今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「侃侃諤諤(かんかんがくがく)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「侃侃諤諤」をざっくり言うと……
読み方 | 侃侃諤諤(かんかんがくがく) |
---|---|
意味 | 怯まずに、自分が正しいと思うことを堂々を主張して議論すること。また、盛んに議論する様子。 |
由来 | 古代中国の書物である『論語』と『史記』から。 |
類義語 | 議論百出、百家争鳴、丁々発止など |
対義語 | 独立独歩、隠晦曲折、独断専行など |
英語訳 | “They discuss actively” (彼らは盛んに議論している), “They say the right opinion” (正しい意見を述べる)など |
このページの目次
「侃侃諤諤」の意味をスッキリ理解!
「侃侃諤諤」の意味を詳しく
「侃」は「ひるむことのない強気な性格」を表し、「諤」は「正論をためらうことなく発言すること」といった意味を表します。ここからわかるように、「侃侃諤諤」は「自らの意見を堂々と発表し、ある方向に向かって激しく議論を交わす様子」を表します。
「侃」も「諤」も共に常用漢字ではないため、漢字から意味を類推することは難しいですね。四字熟語として、その意味をしっかりと押さえておきましょう。
「侃侃諤諤」の使い方
この四字熟語は「自分の意見を怯まずにはっきりと述べる」「相手と盛んに議論を交わす」といった意味ですから、当然使われる場面としては議論や会議などが多くなります。例えば、以下のような使い方がされます。
- 税金の使い方について侃侃諤諤の議論で白熱し、収拾がつかなくなった。
- チームメンバー同士で侃侃諤諤と意見を戦わせた結果、良い製品が出来上がった。
- 自らの進路について、両親と侃侃諤諤議論した。
「侃侃諤諤」は、建設的な議論や話し合いがなされていれば、議論を交わす人数に関係なく使用することができます。しかし、単に相手を罵り合っている場合や、1人の人が一方的に自分の意見を語っている場合などに使用するのは不適切です。
また、この言葉は同じ四字熟語の「喧々囂々(けんけんごうごう)」とよく混同されます。「喧々囂々」は、「騒ぎ立ててうるさい様子」「大勢の人が喧しく(やかましく)話している様子」を意味し、「侃侃諤諤」のように議論や話し合いといったニュアンスはありません。語感が似ており間違えやすいため注意しましょう。
「侃侃諤諤」の由来
「侃侃諤諤」の由来は少し特殊です。「侃侃」と「諤諤」それぞれの言葉で由来が異なるのです。
どちらも古代中国の書物にその由来を持ちます。しかし、「侃侃」は古代中国の思想家である孔子(こうし)の著作である『論語(ろんご)』に、「諤諤」は同じく古代中国の歴史家である司馬遷(しばせん)の著作である『史記』に、その由来を持っているのです。
『論語』の中に、「侃侃如たり」という表現が登場します。これは日本語に訳すと「信念を曲げない様子」という意味を表します。
一方、『史記』の中には「千人之諾諾、不如一士之諤諤」という一節があります。これは、「千人が調子よく承知するよりも、たった1人の率直な意見の方が遥かに優れている」という意味です。
現在使われている「侃侃諤諤」は、『論語』の「侃侃」と『史記』の「諤諤」が組み合わさって生まれた言葉なのです。2つの言葉が合わさることで、「自分の意見をはっきりと述べ、盛んに議論する様子」という意味になりました。
「侃侃諤諤」の類義語
侃侃諤諤には以下のような類義語があります。
- 議論百出(ぎろんひゃくしゅつ):様々な意見が次々と出てくること。
- 百家争鳴(ひゃっかそうめい):様々な立場の人たちが、自由に議論を交わすこと。
- 丁々発止(ちょうちょうはっし):激しく議論を戦わせる様子。また、刀などで激しく斬り合う様子。
- 談論風発(だんろんふうはつ):話し合いや議論を活発に行うこと。
- 諤諤之臣(がくがくのしん):自分が正しいと思ったことを、はっきりと口に出していう人のこと。
先ほど使い方の例で「喧々囂々」をあげましたが、「人々が集まって盛んに話している」という意味では、広義において「侃侃諤諤」の類義語ということもできます。
しかし、「議論」や「話し合い」に焦点を当てるとやはりニュアンスが異なるため、上の類義語一覧からは省いています。意味の違いをしっかりと理解して使用するようにしましょう。
「侃侃諤諤」の対義語
侃侃諤諤には以下のような対義語があります。
- 独立独歩(どくりつどっぽ):他のものからの影響を受けず、自分のやりたいようにやること。
- 隠晦曲折(いんかいきょくせつ):言い回しが回りくどく、はっきりとしないこと。
- 独断専行(どくだんせんこう):自分ひとりの考えで勝手に行動すること。
「侃侃諤諤」の対義語には、「意見をはっきりと述べず、回りくどい様子」や、「他人の意見を聞き入れず、自分で全て決定する」といった意味を持つ四字熟語が当てはまります。確かにこういった様子は、「議論」や「話し合い」とはかけ離れていますよね。
「侃侃諤諤」の英語訳
侃侃諤諤を英語に訳すと、次のような表現になります。
- They discuss actively
(彼らは盛んに議論している) - They say the right opinion
(正しい意見を述べる)
「侃侃諤諤」をずばり一言で表すような英単語はないため、文章での表現となります。英語圏の人々はその言語の特徴や性格から、日本人よりもはっきりと物事を述べる方が多いです。そのため、わざわざこのような表現を作る必要が無かったのですね。
まとめ
以上、この記事では「侃侃諤諤」について解説しました。
読み方 | 侃侃諤諤(かんかんがくがく) |
---|---|
意味 | 怯まずに、自分が正しいと思うことを堂々を主張して議論すること。また、盛んに議論する様子。 |
由来 | 古代中国の書物である『論語』と『史記』から。 |
類義語 | 議論百出、百家争鳴、丁々発止など |
対義語 | 独立独歩、隠晦曲折、独断専行など |
英語訳 | “They discuss actively” (彼らは盛んに議論している), “They say the right opinion” (正しい意見を述べる)など |
日本人はその国民性から、海外の方と比べると自分の意見を人前ではっきりと主張するのが得意ではありません。日本人として、「個」よりも「集団」を重んじる日本文化も大切にすべきですが、昨今のグローバル化、ボーダーレス化に伴い、自己を主張する能力も必要不可欠と言えます。
言うべきことははっきりと言い、様々な人と活発に議論を交わせるようになると良いですね。