今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「画竜点睛(がりょうてんせい)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「画竜点睛」をざっくり言うと……
読み方 | 画竜点睛(がりょうてんせい) |
---|---|
意味 | 物事を完成させる時、最後に付け加える大切な仕上げのこと。要の部分。 |
由来 | 梁の画家である張僧繇の逸話から。 |
類義語 | 点睛開眼、物事の肝、総仕上げなど |
対義語 | 夏炉冬扇、有象無象、空理空論など |
英語訳 | “critical step”(重要な段階) , “indispensable”(必要不可欠な)など |
このページの目次
「画竜点睛」の意味をスッキリ理解!
「画竜点睛」の意味を詳しく
「画竜点睛」は、「絵画や文章など、何かを作り上げていく過程で最も重要となる最後の仕上げ」「完成のためになくてはならない重要な部分」のことを指す四字熟語です。
例えば、あなたが肖像画を描いているとすれば、モデルとなる人物の顔が「画竜点睛」の部分となります。
文章を書いているならその結論やタイトルが該当しますね。
それがなくてはその物事が完成しない重要な部分を「画竜点睛」と言うのです。
「画竜点睛」のよくある間違い
「画竜点睛」には以下のような2つのよくある間違いがあります。
- 「がりゅうてんせい」と読むのは間違い
- 「画竜点晴」と書くのは間違い
それぞれの間違いについて詳しく見ていきましょう。
「がりゅうてんせい」と読むのは間違い
「画竜点睛」を「がりゅうてんせい」と読むのは間違いです。
正しくは「がりょうてんせい」と読みます。
「画竜点晴」と書くのは間違い
「画竜点晴」と書くのは間違いです。
正しくは、「画竜点睛」と表記します。
なぜなら、「画竜点睛」の「点睛」は絵に瞳を書き入れることを表すからです。「晴れる」という意味はありません。
ちなみに、「画竜点睛」の「睛」は「瞳」という意味の漢字です。
「画竜点睛」の使い方
実は、「画竜点睛」を使う場合、その使い方はほぼひとつしかありません。
- 授業のレポートに結論を組み込むのを忘れてしまい、画竜点睛を欠く結果となった。
- 昨日のドラマは途中までは面白かったが、結局何が言いたいのかわからず、画竜点睛を欠いていた。
- 研究結果はよくまとめられている。あとは画竜点睛となる発表を残すのみだ。
このように、「画竜点睛」はほとんど「画竜点睛を欠く」という使い方をします。
これは、物事を完成させるために重要なことが欠けており、「とても惜しい」という意味と、重要な部分が欠けていることによって「台無しになってしまう」という2つの意味を持つ表現です。
もちろん「画竜点睛」が単体で用いられることもありますが、「画竜点睛を欠く」という使い方に比べると耳にする機会は少ないです。
「画竜点睛」の由来
「画竜点睛」の由来は、今からおよそ1500年ほど前の南北朝時代の中国にあります。
この時代、中国の王朝は北と南に二分されていました。
その南の王朝の1つである梁(りょう)において、この四字熟語が生まれることになります。
梁に、張僧繇(ちょうそうよう)という画家がいました。
彼の絵の技術は素晴らしく、当時の梁の皇帝である武帝(ぶてい)は、彼に命じて多くの寺院の壁に絵を描かせました。
ある時武帝は、張僧繇に梁の都、建康(けんこう)にある安楽寺の壁に、4頭の竜を描くように命令しました。
張僧繇は持ち前の技術で4頭の竜をたちまち描きあげてしまいます。彼の描いた見事な竜の噂を聞きつけ、多くの人々が竜を見にやってきました。
しかし、人々が近づいてよく見てみると、その竜達には目が描き入れられていなかったのです。
人々が張僧繇に、竜に目を描き入れてくれるように頼むと、彼は「竜に目を描き入れると、この竜は壁から飛び出して飛んでいってしまう」と言って目を描き入れるのを拒みました。
当然、人々はそのような話を信じず、「張僧繇はでたらめを言っている」と非難し始めました。そこで彼は仕方なく4頭の竜のうち2頭だけに目を描き入れます。
するとたちまち空に黒い雲が現れ稲妻が走り、彼の言った通り目を描き入れられた竜は壁から飛び出して、天空に飛び立っていきました。
目を描き入れられなかった残り2頭の竜は、そのまま壁の中に留まったと言います。
人々はこの伝説から「画竜点睛」という四字熟語を創り出しました。
そして、「物事を完成させるための最後の仕上げ」「完成のために欠かすことのできないもの」といった意味を表す言葉として、広く伝えられるようになったのです。
にわかには信じがたい話ですが、張僧繇の高すぎる絵の技術が竜達に命を吹き込んだのでしょう。そう考えると、ドラマチックな由来を持つ四字熟語だと言えますね。
「画竜点睛」の類義語
画竜点睛には以下のような類義語があります。
- 点睛開眼(てんせいかいがん):物事の最も重要な部分。また、完成のために最後に手を加えること
- 物事の肝(ものごとのきも):物事の重要な部分のこと
- 総仕上げ(そうしあげ):全体の最終的な仕上げ
- 九仞の功を一簣に虧く(きゅうじんのこうをいっきにかく):大きな努力も最後の少しの過失でダメになってしまうこと
よく使われる「画竜点睛を欠く」という表現の類義語としては、「仏作って魂入れず」という言葉が類義語として当てはまります。
これもほぼ同じような意味で、「苦労して作り上げてきた物事が、肝心な部分を抜かしたために台無しになる」ということです。
苦労して作り上げたものほど、仕上げは丁寧にしたいものですね。
「画竜点睛」の対義語
画竜点睛には以下のような対義語があります。
- 夏炉冬扇(かろとうせん):役に立たない無駄なもののこと。
- 有象無象(うぞうむぞう):人数こそ多いものの、無能な人々の集まりのこと。
- 空理空論(くうりくうろん):実際の現実とかけ離れており、役に立たない無駄な理論や考えのこと。
- 虚礼虚文(きょれいきょぶん):うわべだけで、内容が伴っていない儀礼や文章のこと。
- 有害無益(ゆうがいむえき):害はあるが、役に立つことのない無駄なもののこと。
- 蛇足(だそく):余計なこと
- 鶏肋(けいろく):大して役に立たないが、捨てるのは惜しいもの
「画竜点睛」は「欠かすことのできない大切な部分」という意味を持っています。
そのため、「画竜点睛」の対義語には「役に立たない無駄なもの」という意味を持つ言葉が当てはまります。
「画竜点睛」の英語訳
画竜点睛を英語に訳すと、次のような表現になります。
- critical step
(重要な段階) - indispensable
(必要不可欠な) - completing by executing the final
(仕上げをして完成させる) - finishing touch
(最後の仕上げ)
「画竜点睛」を端的に表現するのであれば、 “indispensable” を使うのが手っ取り早いですが、より意味を近づけるためには他の2つの表現を使ってみると良いです。
ちなみに、「画竜点睛を欠く」という表現を英語に直すと、 “lacking the finishing touches” や、 “missing the completion” といった表現となります。こちらも合わせて覚えておきましょう。
まとめ
以上、この記事では「画竜点睛」について解説しました。
読み方 | 画竜点睛(がりょうてんせい) |
---|---|
意味 | 物事を完成させる時、最後に付け加える大切な仕上げのこと。要の部分。 |
由来 | 梁の画家である張僧繇の逸話から。 |
類義語 | 点睛開眼、物事の肝、総仕上げなど |
対義語 | 夏炉冬扇、有象無象、空理空論など |
英語訳 | “critical step”(重要な段階) , “indispensable”(必要不可欠な)など |
せっかく苦心して作り上げた作品も、重要な部分を忘れ画竜点睛を欠いてしまっては本来の価値を持ちません。
大切なものほど、仕上げは丁寧に慎重に行うようにしましょう。