布石とは「囲碁において、序盤で要所に石を置くこと」「将来のために備えをすること」という意味です。
布石を何気なく使っていても、伏線との違いがわからないという人も多いのではないでしょうか。
また、なぜ布と石という漢字を使うのか不思議ですよね。
そこで、この記事では布石の意味や使い方、類義語や対義語に加えて、伏線との違いも詳しく解説します。
☆「布石」をざっくり言うと……
読み方 | 布石(ふせき) |
---|---|
意味 | ①囲碁において、序盤で要所に石を置くこと ②将来のために備えをすること |
誤用 | 布石を置く 布石を踏む 布石を投じる など |
語源 | 囲碁用語から生まれた |
類義語 | 捨て石 伏線 示唆 など |
対義語 | 準備不足 取り急ぎ 取り敢えず など |
英語訳 | preparation (準備) prepare (準備する) lay the foundations (地盤を築く) |
囲碁が由来の語 | 定石 駄目 八百長 など |
このページの目次
「布石」の意味
- 囲碁において、序盤で要所に石を置くこと
例:勝利への布石を打つ。 - 将来のために備えをすること
例:株を退職後の資金の布石とする。
布石は元々、囲碁用語で①の「序盤のうちに大事なところへ碁石を配置すること」を表します。
そこから転じて、②の「将来に起こることへの備えをする」という意味ももつようになりました。
布石を「ぬのいし」と読むと、「道に沿ってすえつけられた敷石」という意味になります。
「布石」の使い方
布石の使い方を、よくある言い回しと一緒に見ていきましょう。
- 布石
前部長と仲良くなったことが、吹奏楽部の次期部長になるための布石となった。 - 布石を打つ
プロの棋士が、勝利への布石を打つ。 - 布石とする
株を退職後の資金の布石とする。 - 布石として
新規事業の布石として商品のモニターを募集する。
上記の例文では「布石を打つ」以外、「将来のために備えをすること」の意味で使っています。
布石や「布石を打つ」という表現には、悪い意味はありません。
「布石」の誤用
布石の誤った言い回しには以下のようなものがあります。
- 布石を置く
「一目置く」と混同したものとされる - 布石を張る
「伏線を張る」と混同したものとされる - 布石を踏む
「定石を踏む」と混同したものとされる - 布石を投じる
「一石を投じる」と混同したものとされる - 布石を敷く
- 布石を作る
- 布石を残す
- 布石がある
「布石」の語源
布石は、元々は囲碁で使われる用語でした。
布石は以下の語から成り立っています。
- 布:配置すること
- 石:碁石
囲碁の勝負で優位になるためには、序盤でいかに有効な場所へ碁石を置けるかがとても重要です。
そのため、「要所へ碁石を配置すること」を布石というようになりました。
転じて、現在では、将来に備えて有効な策を行うことを広く指して「布石」と表現します。
「布石」の類義語
布石の類義語を2つの意味に分けて見ていきましょう。
- 囲碁において、序盤で要所に石を置くこと
- 将来のために備えをすること
①「囲碁において、序盤で要所に石を置くこと」という意味の類義語
「囲碁において、序盤で要所に石を置くこと」という意味の類義語には以下のようなものがあります。
- 捨て石
①道端などに転がっている石
②日本庭園で、風情を感じさせるために所々に置く石
③橋を支える脚などを造る時、水の勢いを弱めるために水中に投げ入れる石
④囲碁で、自分が有利になるために相手に取らせる石
⑤鉱山や炭鉱で、捨てられるような価値のない石
⑥将来のために、その場では無用と思える物事を行うこと
⑦大きな目的を達成するために見捨ててしまう物事 - 先手(せんて)
①他の誰よりも早く行動すること。それによって有利になること
②将棋や囲碁で、先に攻撃する方
②「将来のために備えをすること」という意味の類義語
「将来のために備えをすること」という意味の類義語には以下のようなものがあります。
- 伏線(ふくせん)
①小説などで、後の展開に関する物事を事前にほのめかしておくもの
②将来の準備として、前もって密かに用意しておくもの - 示唆(しさ)
それとなく教えること - お膳立て(おぜんだて)
①料理を並べること
②ある物事にすぐに取り掛かれるようにすること - 準備
ある物事にすぐに取り掛かれるようにすること - 下準備
前もってしておく準備 - 手筈(てはず)
あらかじめ予定されている物事の段取り - 予防策
好ましくない事態の発生を前もって防ぐために立てる策 - 防止策
ある事件や問題を避けたり、起こさないようにしたりするための手段 - 善後策(ぜんごさく)
後始末をうまくつけるための方法 - 対策
相手の態度や物事の状況に応じて取る手段 - 対処
ある物事に対して適切な処置をとること
「布石」と「伏線」の違い
布石と伏線は「備えを明示しているか」が異なります。
布石は、将来のために何かを行っていることを明示し、計画を説明する時に使います。
一方、伏線はあくまでも暗示に過ぎず、さりげなく予告する時に使います。
「布石」の対義語
布石には以下のような対義語があります。
- 準備不足
ある物事にすぐに取り掛かれれない状況 - 取り急ぎ
とりあえず急いで - 取り敢えず(とりあえず)
①他のことはさしおいて、まず第一に
②すぐに - 行き当たりばったり
無計画にその場の成り行きに任せて行動すること - 場当たり的(ばあたりてき)
無計画にその時の思いつきで行動すること
「布石」の英語訳
布石を英語に訳すと、次のような表現になります。
- preparation
(準備) - prepare
(準備する) - lay the foundations
(地盤を築く)
「布石」以外の囲碁が由来の語
布石は囲碁が由来となった言葉です。
囲碁が由来となった語には、他にも以下のようなものがあります。
- 定石(じょうせき)
①囲碁で、昔から研究され最善とされる定番の石の打ち方
②物事をする時に最善とされる方法 - 駄目(だめ)
①囲碁で、両者の境目にあってどちらの所有にもならない目
②効果がないこと - 八百長(やおちょう)
①勝負事において、前もって勝敗を決めておき上辺だけ真剣に勝負すること
②共謀して物事を行うこと - 一目置く(いちもくおく)
相手の能力を認めること
八百長は、江戸時代、相撲会所に出入りしていた長兵衛という八百屋(通称・八百長)が、ある相撲の年寄と囲碁をする時に、いつも一勝一敗になるように手加減していたことから、「前もって勝敗を打ち合わせておき、上辺だけ真剣に勝負すること」という意味になりました。
「一目置く」は、囲碁で弱い者が先にひとつ石を置いて勝負を始めることから、「相手より自分が弱いことを認める」という意味になりました。
「布石」のまとめ
以上、この記事では布石について解説しました。
読み方 | 布石(ふせき) |
---|---|
意味 | ①囲碁において、序盤で要所に石を置くこと ②将来のために備えをすること |
誤用 | 布石を置く 布石を踏む 布石を投じる など |
語源 | 囲碁用語から生まれた |
類義語 | 捨て石 伏線 示唆 など |
対義語 | 準備不足 取り急ぎ 取り敢えず など |
英語訳 | preparation (準備) prepare (準備する) lay the foundations (地盤を築く) |
囲碁が由来の語 | 定石 駄目 八百長 など |
布石は、囲碁用語が転じて一般的にも使われるようになった熟語です。
使いこなせるようになると、囲碁が身近に感じられるでしょう。