今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「人面獣心(じんめんじゅうしん)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「人面獣心」をざっくり言うと……
読み方 | 人面獣心(じんめんじゅうしん) |
---|---|
意味 | 無慈悲で、人情をわきまえず、恥を知らないこと。 |
由来 | 前漢時代の歴史書『史記』の一節から。 |
類義語 | 人頭畜鳴、冷酷無比、悪逆非道など |
対義語 | 温厚篤実、鬼面仏心など |
英語訳 | a beast with a human face(人面獣心の), ruthless(残忍な)など |
このページの目次
「人面獣心」の意味をスッキリ理解!
「人面獣心」の意味を詳しく
「人面獣心」は、読んで字の如く「人の顔をしながら、心は獣のような人間のこと」を指します。つまり、まるで獣のような、残忍で冷酷な人間のことを意味する四字熟語です。良い意味で用いられることはまずありません。
また、同じ読みをする言葉に「人面獣身」という言葉があります。こちらは妖怪や化物のことを指す言葉ですから、混同しないように注意しましょう。
「人面獣心」の使い方
「人面獣心」を使用した文章には、以下のようなものがあります。
- 罪のない人に手をかけるなんて、犯人は人面獣心の人間に違いない。
- 私利私欲のために仲間を裏切るのは人面獣心の行為だ。
- 幼少期からの厳しい体験が、彼を人面獣心の人間にしてしまった。
先述の通り、「人面獣心」は「人の皮を被った獣」の意味です。そのため人間や人間の行動に対して用いられます。
「人面獣心」の由来
「人面獣心」は古代中国、前漢の時代の歴史書『史記』にその由来を持ちます。
この時代、帝国は帝国周辺の異民族による国土の圧迫に悩まされていました。異民族が帝国内に侵入してくることも多かったのです。
『史記』の著者である歴史家の司馬遷(しばせん)は、この異民族の様子を、「夷狄(いてき)の人、被髪左袵(ひはつさじん)して人面獣心なり」と『史記』の中で記述しています。
「夷狄」は異民族のことを指します。また、「被髪左衽」は髪を結っておらず、着物を左前に着ている様子を表します。つまりこの一節は、帝国を脅かす異民族たちの野蛮で冷酷な様子を誇張(こちょう)して表現しているのです。
この記述により、「人面獣心」という言葉が人々の間に広く使われるようになりました。こうしてみると、深い歴史を持った四字熟語と言えます。
「人面獣心」の類義語
人面獣心には以下のような類義語があります。
- 人頭畜鳴(じんとうちくめい):その人の行動が、家畜と同じくらい愚かで酷いものだということ。
- 冷酷無比(れいこくむひ):無慈悲で、無愛想な様子。
- 悪逆無道(あくぎゃくむどう):人の道を外れた、信じられないくらい邪悪な行いのこと。
- 極悪非道(ごくあくひどう):この上なく悪く、人の道を外れていること
上記の類義語も、基本的には人に対して用いられます。使うタイミングに注意しましょう。
「人面獣心」の対義語
人面獣心には以下のような対義語があります。
- 温厚篤実(おんこうとくじつ):人柄が穏やかで情に厚く、真面目であること。
- 鬼面仏心(きめんぶっしん):外見は怖いが、中身は優しい人のこと。
「人面獣心」の英語訳
人面獣心を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a beast with a human face
(人面獣心の) - ruthless
(残忍な)
1番目の表現において、 “beast” の部分を “brute” (獣、人でなし)に置き換えることもできます。
まとめ
以上、この記事では「人面獣心」について解説しました。
読み方 | 人面獣心(じんめんじゅうしん) |
---|---|
意味 | 無慈悲で、人情をわきまえず、恥を知らないこと。 |
由来 | 前漢時代の歴史書『史記』の一節から。 |
類義語 | 人頭畜鳴、冷酷無比、悪逆非道など |
対義語 | 温厚篤実、鬼面仏心など |
英語訳 | a beast with a human face(人面獣心の), ruthless(残忍な)など |
どれほど優れた技術や才能を持っていても、人面獣心の人間では人からの信用が得られず、痛い目を見るでしょう。逆にそれほど優れた能力を持っていなくても、道徳的で優しい人柄なら人から信用され、豊かな人生を送ることができます。
いついかなる状況に陥ろうとも、人を人たらしめている道理や情けは持ち合わせておきましょう。