今回ご紹介する言葉は、故事成語の「塞翁が馬(さいおうがうま)」です。
意味・使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「塞翁が馬」をざっくり言うと……
読み方 | 塞翁が馬(さいおうがうま) |
---|---|
意味 | 幸福と不幸は移り変わり、予想がつかないこと |
由来 | 『淮南子』に出てくる、あるおじいさんの飼っていた馬の物語 |
類義語 | 「禍福は糾える縄の如し」「禍を転じて福となす」「楽は苦の種苦は楽の種」など |
英語訳 | Inscrutable are the ways of Heaven.(死ぬまで先はわからない) など |
「塞翁が馬」の意味をスッキリ理解!
「塞翁が馬」の意味を詳しく
「塞翁が馬」とは、「幸福と不幸は移り変わり、予想がつかないこと」という意味です。
「人間万事塞翁が馬」と表記されることもあります。
「人間」は「にんげん」と読むのが一般的ですが、由来から言えば「じんかん」と読むほうが正統です。
「幸福と不幸は移り変わる」とは、「人生に何が起こるかわからない」という意味です。
幸せなことが続いていても、ある日突然不幸に転落してしまうこともあります。
逆に、不幸続きの生活をしていても、突然幸福なことが起こることもあります。
「塞翁が馬」の使い方
- 人間万事塞翁が馬。今つらいことがあっても、いつかきっといいことがあるよ。
- 空港で足止めを食らっていたときに、今の妻と出会った。まさに塞翁が馬だ。
- 彼は大量の借金を抱えていたが、今ではその銀行で働いている。まさに塞翁が馬だ。
- 今いくら幸せでも、人生では何が起こるかわからない。塞翁が馬だよ。
- 宝くじの高額当選に浮かれてたら、塞翁が馬だと諭された。
塞翁が馬は不幸な事態に直面している人を励ます言葉として使われることが多いです。
今の不幸な事態を「思わぬ幸福のきっかけになるかもしれない」とポジティブにとらえるのです。
ただ、④、⑤の例文のとおり、幸せ続きで油断している人を戒める目的で用いられることもあります。
「塞翁が馬」の由来
「塞翁が馬」は、中国の古典『淮南子』(えなんじ)に出てくる物語に由来します。
物語のあらすじを紹介します。
ある要塞の近くに、占いが得意な老人が住んでいました。
老人の飼う馬は、ある日突然逃げ出してしまいます。
老人は「これは福を呼び込むかもしれない」と言いました。
その馬は数カ月後、しばらくして立派な馬を連れて戻ってきました。
人々が祝福すると、老人は「これは災いを引き起こすかもしれない」と言いました。
馬は増えて、子どもは乗馬を楽しむようになります。
ところが、子どもが馬から落ちて足を骨折してしまいます。
人々がお見舞いに来ると、老人は「これは良いことかもしれない」と言いました。
その頃、彼らの住む町で戦乱が起こりました。
多くの人馬が戦争に駆り出されますが、兵士のほとんどが亡くなる悲惨な結果に終わります。
子どもは骨折していたので兵士にならずに済み、命拾いをしました。
この話に出てくる老人には名前がなく、「要塞の近くに住んでいる老人」という説明しかありません。
そこで、「塞翁」と呼ばれるようになりました。「翁」(おう)は、おじいさんという意味です。
そのため、このエピソードは「塞翁が馬」と呼ばれるようになりました。
ちなみに、「塞翁が馬」の「が」は、所有を表す「の」と同じ意味です。
「要塞の近くに住んでいる老人の馬」という意味です。
話の中で、「不幸→幸福→不幸→幸福」と、幸不幸が3回も入れ替わります。そして、最終的にはハッピーエンドを迎えます。
おじいさんは、いいことが起こっているときは状況が悪くなることを想定して慎重に行動し、悪いことが起こっていても希望を失わない人であるとも言えるでしょう。
「塞翁が馬」の解釈
上記のような由来を持つ「塞翁が馬」にはさまざまな解釈があります。
そのうち、主流なのは以下のような解釈です。
- 不幸や幸福を予測するのは不可能なので、小さなことで一喜一憂するべきではない
- 人間の幸福と不幸はどんどん移り変わっていき、定まることがない
- 幸福は喜ぶことではなく、不幸も悲しむことではない
- 世の中で起こることは予想できない
- 幸福と不幸は予想できず、何が幸福や不幸につながるかはわからない
「塞翁が馬」の類義語
「塞翁が馬」には、以下のような類義語があります。
- 禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如(ごと)し:幸福と不幸は、表裏一体であること
- 沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり:人生の浮き沈みは安定しないこと
- 災(わざわ)い転じて福となす:悪いことが最終的にいいことを導くこと
- 雨降って地固まる:争いを経て、以前より仲が良くなること
- 楽は苦の種苦は楽の種:楽しみの後には苦しみが、苦しみの後には楽しみが起こること
- 楽あれば苦あり:人生楽しいことばかりではなく苦しいこともある
- 怪我の功名:なにかの失敗が意外に良い結果になること
「塞翁が馬」の英語訳
「塞翁が馬」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- Inscrutable are the ways of Heaven.
(死ぬまで先はわからない) - Joy and sorrow are today and tomorrow.
(今日の喜びは、明日の悲しみ) - A joyful evening may follow a sorrowful morning.
(悲しみの朝の後に、喜びの夜が来る) - Life is like a box of chocolate; you never know what you are going to get.
(人生はチョコレートの箱のようなものだ。何を取ろうとしているのかわからない)
※映画Forest Gumpのセリフです。 - Every cloud has a silver lining.
(どの雲にも銀の裏地がついている)
まとめ
以上、この記事では「塞翁が馬」について解説しました。
読み方 | 塞翁が馬(さいおうがうま) |
---|---|
意味 | 幸福と不幸は移り変わり、予想がつかないこと |
由来 | 『淮南子』に出てくる、あるおじいさんの飼っていた馬の物語 |
類義語 | 「禍福は糾える縄の如し」「禍を転じて福となす」「楽は苦の種苦は楽の種」など |
英語訳 | Inscrutable are the ways of Heaven.(死ぬまで先はわからない) など |
人間万事塞翁が馬。悪いことが続いても、いつかきっといいことが起こります。
状況に流されずに冷静にいることが大切ですね。