今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「小心翼翼(しょうしんよくよく)」です。
言葉の意味・使い方・由来・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「小心翼翼」をざっくり言うと……
読み方 | 小心翼翼(しょうしんよくよく) |
---|---|
意味 | 慎重でおとなしく、気配りができること。また、気が小さく臆病なこと |
由来 | 『詩経』の「大雅」 |
類義語 | 細心翼翼、萎縮震慄、戦戦慄慄など |
対義語 | 鷹揚自若、肝然不動、磊々落々など |
英語訳 | cautious(慎重な)、very timid(とても臆病な)など |
このページの目次
「小心翼翼」の意味をスッキリ理解!
「小心翼翼」の意味を詳しく
「小心」は慎重な様子を表します。一方で、臆病な様子も示します。
また、「翼翼」は、親鳥がヒナをじっと見守って、敵に狙われないようにする様子から生まれた言葉です。つまり、おとなしい状態で周囲に気を配り、注意深く過ごす様子を表します。
したがって、「小心翼翼」は2つの意味をもつのです。1つ目は「慎重でおとなしく、気配りができること」です。2つ目は「気が小さく、臆病であること」です。
もともと、「小心翼翼」は前者のポジティブな意味合いのみを表していました。しかし、時代の流れとともに、後者のネガティブな意味合いで使うことが一般的になりつつあります。
なお、「小心翼翼」は「翼翼小心」と表記する場合もあります。
「小心翼翼」の使い方
「小心翼翼」は、「小心翼翼としている」「小心翼翼だ」といったかたちで用います。このことを踏まえて、例文を解説します。
まず、「小心翼翼な彼女は、いつも余裕をもったスケジュールを作成してくれるので、不測の事態が起きてもチームに混乱が起きない。」という文を考えてみましょう。
チームの物事がうまく進むように気を配って、あとで変更が利くようなスケジュールを組んでいることから、この女性は慎重で十分な配慮を行うことができることがわかりますね。
ですから、この文での「小心翼翼」は、「慎重でおとなしく、気配りができること」という1つ目の意味で使われています。
次に、「彼は小学生の頃、小心翼翼としていて、些細なことでも身をこわばらせていた。しかし、同窓会で久しぶりに会ったとき、堂々としていて余裕のある様子だったので、彼の成長を感じた。」という文はどうでしょうか。
「些細なことでも身をこわばらせていた」とありますから、小学生の当時、この男性はとても臆病であったことがわかりますね。時を経て会ってみると、彼がゆったりと落ち着いた様子になっていたため、成長が感じられたということです。
したがって、この文での「小心翼翼」は、「気が小さく臆病であること」という2つ目の意味で用いられています。
このように、「小心翼翼」は、意味によって使い方も異なります。
「小心翼翼」の由来
中国最古の詩集に、『詩経(しきょう)』というものがあります。このなかの「大雅(たいが)」という章には、周という王朝が中国を治めていた時代に、宴会で披露された数々の詩がまとめられています。
「大雅」の文中に、「これこの文王、小心翼翼たり。昭(あき)らかに上帝に事(つか)え、ここに多福を懐(おも)えり」という文が登場します。
「文王は慎重で、気配りができる人である。上帝につかえて、人々の幸せを願った。」という意味です。周の文王(ぶんおう)という王様の素晴らしい人柄を表しているのです。
この文で初めて「小心翼翼」という言葉が使われました。ですから、もともと「小心翼翼」は、1つ目の意味である「慎重でおとなしく、気配りができること」のみを示していたことがわかります。
「小心翼翼」の類義語
「小心翼翼」には以下のような類義語があります。
- 細心翼翼(さいしんよくよく):慎重でひかえめであること。また、臆病であること。
- 萎縮震慄(いしゅくしんりつ):恐怖で身を縮めること
- 戦戦慄慄(せんせんりつりつ):びくびくすること
- 小心小胆(しょうしんしょうたん):臆病で気が小さいこと
- 戦戦恐恐(せんせんきょうきょう):恐れて慎重になること
- 風声鶴唳(ふうせいかくれい):些細なことで恐れること
「細心翼翼」は、「小心翼翼」と同じように、「慎重でおとなしく、気配りができること」という意味と「臆病である」という意味の両方を表します。
一方、ほかの5つの類義語は、「小心翼翼」の2つ目の意味である「気が小さく臆病であること」のみを表していることがわかります。
「小心翼翼」の対義語
「小心翼翼」には以下のような対義語があります。
- 鷹揚自若(おうようじじゃく):落ち着いていて、動じないこと
- 従容自若(しょうようじじゃく):ゆったりとして落ち着いていること
- 神色自若(しんしょくじじゃく):内心や外見が落ち着いていること
- 泰然自若(たいぜんじじゃく):落ち着いていて、平常心を保っていること
- 肝然不動(かんぜんふどう):落ち着いていること
- 磊々落々(らいらいらくらく):度量が広く、細かいことにこだわらないこと
- 豪放磊落(ごうほうらいらく):細かいことにこだわらず、朗らかでいること
7つとも、「気持ちが落ち着いていて動じない」という意味をもっています。つまり、「小心翼翼」の2つ目の意味である「気が小さく臆病であること」と対極の状態を表していることがわかりますね。
「小心翼翼」の英語訳
「小心翼翼」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- cautious
(慎重な) - circumspect
(慎重な) - faint-hearted
(臆病な心をもった) - very timid
(とても臆病な)
「慎重でおとなしく、気配りができること」という意味で「小心翼翼」を表したいときは、 “cautious” や “circumspect” を使いましょう。
また、「気が小さく、臆病であること」という意味で英語に訳したい場合は、 “faint-hearted” や “very timid” を用いましょう。
まとめ
以上、この記事では「小心翼翼」について解説しました。
読み方 | 小心翼翼(しょうしんよくよく) |
---|---|
意味 | 慎重でおとなしく、気配りができること。また、気が小さく臆病なこと |
由来 | 『詩経』の「大雅」 |
類義語 | 細心翼翼、萎縮震慄、戦戦慄慄など |
対義語 | 鷹揚自若、肝然不動、磊々落々など |
英語訳 | cautious(慎重な)、very timid(とても臆病な)など |
おとなしく慎重に行動することは大事ですが、だからといって過度に臆病な状態では物事が前進しません。「小心翼翼」という四字熟語は、その難しさを教えてくれる四字熟語といえますね。