今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「則天去私」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・英語訳について分かりやすく解説します。
「則天去私」の意味をスッキリ理解!
「則天去私」の意味を詳しく
「則天去私」は、「自らを自然に任せて、個人的な考えや私欲を捨てること」という意味の四字熟語です。
「天」は自然の道理を指します。則は「したがう」という意味です。つまり、「則天」は「自然の道理をお手本にして従うこと」という意味です。「去私」は、「個人的な考えや私欲を捨てる」という意味です。
「則天去私」の使い方
- 則天去私の考えのもと生きていきたい。欲の深さは災いを招く。
「則天去私」の由来
「則天去私」は、夏目漱石(なつめそうせき)が晩年に唱えた造語です。
「則天去私」は新潮社が出版した『大正六年文章日記』という文学愛好者向けに編集された日記帳に登場しています。
各月の一番初めのページに、文豪直筆の文章上の座右の銘のコピーが掲載されています。1ヶ月に1人ずつの言葉が掲載され、そのなかの1つが漱石の「則天去私」です。漱石のほかには、高浜虚子や泉鏡花らが書いたものが掲載されています。
「則天去私」は漱石の文学・人生の理想であるとも、悟りを意味するとも言われています。
また、その考えは、未完の遺作『明暗』の中に示されているとされています。人間の持つ利己主義(エゴイズム)に対抗し、「自らを自然に任せて、個人的な考えや私欲を捨てるべきである」という考えです。
しかし、漱石がこのことに言及したという記録は残っていません。『大正六年文章日記』以外に「則天去私」の書は見つかっていません。
「則天去私」の類義語
則天去私には以下のような類義語があります。
- 心頭滅却(しんとうめっきゃく):心の動きを止め、悟りの境地にいること
- 大悟徹底(たいごてってい):悟りきること
- 無念無想(むねんむそう):無心になること
- 明鏡止水(めいきょうしすい):心にやましいことがなく、静かに落ち着いていること
無念無想は、仏教用語が由来です。「無心になること」という意味が転じて「何も考えず、思慮がないこと」という意味も持ちます。
大悟徹底は、仏教が由来の言葉です。「徹」を「撤」と間違いやすいので注意しましょう。
明鏡止水は、明鏡は「曇りのない鏡」という意味です。また、止水は「静かな水面」という意味です。
「則天去私」の英語訳
則天去私を英語に訳すと、次のような表現になります。
- selfless devotion to justice
(自分の欲を言わず、正義に身を捧げる)
まとめ
以上、この記事では「則天去私」について解説しました。
読み方 | 則天去私(そくてんきょし) |
---|---|
意味 | 自らを自然に任せて、個人的な考えや私欲を捨てること |
由来 | 夏目漱石の造語 |
類義語 | 心頭滅却、大悟徹底、無念無想、明鏡止水 |
英語訳 | selfless devotion to justice(自分の欲を言わず、正義に身を捧げる) |
「則天去私」は夏目漱石の造語です。これを機会に「則天去私」を示しているとされる、未完の遺作『明暗』を読み、さらに理解を深めてはいかがでしょうか。