今回ご紹介する言葉は、熟語の「当方(とうほう)」です。
言葉の意味・使い方・注意点・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「当方」をざっくり言うと……
読み方 | 当方(とうほう) |
---|---|
意味 | 自分(たち)のほう、こちら |
類義語 | 手前ども、我が社、当社など |
対義語 | 先方、貴社、弊社など |
英語訳 | We/Us(私たちは、私たちの)など |
「当方」の意味をスッキリ理解!
「当方」の意味を詳しく
「当方(とうほう)」は、自分のほう、自分たちのほう、こちらという意味です。
自分が属している組織などを主語に取りたい時に用いられます。
「当方」は、主にビジネスシーンで使われている表現です。
一般的には堅い表現ですが、ビジネスにおいてはメールなどのやや砕けたやり取りの中で使われるもので、正式な文書などでは使われません。
「当方」の使い方
「当方」は、以下のように使われます。
- 当方といたしましては、このように考えております。
- 当方からは、こちらをお送りさせていただきます。
- 今度のコンペですが、当方も参加させていただきます。
- 決定し次第、当方よりご連絡申し上げます。
①の例文では、自分たち側の考えを述べる際に「当方」という言い方をしています。この場合、聞いている相手側からすると、発言している個人の意見ではなく組織全体の意見として聞こえます。
②の例文は、組織として贈り物をする際に、「当方から」という表現が使われています。
③の例文は、「自分たちも参加する」という意思を「当方も参加する」という言い回しを使って表現しています。
④の例文のように、連絡する担当者が明確に決まっていない場合に、「当方より」と伝えることが可能です。
上記の例文からもわかるとおり、「当方」の使い方のポイントは以下のとおりです。
- 担当者が決まってない時にも使える
- ビジネスのメールでも用いる
- 男性でも女性でも使える
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
ポイント①:担当者が決まってない時にも使える
「当方」はこちら側の担当者が決まっていない時に便利です。
たとえば、まだ担当が決まっていない顧客と話している時には「私からご連絡させていただきます」などと言い切ってしまうことができません。
そんな時に「当方」を使用すると便利です。
ポイント②:ビジネスのメールでも用いる
「当方」はビジネスのメールでも用いることができます。
たとえば、取引先との交渉のメールで、会社同士の取引になっていない場合は「当方」を使うと便利です。
ポイント③:男性でも女性でも使える
「当方」は男性でも女性でも性別に関係なく用いることができます。
「当方」を使う時の注意点
「当方」を使う時の注意点には以下のようなものがあります。
- 「私」を表す一人称としては使えない
- 実質的に「私」を表す一人称として使うことはある
- 自社内では使えない
- 契約書などでは用いない
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
注意点①:「私」を表す一人称としては使えない
「当方」は「私」を表す一人称としては使えないので注意しましょう。
「当方」は「私ども」を表す言葉だからです。
もし顧客と商談している時に、事前に相談もしてないのに「当方としましては〇〇です」と言ってしまうと、こちら側の総意だと思われてしまいます。
このような場合は、誤解されないように「私としましては」などとしましょう。
注意点②:実質的に「私」を表す一人称として使うことはある
注意点①と矛盾するようですが、「当方」は「私」を表す一人称として用いられる場合があります。
たとえば、ひとりで個人事業をしている場合に、自分個人ではなく事業体を指す場合に「当方」という言葉を使って「こちら」というニュアンスを言い表すことがあります。
また、最近では、フリーマケットアプリなどでやり取りをする際に「当方」という言い方がなされているケースがあります。
個人対個人の気軽なやり取りというよりも、相手と「取引をしている」というニュアンスから、丁寧な印象になる「当方」という言い方が使われていると考えられます。
また、ネット上では「当方25歳の、〇〇くんのファンです。」などと言う表現も見かけますが、本来の使い方としては誤りです。
しかし、界隈において慣習的に「当方」という言い方が定着しているため、その界隈におけるやり取りに限定した場合では不適切であるとは言い切れません。
注意点③:自社内では使えない
「当方」は自社内では使えないので注意しましょう。
「当方」は「自分が属している方」のことを表す言葉であり、自社内では会話の相手も「自分が属している方」になるからです。
厳密には自社内の他の部署との会話であれば自分の部署のことを指して「当方」と言えなくもありません。
しかし、少し距離を感じる言い方なので、社内では「こちらとしましては」など、別の言葉に置きかえたほうが良いでしょう。
注意点④:契約書などでは用いない
「当方」は契約書などでは用いないので注意しましょう。
「当方」は場合によって指す対象が異なる言葉です。
自分の会社全体のことを指すこともあれば、もっと狭い範囲を指すこともあります。
そのため、「当方」は主語が誰になるのか明確に示す必要がある契約書では用いません。
契約書で会社全体のことを表したい時には「弊社」を用いましょう。
また、複数の会社のことを表したい時には会社名を列挙しましょう。
「当方」の類義語
「当方」には以下のような類義語があります。
- 手前(てまえ)ども:自分たちのことをへりくだった表現
- 我が社(わがしゃ):自分の所属する会社のこと
- 当社(とうしゃ):自分の所属する会社のこと
- 弊社(へいしゃ):自分の所属する会社のことをへりくだった表現
- 下名(かめい):自分のことをへりくだって言う言葉
- 当職(とうしょく):弁護士が自分のことをへりくだって言う言葉
- 小職(しょうしょく):公務員が自分のことをへりくだって言う言葉
- 小生(しょうせい):男性が自分のことをへりくだって言う言葉
- 私ども:自分たちをへりくだって言う言葉
- こちら:私達のこと
- 弊方(へいかた):自分側の組織を指すへりくだった言い方のこと
「当方」の対義語
「当方」には以下のような対義語があります。
- 先方(せんぽう):相手の人、相手側のことを言う言葉
- 貴社(きしゃ):相手の会社を丁寧に言う書き言葉
- 御社(おんしゃ):相手の会社を丁寧に言う話し言葉
「先方」は、身内で相手のことを話す場合に使う言葉です。
敬語ではないため、相手に対して直接「先方は」などと言うのは失礼にあたります。注意しましょう。
「当方」の英語訳
「当方」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- We/Us
(私たちは、私たちの) - on my part
(当方の) - our company
(私達の会社) - on our side
(私達の側としては)
当方は、単純に “We” や “Us” と訳されます。
また、「それは当方の〜」と表現したい場合は、 “It is ~ on my part.” と言い表すことができます。
まとめ
以上、この記事では「当方」について解説しました。
読み方 | 当方(とうほう) |
---|---|
意味 | 自分(たち)のほう、こちら |
類義語 | 手前ども、我が社、当社など |
対義語 | 先方、貴社、弊社など |
英語訳 | We/Us(私たちは、私たちの)など |
すでに解説した通り、「当方」には使う場面によっては適切なときと不適切なときがあります。
「当方」の意味をきちんとおさえ、正しく使いこなせるようにしましょう。