無下と無碍では意味が大きく異なります。
日常で「無碍にする」という表現を使ってしまった経験はありませんか?
実はこの表現、間違いなんです。無下と無碍は実は全然意味が異なる言葉なので、間違えず使っていきたいですよね。
そこで、この記事では無下と無碍の違いから、それぞれの意味の詳細まで、詳しくわかりやすく解説しています。
- 無下の意味は「考慮する必要がないとして、冷たく扱うこと」
- 無碍の意味は「とどこおらせる障害がないこと」
- 無下の類義語は「冷淡」「すげなくする」「台無しにする」など
- 無下の対義語は「無上」「親切」「情け深い」など
- 無下の英語訳は「flatly」「completely」「treat ~ coldly」
- 無碍の類義語は「自由」「自在」「柔軟」など
- 無碍の対義語は「拘束」「束縛」「制限」など
- 無碍の英語訳は「freedom」「free from obstacles」「flexible」
【結論】意味が違う
無下と無碍では、以下のように大きく意味が異なります。
- 無下
考慮する必要がないとして、冷たく扱うこと - 無碍
とどこおらせる障害がないこと
そのため、間違って使うと思わぬ誤解を招いてしまうかもしれません。
無下と無碍はどちらも発音は「むげ」で同じです。
そのため、口頭で用いると「無下」について言っているのか、「無碍」について言っているのかわからなくなってしまう場合があるので注意しましょう。
「無下」の意味を詳しく
- 冷淡なさま
- 程度が並外れているさま
- まったく
- (打ち消しの言葉をつけて)全然
②~④は古文を中心に用いられる表現です。
そのため、無下は「冷淡なさま」という意味で用いられることがほとんどです。
上で紹介した無下の意味は、正確には「無下に」という言葉の意味です。
「無下」と「無下に」もまた意味がまったく異なりますが、「無下」は古文で用いられるのみで、現在では用いられていません。
そのため、この記事では現在でも用いられている「無下に」の意味や使い方について解説していきます。
「無下」の使い方
「無下」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 無下にする
- 無下にはできない
- 無下に扱う
- 無下に断る
- 無碍に突き放す
- 無碍にあしらう
- 無碍な態度
それぞれの言い回しについて例文と一緒に詳しく見ていきましょう。
「無下にする」の使い方
「無下にする」は「放っておいて見向きもしない」という意味です。
冷淡な態度で相手を放置する様子を表します。
無下に関する言い回しで一番使われる頻度が高いです。
- せっかくのチャンスを無下にするなんて!
- 人からしてもらった親切を無下にするべきではない。
- 人からの好意を無下にしてしまったと反省している。
「無下にはできない」の使い方
「無下にはできない」は「見向きもしないことなんてできない」という意味の表現です。
- 彼女からの好意を無下にはできない。
- お客様からのご厚意は無下にはできない。
「無下に扱う」の使い方
「無下に扱う」は「放っておいて見向きもしない」という意味です。
「無下にする」とほぼ同じ意味です。
- 部下からの差し入れを無下に扱う。
- 気が滅入っていたからか、子どもの要求を無下に扱ってしまった。
「無下に断る」の使い方
「無下に断る」は「そっけなく断る」という意味の表現です。
「まったく検討することなく断る」というニュアンスを表します。
- 上司に提案を無下に断られた。
- 先方との商談を無下に断ったことで、大きな影響が出ている。
「無下に突き放す」の使い方
「無碍に突き放す」は「冷たい態度で否定する」という意味です。
- 復縁の要求を無下に突き放した。
- 部下を無下に突き放すのは良くない上司だ。
「無下にあしらう」の使い方
「無下にあしらう」は「放っておいて見向きもしない」という意味です。
「無下に扱う」とほぼ同じ意味用いられます。
- 家族を無下にあしらうなんてかわいそうだ。
- 祖母を無下にあしらうことなんてできない。
「無下な態度」の使い方
「無下な態度」は「冷たい態度」という意味です。
- A部長は無下な態度しか取らないので、部下から好かれていない。
- 無下な態度を取って得することはほとんどない。
「無下」の類義語
「無下」には以下のような類義語があります。
- 冷淡(れいたん)
態度が冷たいこと - すげなくする
そっけなくする - 台無(だいな)しにする
あることの価値がなくなること - 無駄(むだ)にする
価値をなくしてダメにする - 非情(ひじょう)
人間らしい感情を持たないこと - 無慈悲(むじひ)
あわれむ気持ちが欠けていること - 捨て置く(すておく)
そのままにしておく - 無視(むし)する
あるものをないがごとくみなすこと
「無下」の対義語
「無下」には以下のような対義語があります。
- 無上(むじょう)
これ以上ないこと - 親切(しんせつ)
思いやりが深いこと - 情け深い(なさけぶかい)
思いやりの心が強いこと - 温情(おんじょう)
思いやりがある優しい心
「無下」の英語訳
「無下」を英語に訳すと以下のような表現になります。
- flatly
(冷淡に) - completely
(完全に) - treat ~ coldly
(冷たく扱う)
このうち、 “treat ~ coldly” はどちらかいうと、「無下にする」を英語訳にしたものです。
補足:「無下」の敬語表現
上司など目上の人に対して「無下に扱わないでほしい」と思うこともあるかもしれません。
しかし、そのまま言うと角が立ってしまいます。
そんな時には以下のような言葉で言い換えるのが便利です。
- ご考慮ください
例:佐藤さんの気持ちもご考慮くださると幸いです。 - ご配慮ください
例:女性ならではの事情にご配慮くださいますよう、よろしくおねがいします。
「無碍」の意味を詳しく
とどこおらせる障害がないこと
無碍は自由であり、何も障害がない様子を表します。本来は仏教用語です。
無下とは意味が大きく異なることがわかります。
ちなみに、無礙(むげ)と表記されることもあります。
「無碍」の使い方
「無碍」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 無碍だ
- 無碍に
- 融通無碍(ゆうずうむげ)
- 自由無碍(じゆうむげ)
- 闊達無碍(かったつむげ)
「無碍にできない」「無碍な扱い」は誤用なので注意しましょう。
「無下にできない」「無下な扱い」と表記するのが正解です。
それぞれの言い回しについて例文と一緒に詳しく見ていきましょう。
「無碍だ」の使い方
「無碍だ」は「障害がなく自由な様子」という意味です。
「無碍だ」と文末で用いられることは少なく、「無碍な〇〇」という形で文中で用いられることが多いです。
- 無碍な子どもたちを見て、リフレッシュすることができた。
- 彼女は無碍な発想で画期的な改善案を出した。
「無碍に」の使い方
「無碍に」は「とどこおりなく自由に」という意味です。
- 無碍に作品を作る子どもたちを見て、新しいアイデアを思いついた。
- 新規事業のアイデアを考えるコツは、無碍に思考を巡らせることだ。
「融通無碍」の使い方
「融通無碍(ゆうずうむげ)」は「考えや行動に障害がなくのびのびしていること」を表す四字熟語です。
- 彼女は融通無碍な発想力でクリエイティブな作品を生み出し続けている。
- 融通無碍に考えられた子どもの頃に戻りたい。
「自由無碍」の使い方
「自由無碍(じゆうむげ)」は「何の障害もなくのびのびしていること」という意味です。
「融通無碍」とほぼ同じ意味を表します。
- 自由無碍に考えれば現状の打開策が見つかるはずだ。
- 自由無碍に考えられる君のアイデアを聞かせてほしい。
「闊達無碍」の使い方
「闊達無碍(かったつむげ)」は「心が広く物事にとらわれないさま」という意味です。
- 闊達無碍に思想を巡らせるのが哲学者の役割だ。
- 闊達無碍な発想力を身につけるため、修行することにした。
「無碍」の類義語
「無碍」には以下のような類義語があります。
- 自由(じゆう)
ほかからの束縛を受けず思うままふるまうこと - 自在(じざい)
邪魔するものがなく思う通りになること - 柔軟(じゅうなん)
しなやかで適用性が高いこと - 縦横無尽(じゅうおうむじん)
思う存分 - 自由自在(じゆうじざい)
どのようなものでも思い通りにできること - 自由奔放(じゆうほんぽう)
常識にとらわれず自分のしたいように行動すること
「無碍」の対義語
「無碍」には以下のような対義語があります。
- 拘束(こうそく)
行動の自由のなくすこと - 束縛(そくばく)
動きの自由に制限を加えること - 制限(せいげん)
ここまでは許せるという限界を決めること - 不自由(ふじゆう)
自由にならないこと
「無碍」の英語訳
「無碍」を英語に訳すと以下のような表現になります。
- freedom
(自由) - free from obstacles
(障害がない) - flexible
(柔軟な)
「無下」と「無碍」の違いのまとめ
無下と無碍には以下のような違いがあります。
- 無下
考慮する必要がないとして、冷たく扱うこと - 無碍
とどこおらせる障害がないこと
「無碍に扱う」などの間違った言葉を使わないように気をつけたいですね。