今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「質実剛健(しつじつごうけん)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「質実剛健」をざっくり言うと……
読み方 | 質実剛健(しつじつごうけん) |
---|---|
意味 | 飾り気が無く真面目で、心身ともにたくましいこと。 |
由来 | 明治政府が発行した詔書から。 |
類義語 | 不撓不屈、剛健質朴、剛毅木訥など |
対義語 | 奢侈文弱、華美柔弱、巧言令色など |
英語訳 | “earnest and strong” (真面目でたくましい), “unaffected and sincere”(素朴で誠実な) など |
このページの目次
「質実剛健」の意味をスッキリ理解!
「質実剛健」の意味を詳しく
「質実剛健」は、「質実」と「剛健」という別の2つの熟語から成り立っています。「質実」は「質素で誠実なこと」「飾り気が無く、真面目なこと」を表します。そして「剛健」は「たくましく、心身ともにしっかりとしていること」を表しています。
これらの単語が組み合わさることにより、「質実剛健」は「自分を取り繕う様子もなく、真面目で心も体もたくましいこと」を意味するのです。
漢字を見ることで、意味を連想しやすくなりますね。
「質実剛健」の使い方
質実剛健には、以下のような使い方があります。
- 私の学校は質実剛健を校訓をしている。
- 質実剛健な男性は頼り甲斐がって、魅力的だ。
- 質実剛健の気風がある若者は珍しい。
例文に見られるように、「質実剛健」は理想の人物像の表現として校訓や目標として掲げられたり、人の気質、特に男性を褒めるときに用いられることが多いです。
「素朴で真面目であり、心身ともにたくましい」という意味ですから、悪い意味で使われることはまずありません。覚えておくと、会話のバリエーションが増えそうですね。
「質実」と「剛健」の位置を入れ替えて、「剛健質実」ということもあります。意味は同じですから、「質実剛健」と同様に使うことができます。
しかし、「質実剛健」を「質実強健」と書くのは誤用ですから、注意しましょう。確かに「強健(きょうけん)」は「体が強く、丈夫であること」を表します。「剛健」と非常に意味は似ていますが、四字熟語として「質実」と組み合わせる際には「剛健」を用います。
「質実剛健」の由来
四字熟語は古代の中国に由来を持つものが多いですが、「質実剛健」は日本の明治時代にその由来を持っています。
明治時代、日本では江戸幕府の体制が崩壊し、明治維新を成し遂げました。明治維新を経て日本は、それまで鎖国によって知ることができなかった海外の情勢について知るようになります。
江戸時代には知る由もありませんでしたが、日本はそこで初めて自分たちが海外の国々に遅れていることに気がつくのです。
明治政府は列強の国々に追いつくために、様々な分野で改革を実施しました。その中で政府は国民に向けて、『戊辰詔書(ぼしんしょうしょ)』という詔書を発行します。詔書とは天皇の命令を伝える公文書のことです。詔書には以下のように記されていました。
「国民は忠実に仕事に励み、倹約(けんやく)をしながら生計を立て、質実を重んじて自らを励み、勉め(つとめ)続けなければならない」
明治政府は国家を発展させていくために、国民1人1人に「理想像」を提示して、そうなるように期待したのです。
「質実剛健」という四字熟語は、この詔書の言葉に由来しています。「誠実であること」を意味する「質実」に「剛健」を組み合わせ、現在のような四字熟語になりました。
「質実剛健」の類義語
質実剛健には以下のような類義語があります。
- 不撓不屈(ふとうふくつ):強い意志をもち、いかなる困難にも怯まず、くじけないこと。
- 剛健質朴(ごうけんしつぼく):飾り気がなく素直で、頼もしいこと。
- 剛毅木訥(ごうきぼくとつ):素朴で意志がしっかりとしていること。
- 百折不撓(ひゃくせつふとう):何度くじけても、自分の意志を曲げないこと。
- 志操堅固(しそうけんご):志や考え方を守り、何があっても変えないこと。
「質実剛健」の類義語としては、主に「飾り気が無くしっかりとしていること」を表す四字熟語と、「自分の意志を曲げないこと」を表す四字熟語が当てはまります。
前者はまず間違いなく良い意味で用いられますが、後者は時と場合によっては、「頑固で人の意見を聞き入れようとしない」という悪い意味で用いられることもあるので注意しましょう。
「質実剛健」の対義語
質実剛健には以下のような対義語があります。
- 奢侈文弱(しゃしぶんじゃく):驕って(おごって)贅沢を尽くし、弱々しいこと。
- 華美柔弱(かびにゅうじゃく):華やかさが過ぎて、逆に弱々しいこと。
- 巧言令色(こうげんれいしょく):うわべだけ取り繕い、口先だけで中身が伴わないこと。
「質実剛健」の対義語としては、「外面を取り繕って中身が伴わない」「過度に装飾すること」を表す四字熟語が挙げられます。
「巧言令色」は有名な論語の言葉として有名ですね。「剛毅木訥」との対比で用いられることが多いです。
「質実剛健」の英語訳
質実剛健を英語に訳すと、次のような表現になります。
- earnest and strong
(真面目でたくましい) - unaffected and sincere
(素朴で誠実な) - with fortitude and vigor
(不屈の精神と活力を備えた)
英語訳を見ると、どの表現も2つの英単語が “and” で結ばれているのが分かります。 “fortitude” (不屈の精神)など難しい単語もありますが、どの単語がどんな意味を持っているのかを理解して覚えるようにしましょう。
まとめ
以上、この記事では「質実剛健」について解説しました。
読み方 | 質実剛健(しつじつごうけん) |
---|---|
意味 | 飾り気が無く真面目で、心身ともにたくましいこと。 |
由来 | 明治政府が発行した詔書から。 |
類義語 | 不撓不屈、剛健質朴、剛毅木訥など |
対義語 | 奢侈文弱、華美柔弱、巧言令色など |
英語訳 | “earnest and strong” (真面目でたくましい), “unaffected and sincere”(素朴で誠実な) など |
「質実剛健」はその由来から、武道やスポーツの心得、理想の人物像として幅広く人々の目標として浸透してきました。外見に全く気を使わないのも考えものですが、内面が外見に勝るということは古くから多くの人に言われ続けていることです。
お洒落をするのと合わせて、自分の内面もしっかりと磨くようにしましょう。