今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「疾風怒濤(しっぷうどとう)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「疾風怒濤」をざっくり言うと……
読み方 | 疾風怒涛(しっぷうどとう) |
---|---|
意味 | 激しい嵐や荒れ狂う波のこと。また時代や社会の様子が大きく変化すること。 |
由来 | ドイツでゲーテらが起こした文学革新運動から。 |
類義語 | 疾風迅雷、迅速果断、光芒一閃など |
対義語 | 春風駘蕩、悠々閑々、優柔不断など |
英語訳 | “storm and urge” , “like the wind” など |
このページの目次
「疾風怒濤」の意味をスッキリ理解!
「疾風怒濤」の意味を詳しく
「疾風怒濤」は、「激しく荒れ狂う嵐や波の様子」「時代や社会の状況が大きく変化していく様子」を表す四字熟語です。
「疾風」は「強く激しい風」のことを指し、「怒涛」は「激しく荒れ狂う大波」のことを指します。どちらの熟語も、日常生活でよく使いますよね。「怒涛の追い上げ」などという場合は、「激しい大波のような勢いの追い上げ」という意味になります。
これら2つの熟語が組み合わさることで、「疾風怒濤」は上記のような意味を持つようになりました。「時代や社会の様子が大きく変化する」という意味も持つことに注意しましょう。
「疾風怒濤」の使い方
「疾風怒濤」を使う場合、どちらの意味であろうと「勢いのあるもの」に使われることが多いです。以下に使い方の例を記載します。
- 台風の影響で、東京湾はまさしく疾風怒濤の様相を呈(てい)していた。
- スパルタの兵士たちは疾風怒濤の勢いで敵兵を攻撃した。
- スマートフォンの登場は、疾風怒濤のごとく世の中を変化させた。
上の例に見えるように、「荒れ狂う嵐や波」の意味で使おうと、「時代や社会の様子が大きく変化する様子」という意味で使おうと、激動の時代や軍隊のように高い推進力(すいしん)を持った、勢いのあるものに対して用いられています。
逆に言えば、疾風怒濤という四字熟語はそれくらい勢いがあるものに対して使わなければ不自然だということです。
日常生活で用いる機会はあまりないかもしれませんが、スポーツの観戦やアクション映画の鑑賞の際に使うことができますね。
「疾風怒濤」の由来
四字熟語としては珍しく、「疾風怒濤」は18世紀後半のドイツにその由来を持ちます。四字熟語の中では新しい部類に入りますね。
18世紀後半のドイツの文学界では、人間の理性的な部分を極端に重視し、感情や人間性といったものを軽視する風潮がありました。つまり、文学という媒体(ばいたい)を、物を知らない人に何かを教えるための道具として扱っており、文学における感情や人間性の表現を後回しにしていた、ということです。
ドイツの名高き文豪であるゲーテやシラーは、この流れに強く反発しました。彼らは文学革新運動を起こし、後の時代に「ロマン主義」と言われる文学の基礎を作ったのです。
そして、彼らが起こしたこの革新運動のことをドイツ語で「Sturm und Drang(シュトゥルム・ウント・ドラング)」と呼びます。この単語は本来ドイツ語で「嵐と衝動」という意味を持っていますが、ドイツ文学者である高橋健二氏がこの語を日本語に訳す際、「疾風怒濤」という訳を考案したのです。
このエピソードから、「疾風怒濤」は本来の意味である「荒れ狂う嵐や波」という意味と、「時代や社会の様子が大きく変化する」という意味を持つようになりました。
日本人の高橋氏が日本語訳を考案したことから、日本に由来を持つ言葉だということも出来ますね。
由来を知れば、2つの意味をより深く理解できます。
「疾風怒濤」の類義語
疾風怒濤には以下のような類義語があります。
- 疾風迅雷(しっぷうじんらい):激しく吹く風や激しい雷のこと。また素早く、激しい様子。
- 迅速果断(じんそくかだん):決断力があり、素早く物事を行うこと。
- 光芒一閃(こうぼういっせん):光のように、物事が素早く、急激に変化する様子。
- 電光石火(でんこうせっか):動きがとても素早いこと。また、非常に短い時間のこと。
- 獅子奮迅(ししふんじん):獅子のように、猛烈な勢いで活動すること。
「疾風怒濤」もそうですが、その類義語も、その意味から戦国武将の旗や座右の銘、ゲームの技など、幅広い分野に用いられています。
こうしてみるとどれも語感が良く、意味も魅力的なものが多いですよね。合わせて類義語とその意味も覚えて、日常生活の中で使えるようにしましょう。
「疾風怒涛」の対義語
疾風怒涛には以下のような対義語があります。
- 春風駘蕩(しゅんぷうたいとう):のどかで、ゆったりとしていること。
- 悠々閑々(ゆうゆうかんかん):ゆったりとしており、のんびりと構えている様子。
- 優柔不断(ゆうじゅうふだん):判断が遅く、決断力が欠けている様子。
「疾風怒涛」は「激しい嵐や波」「激動の時代」といった意味ですから、その対義語には穏やかでゆったりとした様子を示す四字熟語が当てはまりますね。
ゆったりとしていることは決して悪いことではありませんが、あまりにもゆったりとし過ぎていると「優柔不断」と言われてしまいます。注意しましょう。
「疾風怒涛」の英語訳
疾風怒涛を英語に訳すと、次のような表現になります。
- storm and urge
(嵐と衝動) - like the wind
(疾風のように素早く)
“storm” (嵐)や “urge” (衝動)を用いて表すこともありますが、英語圏でもドイツ語のまま “Sturm und Drang” と表現してしまうことが多いです。
英語での表現を忘れてしまった時は、そのまま “Sturm und Drang” と表現しましょう。
まとめ
以上、この記事では「疾風怒涛」について解説しました。
読み方 | 疾風怒涛(しっぷうどとう) |
---|---|
意味 | 激しい嵐や荒れ狂う波のこと。また時代や社会の様子が大きく変化すること。 |
由来 | ドイツでゲーテらが起こした文学革新運動から。 |
類義語 | 疾風迅雷、迅速果断、光芒一閃など |
対義語 | 春風駘蕩、悠々閑々、優柔不断など |
英語訳 | “storm and urge” , “like the wind” など |
前述の通り、「疾風怒涛」は座右の銘とされることも多く、物事を行う際の理想像と言われることさえあります。
確かに、目的に向かって一直線に邁進する様子は魅力的ですよね。人生は短いですから、自分の目標を目指して疾風怒涛のごとく活動したいものです。