
既出の考え方や方法なので、新鮮味がなく、面白みが感じられないというような嫌味なニュアンスで使われるのです。
「ステレオタイプ」の分野ごとの意味
ステレオタイプは、以下のような分野で使われます。
- 心理学
- ジェンダー
- プログラミング
分野➀:心理学
心理学におけるステレオタイプは「集団やカテゴリーに属する人たちに対して、外部の人間が持つ特定のイメージ」のことです。
特に職業や性別、人種などのイメージから、相手がどのような人間かを想定してしまうことです。
たとえば、弁護士であれば真面目な人、女性は感情的などのイメージがあります。
ちなみに、このように固定観念的なイメージを持っていることを「ステレオタイプ的認知」と言います。
分野➁:ジェンダー
ジェンダーにおけるステレオタイプは、性別によって特定の特性や役割を社会から求められること、自分自身に課してしまうことです。
「男だから強くあるべき」「女だから大人しくしなければならない」などの性差による思い込みのことを表します。
近年では、「ジェンダーニュートラル」という性別に頼らない考え方がよいものだとされています。
分野➂:プログラミング
プログラミングにおけるステレオタイプは、「UMLにおいてアプリケーションを表現するために追加する文字列」を表します。
UMLとは、人や言語の違いによって生じる表現の違いを統一する表記方法です。
ステレオタイプを追加することで、誤解を生じさせることなく、誰にでも解読できるようになります。
「ステレオタイプ」の具体例
ステレオタイプの中でも、特に一般的な以下の3つについて解説します。
- 性別
- 血液型
- 人種
例➀:性別
性別には以下のようなステレオタイプがあります。
- 男は地理に強い
- 男は論理的
- 女は家庭科が得意
- 女は感情的
例➁:血液型
血液型には、以下のようなステレオタイプがあります。
- A型は几帳面
- O型は大ざっぱ
- B型はわがまま
- AB型は独創的
血液型のステレオタイプにはまったく科学的な根拠がありません。
また、日本以外の国々では、血液型による性格診断などは信じられていません。
例➂:人種
有名なものでは、人種には以下のようなステレオタイプがあります。
- アメリカ人は陽気
- イギリス人は紳士的
- 日本人は周りに合わせる
- ドイツ人は規則を守る
人種のステレオタイプは、特に人種差別につながりやすくいので危険な考え方であると捉えられることが多いです。
「ステレオタイプ」の使い方
ステレオタイプは、以下のような形で使われることが多いです。
- ステレオタイプが強い・弱い
- ステレオタイプを捨てる
- ステレオタイプを押し付ける
- ステレオタイプを持つ
実際にステレオタイプを使った例文を見ていきましょう。
- 対等なコミュニケーションのためには、ステレオタイプを捨てなければならない。
- ステレオタイプを押し付けないでください。
- 彼はかなり強いステレオタイプを持っている。
「ステレオタイプ」の語源
ステレオタイプの語源は、ウォルター・リップマンにより作られた造語である英単語 “stereotype” です。
“stereotype” は、印刷する時に使っていた「ステロ版」が由来になってできた言葉です。
ステロ版とは判で押す印刷版を表す言葉で、これを使うことで簡単に大量印刷が可能になります。
そんなステロ版で作られた印刷物のように、「多くの人が型を押したように同じように考えていること」という意味から“stereotype” という造語が生まれました。
「ステレオタイプ」の提唱者
ステレオタイプは、アメリカの著作家であり、政治評論家でもあるウォルター・リップマンによって提唱された概念です。
リップマンは、1922年に出版した彼の代表的な著書『世論』でステレオタイプという言葉を用いました。
それ以降、本来使われていた社会心理学の分野だけでなく、広い分野で使われる言葉となりました。
実際に、リップマンが著書の中で行ったステレオタイプの説明を紹介します。
多くの場合、われわれは最初に見てから定義づけるのではなく、最初に定義づけてから見る。外界の、あの途方もなく、ざわついた混沌(こんとん)のなかで、われわれは文化がすでに定義づけたものを選び出し、文化が類型化したままに、その選択されたものを知覚しがちである
[出典:ウォルター・リップマン『世論』]
「ステレオタイプ」の類義語
ステレオタイプには以下のような類義語があります。
- バイアス
先入観のこと - レッテル
思い込みのこと - 偏見(へんけん)
偏った見方のこと - 差別
差をつけて扱うこと - 典型
代表例になるようなこと - 先入観
前もって抱いている固定的な観念 - 画一的
何もかも一様で個性や特徴がないこと - 固定観念(こていかんねん)
凝り固まった考えのこと - 既成概念(きせいがいねん)
ある物事についてすでに出来上がっていること - 旧態依然(きゅうたいいぜん)
昔のままで少しも進歩発展がないこと - 時代錯誤(じだいさくご)
時代にそぐわないこと - 杓子定規(しゃくしじょうぎ)
何でもひとつの規則で律しようとすること - 紋切り型(もんきりがた)
決まりきったやり方のこと - 教科書どおり
良いとされる方法に忠実に行うこと - タブロイド思考
複雑な物事を単純化して把握する思考のこと - 判(はん)で押したような
決まりきっていること - 紋切り型態度
多くの人に浸透している先入観、思い込み
「ステレオタイプ」と「レッテル」の違い
レッテルは「思い込み」という意味です。
ステレオタイプとレッテルには以下のような違いがあります。
- ステレオタイプ
個人や社会全体の中にある思い込みのこと - レッテル
特定の属性に押し付けるイメージのこと
つまり、ステレオタイプは個人がぼんやりと思っているだけのことですが、レッテルはそれを対象に押し付けることを表すのです。
「ステレオタイプ」と「偏見」の違い
偏見は「中立的ではない偏った意見」のことです。
ステレオタイプと偏見には以下のような違いがあります。
- ステレオタイプ
社会や集団に定着している考え方。ポジティブ・ネガティブどちらの意味でも用いられる - 偏見
集団もしくは個人に定着している考え方。基本的にネガティブな意味で用いられる
つまり、偏見とはステレオタイプよりも個人が主観で相手に押し付けるイメージなのです。
「ステレオタイプ」と「差別」の違い
差別とステレオタイプには、以下のような違いがあります。
- ステレオタイプ
社会や集団に定着している、対象へのイメージや考え方 - 差別
個人が持つ中立ではない考えに伴って扱いを変えること
差別という言葉は、偏見よりもさらにマイナスイメージが強いです。
さらに、差別は単に対象にイメージを押し付けるだけでなく、そのイメージによって扱いを変えるという行動が伴うのです。
「ステレオタイプ」の対義語
ステレオタイプには以下のような対義語があります。
- 融通無碍(ゆうずうむげ)
行動や考えが何の障害もなく自由で伸び伸びしていること - 臨機応変(りんきおうへん)
状況に応じて適切な処置をすること - 変幻自在(へんげんじざい)
思いのままに変化すること - 流動的な
その時々で動きが変わること - 柔軟な
容易に変化すること - 頭が柔らかい
物事に対して柔軟なこと - 凝(こ)り固まらない
ものが凝って固くならないこと
「ステレオタイプ」の関連語
ステレオタイプの関連語には以下のようなものがあります。
- ステレオタイプ人間
- ステレオタイプ思考
- ステレオタイプ脅威
それぞれの言葉の意味について詳しく見ていきましょう。
「ステレオタイプ人間」の意味
ステレオタイプ人間とは、「型にはまった考え方しかできない人」のことです。
「考え方が古く、新しいものに対応できない人」という意味で用いられることもあります。
「ステレオタイプ思考」の意味
ステレオタイプ思考とは、もともと持っている対象へのイメージだけで物事を判断してしまうことです。
ステレオタイプ思考は、差別や偏見につながることがあり、新しいアイデアも生み出しにくいと言われています。
ステレオタイプ思考を捨てて、柔軟な考え方ができるように意識していきましょう。
「ステレオタイプ脅威」の意味
ステレオタイプ脅威は、「否定的なステレオタイプにさらされた人が本来の実力を発揮できなくなってしまうこと」です。
ステレオタイプ脅威を実証するために、以下のような実験が行われました。
1回目はテストを受ける前に全員に「このテストは能力を測定するためのものではない」と説明しました。
すると、黒人も白人も、同程度のテストの点数を取ることができました。
2回目は「能力を測定するためにテストを行う」という説明をしたうえで、同様のテストを受けさせました。
すると、白人の成績はほとんど変化がなかったにも関わらず、黒人の成績は下落しました。
これは、特にアメリカなどで「黒人は白人よりも知的能力が低い」というステレオタイプが根付いているために起きてしまったステレオタイプ脅威です。
本人たちも「能力を測るためのテスト」と聞いたときに「自分は能力が低いからきっといい点数はとれないだろう」と考えてしまったということです。
「ステレオタイプ」のメリット・デメリット
ステレオタイプにはデメリットもありますが、メリットも存在します。
それぞれを解説していきます。
「ステレオタイプ」のメリット
ステレオタイプのメリットには以下のようなものがあります。
- 情報を効率的に処理できる
- ものごとを予測しやすくなる
私達の周りにはさまざまな情報がありますが、それらすべての可能性や情報を事細かに検討していたら思考が追いつきません。
そのため、私達はステレオタイプを用いることで、ものごとにある程度の予測を立てて、思考量を減らして生活しています。
この時に、あなたは「子供は予期せぬ行動を取るかもしれない」というステレオタイプを用いることで、普段よりもよりスピードを落として注意深く運転するはずです。
この時にステレオタイプを用いず、「今見えているのは幼稚園生程度の子供で、その年代のこともは予期せぬ行動をとるかもしれないと言われてはいるが、それはステレオタイプであるしこの子供は違うかもしれない」などと詳細に検討していたら、判断を下すまでに時間がかかり、事故を起こす可能性が上がります。
「ステレオタイプ」のデメリット
ステレオタイプには、以下のようなデメリットがあります。
- 差別や偏見を生む
- ステレオタイプ脅威を生む
デメリット➀:差別や偏見を生む
ステレオタイプは、必ずしもマイナスのイメージだけを表す言葉ではありません。
しかし、中には対象にマイナスのイメージを持つようなステレオタイプもあり、そのようなイメージにはマイナスな感情や行動が伴いやすいです。
つまり、マイナスなステレオタイプは、差別や偏見に繋がる恐れがあるのです。
また、そのような差別感情を政府や公的機関が利用することで大衆に広まり、プロパガンダとして利用されてしまうこともあるのです。
デメリット➁:ステレオタイプ脅威を生む
ステレオタイプ脅威は、「否定的なステレオタイプにさらされた人が本来の実力を発揮できなくなってしまうこと」です。
つまり、ステレオタイプがあることによって本来の力が発揮できないひとたちが生まれてしまうのです。
「ステレオタイプ」に捉われる人の特徴
ステレオタイプに捉われやすい人は、以下のような特徴を持っていることが多いです。
- 平均的であることを好む
- 思い込みが強い
- 自分の意見がない
これらの特徴があるからといって、必ずしもステレオタイプに捉われているというわけではありません。
「ステレオタイプ」のまとめ
以上、この記事ではステレオタイプについて解説しました。
英語表記 | ステレオタイプ(stereotype) |
---|---|
意味 | 多くの人に浸透している先入観や思い込み |
語源 | ウォルター・リップマンが作った造語である英単語 “stereotype” |
類義語 | バイアス レッテルなど |
対義語 | 融通無碍 臨機応変など |
ステレオタイプの意味だけでなく、具体例や提唱者もしっかり頭に入れてしまいしょう。