今回ご紹介する言葉は、故事成語の「推敲」です。
この言葉は有名なので、使ったことがある、という人もいるのではないでしょうか。
特に文章を書く人には馴染み深い言葉ですよね。
意味を知っていないと困ってしまうこともあるかもしれません。
そこで、「推敲」の意味、由来、例文、類義語、英訳についてわかりやすく解説します。
「推敲」の意味をスッキリ理解!
「推敲」の意味を詳しく
「推敲」とは、文章を何度も練り直すことです。
つまり、一度書いた文章をじっくり見て考え、おかしなところや直したほうがいいところがないか探しながら直していく作業が「推敲」です。
そして、レポート、小説、論文などを直す時に使われることが多いでしょう。
「推敲」の由来
「推敲」の出典は『唐詩紀事(とうしきじ)』という本です。
この本は中国の唐の時代の詩と詩にまつわる話などをまとめた本なのですが、この中に推敲にまつわる話が出てきます。
詳しく見ていきましょう。
唐の時代、科挙という官吏登用試験を受けるために、遠路はるばるやってきた人物がいました。
彼の名前を賈島(かとう)と言います。
彼はロバに乗って試験会場へ向かっていたのですが、移動時間に詩を作っていました。
そんな時、彼は「僧は推す月下の門」という句を思いつき、それを口ずさみました。
すると、「推す」のほかに「敲(たた)く」という語も思いついてしまい、どちらにするか迷ってしまいました。
そして、手綱をとるのも忘れ、手で門を押すまねをしたり、敲く真似をしたりしましたが、なかなか決まりませんでした。
彼はあまりにも夢中になっていたので、向こうから役人の列がやってきたのにも気づきません。
そして、その列に突っ込んでいってしまいました。
運の悪いことに、その列は長安の都知事である韓愈(かんゆ)の列でした。
よって、彼はとらえられ、韓愈の前に連れていかれたのです。
賈島が列に突っ込んでいってしまった理由を話すと、韓愈は怒ることもなく、「これは『敲く』のほうがいいだろう。月下に音を響かせる風情があっていい」とアドバイスしたのです。
実は、韓愈は漢詩が上手なことで有名でした。
そうして、賈島と韓愈はしばらく詩について論じあったのでした。
これが、推敲の由来です。
ちなみに、賈島は結局、韓愈のアドバイスに従って、「敲く」を採用しました。
科挙とは、598年から1905年まで行われていた官僚登用試験です。
科挙は家柄や身分に関係なく誰でも受験できる公平な試験で、才能ある個人を発掘するのが目的でした。
そして、科挙の人気は高く、3000倍の倍率になることもあったようです。
「推敲」の例文
- 文章を書いたら、よく推敲するべきだ。
- 彼の文章はよく推敲されているので、とても読みやすい。
- 推敲する能力が高い人は尊敬に値する。
「推敲」の類義語
「推敲」には以下のような類義語があります。
- 添削
- 校正
- 精査
「推敲」の英語訳
「推敲」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- work on one’s manuscript to improve the wording
(語を改善するために草稿を見直す)
まとめ
以上、この記事では「推敲」について解説しました。
読み方 | 推敲(すいこう) |
---|---|
意味 | 文章を何度も練り直すこと |
由来 | 賈島が詩に「推す」を使うか、「敲く」を使うか迷ったことから |
類義語 | 精査、添削、校正 |
英語訳 | work on one’s manuscript to improve the wording |
「推敲」は文章を書く人にとって、とても大切な作業です。
欠かさないようにしたいものですね。