「安堵」の意味とは?使い方・類語から「安心」との違いまで解説

言葉

安堵とは「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」「垣根の内側で安心して暮らすこと」「幕府などが土地の所有権などを認めること」という意味です。

安の意味はなんとなく想像がついても、堵はどんな意味なのかわかりにくいですよね。

また、安堵と安心の違いが気になっている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、安堵の意味や使い方に加えて、安心との違いも詳しく解説します。

☆「安堵」をざっくり言うと……

読み方安堵(あんど)
意味①気がかりなことが解消されて、ほっとすること
②垣根の内側で安心して暮らすこと
③幕府などが土地の所有権などを認めること
語源安:やすめる。落ち着ける
堵:土で固めた垣のこと
類義語安心
一安心
気休め など
対義語心配
不安
危惧 など
英語訳relief(ほっとすること)
feel greatly relieved(ほっと胸をなでおろす)
peace of mind(心の平和)
安堵がつく語本領安堵
安堵奉行
安堵状 など

「安堵」の意味

安堵あんど

  1. 気がかりなことが解消されて、ほっとすること
  2. 垣根の内側で安心して暮らすこと
  3. 幕府などが土地の所有権などを認めること

一般的には、①の「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」の意味で使われます。

ここからは、安堵の3つの意味を詳しく解説します。

意味①気がかりなことが解消されて、ほっとすること

1つ目は、「不安や心配事などが除かれて、ほっとすること」という意味です

気にかかっていたことがなくなり、緊張から解放されることを表します。

意味②垣根の内側で安心して暮らすこと

2つ目は、「垣根の内側の土地で、安心して生活すること」という意味です

垣根とは、敷地や庭の境目に設置する草や竹で作られた仕切りのことです。

↑垣根

意味③幕府などが土地の所有権などを認めること

3つ目は、「鎌倉から室町の初めに、幕府などが土地の所有権などを認めたこと」という意味です

鎌倉時代から室町時代の初め、土地の所有権を決める仕組みは、先祖の土地を受け継ぐものから、幕府やその国の領主などに土地の所有権を認めてもらうものに変化していきました。

安堵は、幕府などに土地の所有権などを認めてもらうことを表します。

「安堵」の使い方

安堵の使い方を、以下の3つの意味ごとに分けて見ていきましょう。

  1. 「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」の意味の使い方
  2. 「垣根の内側で安心して暮らすこと」の意味の使い方
  3. 「幕府などが土地の所有権などを認めること」の意味の使い方

使い方①「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」の意味

「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」の意味の例文は、以下のようなものがあります。

よくある言い回しと例文を見ていきましょう。

  • 安堵の息を漏らす
    例:事故に遭った兄が軽い怪我で済んだと聞き、安堵の息を漏らした。
  • 安堵のため息をつく
    例:すべり止めに受験した学校に合格し、安堵のため息をつく。
  • 安堵の色を見せる
    例:病気自体よりも、寧ろ病気による三吉との破綻を恐れてゐた花子は、彼の言葉を聞くと、幾らか安堵の色を見せた。
    [出典:中村地平『悪夢』]
  • 安堵の胸をなでおろす
    例:追試に合格した知らせを受けて、安堵の胸をなでおろした。
  • 安堵の表情が浮かぶ
    例:一回戦を突破して、安堵の表情が浮かんだ。
  • 安堵の表情を浮かべる
    例:長旅の末、親戚の家に辿り着くことができ、彼は安堵の表情を浮かべた。
  • 安堵の声が上がる
    例:橋から落ちそうになっていた子猫が救出され、野次馬からは安堵の声が上がった。
  • 安堵感が広がる
    例:近所を騒がせていた事件の犯人が逮捕され、近隣住民の間には安堵感が広がった。
  • 安堵感でいっぱい
    例:母が迎えに来た時、幼かった僕は安堵感でいっぱいになった。

使い方②「垣根の内側で安心して暮らすこと」の意味

「垣根の内側で安心して暮らすこと」の意味の例文は、以下のようなものがあります。

  • それより八幡にも安堵せずなりて、かかる身となりにけるとぞ
    (それ以来、石清水八幡宮でも小殿(おどの)を安住させないようになって、このような身(強盗の支配者)になったということだ。)
    (※)小殿:強盗の名前
    [出典:『古今著聞集』]

使い方③「幕府などが土地の所有権などを認めること」の意味

「幕府などが土地の所有権などを認めること」の意味の例文は、以下のようなものがあります。

  1. ここ一帯は、戦の功績によって安堵された土地だ。
  2. 所帯に安堵したりけるが、其恩を報ぜんとや思ひけん
    (土地の所有権などを認められて生活に安心できましたが、その恩に報いようと思ったのか)
    [出典:『太平記』]

「安堵」の語源

安堵を分解すると、以下の漢字から成り立っています。


  • やすめる。落ち着ける

  • 土で固めた垣のこと

つまり、「垣根の内の土地で落ち着くこと」を表します。

そこから転じて、「気がかりなことが解消されて、ほっとすること」という意味ももつようになりました。

「安堵」の類義語

安堵には以下のような類義語があります。

  • 安心(あんしん)
    気がかりなことがなく、心が落ち着いていること
  • 一安心(ひとあんしん)
    ひとまず落ち着くこと
  • 気休め(きやすめ)
    その場限りの安心
  • 人心地(ひとごこち)
    くつろいだ気持ち
  • 心弛び(こころゆるび)
    気持ちが安まること
  • ほっとする
    安心して一息つくさま
  • 重荷を下ろす
    心の悩みや不満がなくなり安心すること
  • 愁眉を開く(しゅうびをひらく)
    心の悩みや不満がなくなり安心すること
  • 胸のつかえがおりる
    心の悩みや不満がなくなり安心すること
  • 胸をなでおろす
    心配事がなくなり安心すること
  • 肩の荷が下りる
    責任や負担がなくなり楽になること
  • 枕を高くする
    気にかかることがなく、安心してゆっくり眠ること

「安堵」と「安心」の違い

安堵と安心は以下のような違いがあります。

安堵安心
意味気がかりなことが解消されて、ほっとすること気がかりなことがなく、心が落ち着いていること
ニュアンスほっとするほっとすることが続く
使う場面書き言葉話し言葉

安堵と安心はほとんど同じ意味ですが、厳密には細かいニュアンスと使う場面が異なります

安堵は、ほっとする瞬間を表し、書き言葉としてよく使われますが、安心は、ほっとすることが続くことを表し、話し言葉としてよく使われます。

また、安堵は安心に言い換えることができますが、安心は安堵に言い換えられないことがあります。

例文を見てみましょう。

例文
  • 安堵を安心に言い換えられる場合
    ○:彼女が無事で安堵した。
    ○:彼女が無事で安心した。
  • 安心を安堵に言い換えられない場合
    ○:彼女は無事ですので、安心してください。
    ×:彼女は無事ですので、安堵してください。

上記の言い換えられない場合の例文では、「少しだけほっとすること」をお願いすることは不自然であるため、言い換えると不自然になっています。

「安堵」の対義語

安堵には以下のような対義語があります。

  • 心配(しんぱい)
    物事の先行きなどを気にして、心を悩ますこと
  • 不安(ふあん)
    気がかりなことがあり、心が落ち着かないこと
  • 危惧(きぐ)
    悪い結果になるのではないかと恐れて心配すること
  • 懸念(けねん)
    気にかかって不安になること
  • 憂慮(ゆうりょ)
    心配して思い煩うこと
  • 屈托/屈託(くったく)
    あるひとつのことが気にかかって他のことが手につかないこと
  • 憂える(うれえる)
    悪い結果になるのではないかと不安になること
  • 恐れる
    危険を感じて不安になること
  • 胸を痛める
    心を悩ます
  • 気に病む
    気にかかって悩むこと

「安堵」の英語訳

安堵を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • relief
    (ほっとすること)
  • feel greatly relieved
    (ほっと胸をなでおろす)
  • peace of mind
    (心の平和)

「安堵」がつく語

安堵がつく語には以下のようなものがあります。

  • 本領安堵(ほんりょうあんど)
    鎌倉から室町の初めに、幕府などが、忠誠を誓った家臣に土地の所有権を認めた制度
  • 安堵奉行(あんどぶぎょう)
    鎌倉から室町の初めに、安堵に関する職務を行なった職名
  • 安堵状(あんどじょう)
    鎌倉以降、主君が家臣に土地の所有権を認める時に出した文書
  • 安堵町(あんどちょう)
    奈良県生駒郡(いこまぐん)にある町
  • あんどした
    (宮崎県の方言で)飽きた

「あんどした」は、宮崎県の方言で「飽きた」という意味です。

安堵とは関係がありません。

例文を見てみましょう。

例文
  • 鬼ごっこはあんどしたから、他の遊びをしよう。

「安堵」のまとめ

以上、この記事では安堵について解説しました。

読み方安堵(あんど)
意味①気がかりなことが解消されて、ほっとすること
②垣根の内側で安心して暮らすこと
③幕府などが土地の所有権などを認めること
語源安:やすめる。落ち着ける
堵:土で固めた垣のこと
類義語安心
一安心
気休め など
対義語心配
不安
危惧 など
英語訳relief(ほっとすること)
feel greatly relieved(ほっと胸をなでおろす)
peace of mind(心の平和)
安堵がつく語本領安堵
安堵奉行
安堵状 など

安堵は主に書き言葉として用いられますが、日常生活でも目にすることが多い熟語です。

意味をしっかり理解して、正しい使い方ができるようになるとよいですね。

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まや
自称、誤字キラー。 Web記事でも誤字脱字を見逃しません。言葉が大好きです。 大学では言葉遊びについて研究していました。マイブームは日本語ラップを聴くこと。