今回ご紹介する言葉は、熟語の「適当(てきとう)」です。
言葉の意味・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
このページの目次
「適当」の意味をスッキリ理解!
「適当」の意味を詳しく
「適当」には、以下の3つの意味があります。
- ある条件や目的などに、よくあてはまること
- 分量や程度などが程よいこと
- その場に合わせていい加減にやること
❸の意味は、❶や❷の意味と正反対になっているので、使い分けには注意が必要です。
どの意味で使われているのかは、基本的に文脈から判断することになります。
なお、少なくとも❶、❷の意味は、「適当」の漢字の意味を知ると納得できるのではないかと思います。
- 適:基準・条件などに当てはまること
- 当:道理にかなっていること
❸の意味が生まれた理由は、次の見出しで確認していきましょう。
なぜ「適当」が「いい加減」という意味になるのか|2つの語源
それにしても、「適当」にはなぜ「いい加減にやる」というほかの2つとは正反対の意味があるのでしょうか。
「適当」に「いい加減にやる」という意味が生まれた原因は、以下の2つが考えられています。
- 「程よい分量や程度」に明確な基準がないから
- 仕事を忘れたことを「適当」という言葉でごまかしたから
それぞれの説について詳しく見ていきましょう。
説①:「程よい分量や程度」に明確な基準がないから
上でも解説したとおり、「適当」はもともと「ある条件や目的などに、うまくあてはまること」という意味で使われていました。
ここから「分量や程度などが程よいこと」も指すようになったと考えるのが一般的です。
しかし、適当が持っている「当てはまる・程よい」といった意味には明確な基準がありません。
そのため、他の人から見たら程よくなくても、自分のさじ加減では「程よい」と感じることがあったと考えられます。
これは他人から見れば「いい加減」な状態なので、「適当」に「いい加減な」という意味も含まれるようになったのです。
説②:仕事を忘れたことを「適当」という言葉でごまかしたから
「適当」はもともと軍隊の用語が起源とされています。
そして、軍隊では武器や資材などをきちんと管理しておく必要がありました。
そのため、上官が部下に「武器の管理は適当か?」などときくことが多くありました。
この時、部下が管理を忘れていたことを隠すために、「適当であります!」と返事をしてごまかしていました。
これは上官から見れば、きちんと管理されてない「いい加減な」状態なので、「適当」に「いい加減な」という意味が生まれることになったのです。
「適当」の使い方
- 次の選択肢の中から、適当なものを選びなさい。
- お菓子作りで、適当な量の砂糖を入れる。
- 遅刻した理由を、適当に誤魔化(ごまか)す。
- 上司から「適当にやっておいてね」と書類仕事を頼まれた。
①の「適当」は、「条件にうまくあてはまること」を指しています。
この表現は、問題文などでよく使われます。
②では、「分量が程よいこと」という意味で「適当」が用いられています。
③の「適当」は、「その場に合わせていい加減にやること」という意味です。
「誤魔化す」という言葉があることからも、「いい加減にその場しのぎをする」ことを指していると分かりますね。
④の「適当」の意味には少し注意が必要です。
少しどの意味なのかわかりにくい表現ですが、「よく当てはまる」という意味が正解です。
「いい加減な」という意味で取って仕事をしてしまうと、後から怒られてしまうので注意が必要です。
この例文に限らず、ビジネスの場面では「適当」は「いい加減な」という意味で使われることはほとんどないので注意しましょう。
「適当」の類義語
「適当」の類義語は意味ごとに以下のとおりです。
- 杜撰(ずさん):間違いが多く、いい加減なこと
- ぞんざい:取り扱いがなげやりで乱暴なこと
- おざなり:その場しのぎにいい加減な言動をすること
- 雑:やり方がいい加減なこと
- 大雑把(おおざっぱ):大きな部分のみ扱われ、細かい点にまで注意してないこと
- テキトー:いい加減なこと
「テキトー」は「適当」を若者言葉にしたもので、「いい加減な」の意味のみを持ちます。
また、「いい加減」も「適当」の類義語として挙げられます。
「いい加減」は「適当」の3つの意味をすべて表すことができます。
「適当」と「適切」の違い
「適当」と「適切」には、以下のような違いがあります。
- 「適当」には「いい加減な」という意味があるが「適切」にはない
- 「適当」より「適切」のほうが、指す範囲が狭い
まず、「適切」には「いい加減な」という意味がありません。
そのため、「適当」を「いい加減な」という意味に誤解されたくない場合は、「適切」を使うのがおすすめです。
また、「1日の適当な運動時間は30分」と言った場合には、「だいたい20分~40分程度」というニュアンスです。
一方、「1日の適切な運動時間は30分」と言った場合は、「だいたい25~35分程度」といったもっと狭い範囲を指します。
「適当」の対義語
適当には以下のような対義語があります。
- 真摯(しんし):真面目で、熱心なこと
上に挙げた対義語は、適当が持つ「その場に合わせていい加減にやること」という意味の対義語です。
「ふさわしい」という意味の対義語は、打ち消しの「不」をつけた「不適当」などがあります。
「適当」の英語訳
適当を英語に訳すと、意味別に次のような表現になります。
- suitable
(適当) - adequately
(適切) - fit
(適切な)
- slack
(いい加減な) - random
(でたらめの) - flaky
(当てにならない) - unreliable
(当てにならない) - lazy
(だらしない) - sloppy
(雑な) - irresponsible
(無責任な) - vague
(あいまいな)
まとめ
以上、この記事では「適当」について解説しました。
読み方 | 適当(てきとう) |
---|---|
意味 | ある条件などに上手くあてはまること。分量などが程よいこと。いい加減にやること |
類義語 | 適切、妥当、杜撰など |
対義語 | 真摯、不適当 |
英語訳 | suitable(適当), slack(いい加減な)など |
「適当」は、一つの熟語に意味が三つもあり、使いこなすのが難しいでしょう。
しかし、適当に使うのではなく、よく考えて適当な場面で使いこなせるとよいですね。