今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「遮二無二(しゃにむに)」です。「遮二無二突き進む」などの表現で目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、「遮二無二」の意味・語源・使い方・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「遮二無二」をざっくり言うと……
読み方 | 遮二無二(しゃにむに) |
---|---|
意味 | ひたすら1つのことに全力を注ぐこと。ある感情が積もってあふれること。 |
語源 | 熟語の「遮二(2を断ち切る)」と「無二(2が無い)」から。諸説あり。 |
類義語 | 一心不乱、猪突猛進、無二無三など |
対義語 | 熟慮断行、余裕綽々など |
英語訳 | “like mad” (狂ったように), “recklessly” (向こう見ずに), “immoderately” (度を超えて)など |
このページの目次
「遮二無二」の意味をスッキリ理解!
「遮二無二」の意味を詳しく
「遮二無二」には、2つの意味があります。
1つ目は、「他のことを考えずに、ただひたすら1つの物事に集中し全力で取り組む様子」という意味です。「遮二無二~する」という形で副詞として使われ、がむしゃらなに物事に取り組む様子を表現します。
2つ目の意味としては、「ある感情がつもり募っている様子」を表します。こちらの意味でも副詞として使われ、「子どもを遮二無二かわいがる」などの言い回しがあります。
「遮二」とは「2を遮る(2より先へ及ばない)」こと、つまり「1つの物事に集中すること」を表しています。また「無二」は「2が無いこと」、つまり「後先のことを考えない」という意味です。
これら2つの熟語が合体することで、「後先のことを考えず、ひたすらに1つの物事に集中すること」という意味の四字熟語となりました。漢字が意味を端的に示してくれていますね。
「遮二無二」の語源
「遮二無二」の語源については、2つの説があります。
1つ目は、前述したように、「遮二」と「無二」が組み合わさることで生まれたとするものです。
2つ目は、17世紀ごろに存在した「(差里無理)しゃりむり」という言葉から転じて生まれたという説です。「差理無理」は「何が何でも」といったニュアンスの言葉で、ある方面へ神経が注がれることを指します。
どちらが正しい由来なのか、はたまたどちらも正しいのかということは定かではありません。
しかし、記憶に留めておくとすれば、「遮二」と「無二」が組み合わさって生まれた、というエピソードを覚えておくとよいでしょう。そうすれば、たとえ意味を忘れてしまったとしても漢字から意味を推測できますよね。
「遮二無二」の使い方
「遮二無二」の使い方として、以下のようなものが挙げられます。
- 夏休みの宿題をまったくやっていなかった私は、夏休み後半に遮二無二取り組んだ。
- 苦しい戦いだったが、遮二無二ぶつかって勝利を得ることができた。
- どうやら彼は、私の姉に遮二無二ほれ込んでいるようだ。
差し迫った雰囲気でない場合や、感情に余白がある場合はあまり「遮二無二」という言葉は使いません。
「遮二無二」の類義語
遮二無二には以下のような類義語があります。
- 一心不乱(いっしんふらん):他のことに注意を向けず、1つのことに集中している様子。
- 猪突猛進(ちょとつもうしん):ある目標に向かって向こう見ずに突き進むこと。
- 無二無三(むにむさん):ひたすらに1つの物事を行うこと。
- 一意専心(いちいせんしん):ある物事だけに意識を集中させること。
- 真一文字(まいちもんじ):1つのことに全力を傾けること。
- 我武者羅(がむしゃら):後先を考えず、1つのことに夢中になること。
基本的には、「遮二無二」と同じく副詞的に使うものが多いですが、「猪突猛進」は主に動詞として使います。
「一意専心」や「真一文字」などは、物事を行う際の心構えとして、座右の銘にする人もいます。その一方で同じ「遮二無二」の類義語であっても、「猪突猛進」や「我武者羅」などは、「向こう見ず」というマイナスのイメージを与えるようなものもあります。
状況に合わせて、適切な四字熟語を使用できるとよいですね。
「遮二無二」の対義語
遮二無二には以下のような対義語があります。
- 熟慮断行(じゅくりょだんこう):考えに考えた上で行動に移すこと。
- 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく):とてもゆったりとしていて、余裕がある様子。
「遮二無二」は「脇目も振らず突き進む」「ひたすらに集中する」といった意味ですから、その対義語としては「じっくりと考える様子」や「余裕がある様子」を表す四字熟語が当てはまります。
「遮二無二」の英語訳
遮二無二を英語に訳すと、次のような表現になります。
- like mad
(狂ったように) - recklessly
(向こう見ずに) - immoderately
(度を超えて、際限なく)
英語の単語を見るだけで、「遮二無二」の含むイメージが伝わってきますね。like mad については、“mad” の代わりに “crazy” や “the devil” を当てはめる場合もあります。
後先を考えない無鉄砲さをネガティブに表現する場合は recklessly を用いましょう。また、感情が激しくつのる様子を指す場合 immoderately が適しています。
上記3つの表現を用いた英語訳は以下の通りです。
- As son as we caught sight of a bear, we ran like mad.
(熊が視界に入るや否や、僕たちは夢中で駆け出した。) - They pushed forward recklessly in the bad weather.
(彼らは、悪天候の中、後先考えずに突き進んだ。) - My grandparents are immoderately fond of me.
(祖父母は、僕のことをやたらと可愛がってくれる。)
まとめ
以上、この記事では「遮二無二」について解説しました。
読み方 | 遮二無二(しゃにむに) |
---|---|
意味 | ひたすら1つのことに全力を注ぐこと。ある感情が積もってあふれること。 |
語源 | 熟語の「遮二(2を断ち切る)」と「無二(2が無い)」から。諸説あり。 |
類義語 | 一心不乱、猪突猛進、無二無三など |
対義語 | 熟慮断行、余裕綽々など |
英語訳 | “like mad” (狂ったように), “recklessly” (向こう見ずに), “immoderately” (度を超えて)など |
1つの物事に集中するのは素晴らしいことです。自身の掲げる目標を達成するためには、不可欠な姿勢ですよね。しかし、1つのことばかりに気を取られ、他のことがまったく見えなくなってしまうのも考えものです。
「遮二無二」努力するのも良いですが、視野が狭くなりすぎないように注意することも大切でしょう。