今回ご紹介する言葉は、ことわざの「同じ穴の貉(おなじあなのむじな)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「同じ穴の貉」をざっくり言うと……
読み方 | 同じ穴の貉(同じ穴の貉) |
---|---|
意味 | 外見的には関係ない人同士でも、実は仲間であること |
由来 | 人を化かすと言われるタヌキが、貉の穴に住むことから |
類義語 | 五十歩百歩、目くそ鼻くそを笑う、人のふり見て我がふり直せなど |
対義語 | 犬猿の仲 |
英語訳 | be companions in crime(犯罪の仲間である) |
このページの目次
「同じ穴の貉」の意味をスッキリ理解!
「同じ穴の貉」の意味を詳しく
「同じ穴の貉」とは、一見すると関係なさそうな人同士でも、実は裏で繋がっており、仲間であることです。主に、悪党・悪者同士を指して使います。
特に、人のことを馬鹿にし、見下している当の本人が、見下している相手と同じ行為をしている時に頻繁に使用します。
このことわざには、使用される文脈において、二人の人の存在が必要になります。一人は、あからさまに悪いことをしている人で、もう一人は一見悪いことをしているように見えないのに、実は裏で悪いことをしている人です。
前者の人をA、後者の人をBとすると、「Aと同じ穴の貉であるB」という関係性になります。
「同じ穴の貉」の使い方
- 彼は、自分のことを置いて海外旅行へ行った彼女に怒っていた。しかし、彼も同じ穴の貉であることを私は知っている。
- 上司の鈴木は私に対し、「部下に厳しくしすぎだ」と声を張り上げて怒った。鈴木だって同じ穴の貉じゃないか。
- 優等生の僕からすると、いかにも金髪でオールバックにしている彼は、最初は近寄り難かった。しかし、授業中に積極的に挙手をし、勉強に取り組む姿を見て、同じ穴の貉なのだと分かった。
➀は、「同じ穴の貉」という言葉を使い、彼自身も好き勝手に海外旅行へ行くような人物であることを表しています。
➁は、自分のことを客観的に見れていない上司の鈴木に対し、私が心の中で不満に感じているシーンです。
➂は、「同じ穴の貉」では珍しく、良い意味で使われる例文です。このように、一見悪そうに見えたものの、実は良い人だった、という場合にも使うことができます。
「灯台下暗し」と言い換えられる場合も多いです。
「同じ穴の貉」の由来
そもそも、貉という動物はいません。貉は、アナグマの異名です。そして、日本におけるアナグマは、基本的には食肉目イタチ科アナグマ属のニホンアナグマです。つまり、貉は、ニホンアナグマであるといえます。
しかし、貉という言葉自体の定義が曖昧であり、タヌキやハクビシンなども貉に含まれることもあります。そのため、貉とアナグマが完全に同じ存在であると言い切ることはできません。
ニホンアナグマは、鋭い爪を持ち、穴を掘るのが得意です。地中に複雑で、無数の出口がある巣穴をつくります。
一方、タヌキは穴を住処とすることがありますが、狸自身は穴を掘るのが得意ではありません。そのため、他の動物(ニホンアナグマなど)の他の生物が掘った穴を利用し、自分の住処とすることがあります。
つまり、アナグマが掘った同じような巣穴に、アナグマがいることがあれば、タヌキがいることもあります。このことから、「外見は違うものの、同じ巣に住んでいて、実は繋がっている」という意味で、「同じ穴の貉」ということわざが生まれました。
野生のタヌキは、古くから人を化かすと言われ、あまり良くない印象があります。そのため、同じ穴に住む貉も悪い存在とされ、このことわざが主に悪者同士に使うようになりました。
まとめると、「同じ穴の貉」は、「悪者の狸と同じ穴に住んでいる、同類の貉」と言い換えることができます。
タヌキと貉事件
「同じ穴の貉」は、タヌキと貉が同一視されていることわざであるといえます。実際、貉の定義が曖昧である上、アナグマとタヌキは外見的によく似ています。そのことが分かるエピソードとしては、1925年に判決が下された「タヌキと貉事件」があります。
これは、貉を狩った被告人が、タヌキの捕獲を禁止する法律に違反するのではないかとされ、争われた事件です。最終的には、タヌキと貉が動物学上同じものであると判断しつつも、両者が別の生物であるとする認識もあるとし、被告人は無罪となりました。
「同じ穴の貉」の類義語
「同じ穴の貉」には以下のような類義語があります。
- 五十歩百歩:多少の違いはあっても、大して変わりはないこと
- どんぐりの背比べ:集団の中で、特に秀でたものがないことの例え
- そろいもそろって:同類のものが集まっていること
- 目くそ鼻くそを笑う:自分の欠点には気づかずに、他の誰かを笑うことの例え
- 人のふり見て我がふり直せ:他人の行動やふるまいを見て、自分のことを反省するべきだということ
それぞれ、「同じ穴の貉」とは微妙にニュアンスが異なりますが、「実は同類」という意味は共通しています。
「同じ穴の貉」の対義語
「同じ穴の貉」には以下のような対義語があります。
- 犬猿の仲:非常に仲が悪く、相いれない関係性の例え
きれいに正反対のことわざではありませんが、「外見通りに仲が悪く、明確に敵対関係にある」という点において、「同じ穴の貉」の対義語であるといえます。
「同じ穴の貉」の英語訳
「同じ穴の貉」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- be companions in crime
(犯罪の仲間である) - be all part of the same gang
(同じ一味の一員である) - birds of a feather
(同類)
まとめ
以上、この記事では「同じ穴の貉」について解説しました。
読み方 | 同じ穴の貉(同じ穴の貉) |
---|---|
意味 | 外見的には関係ない人同士でも、実は仲間であること |
由来 | 人を化かすと言われるタヌキが、貉の穴に住むことから |
類義語 | 五十歩百歩、目くそ鼻くそを笑う、人のふり見て我がふり直せなど |
対義語 | 犬猿の仲 |
英語訳 | be companions in crime(犯罪の仲間である) |
「同じ穴の貉」は、意味は何となく分かっていても、由来まで知っている人はなかなかいないでしょう。ことわざを覚えたい時には、由来も一緒に覚えると、印象に残りやすくなるため、おすすめです。