一蓮托生とは「極楽浄土で同じ蓮華(れんげ)の上に生まれ変わる」「何があっても運命を共にする」という意味です。
一蓮托生という言葉を耳にしたことがあっても、正確な意味や使い方がわからないという方が多いのではないでしょうか。
「蓮」「托」など、普段あまり使わない漢字が使われているため、意味が推測しづらいですよね。
この記事では、一蓮托生の意味や使い方、由来、類義語などについて詳しく解説します。
☆「一蓮托生」をざっくり言うと……
読み方 | 一蓮托生(いちれんたくしょう) |
---|---|
意味 | 極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わる 何があっても運命を共にする |
由来 | 仏教の考えから生まれた |
類義語 | 一心同体 連帯責任 運命共同体 など |
対義語 | 分崩離析 同床異夢 |
英語訳 | share the same fate (運命を共にする) in the same boat (同じ状況にある) share my lot with another (運命を違いに共有する) など |
「一蓮托生」の意味
- 極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わる
- 何があっても運命を共にする
「一蓮托生」には、上記のように2つの意味があります。
現代では、2つ目の「何があっても、最後まで運命を共にする」という意味で使われることがほとんどです。
以下、それぞれの意味について詳しく解説します。
意味①極楽で同じ蓮華の上に生まれ変わる
一蓮托生の1つ目の意味は、「死後、極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わる」というものです。
この意味での一蓮托生は、仏教用語です。
「生前に徳を積んだ者たちは死後、極楽浄土のなかで、同じ蓮華に座って過ごすことができる」と説いているのです。
つまり、死んだ後も同じ場所で会うことができるということです。
ちなみに、一蓮と托生には、それぞれ次のような意味があります。
- 一蓮
ひとつの蓮華 - 托生
他のものに身を任せる
蓮華は、仏教では神聖な花とされています。
意味②何があっても運命を共にする
一蓮托生には、「何があっても、最後まで運命を共にする」という意味もあります。
この意味は、1つ目の「死後、極楽の同じ蓮華の上に生まれ変わる」という意味が転じたものです。
「死後も蓮華の上で巡り会える」は “強く結びついた運命” を表しているため、次第に「どんなことがあっても一緒の運命だ」という意味に変化していったのです。
なお、この意味での一蓮托生は、あまり良くない運命や、大変な運命を共有するときに使うことが多いです。
「一蓮托生」の表記
一蓮托生は、一蓮“託”生と書く場合があります。
「託」は常用漢字、「托」は人名漢字という分類になっているという違いがあります。
どちらを用いても問題ありませんが、「一蓮托生」と書くことの方が多いです。
ただし、国会の議事録では常用漢字が使われるため、「一蓮託生」表記が使われています。
「一蓮托生」の使い方
一蓮托生には、2つの意味があります。
- 極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わる
- 何があっても運命を共にする
現代では、2つ目の「何があっても、最後まで運命を共にする」という意味で使われることがほとんどです。
そのため、この見出しでは、2つ目の意味での一蓮托生について、使い方・例文を紹介します。
「一蓮托生」を使う場面
「何があっても、最後まで運命を共にする」という意味での一蓮托生は、次のような場面で使います。
- 力を合わせて頑張るとき
- 悪い結果があっても関係を保つことを誓うとき
- 困難や苦労を共にするとき
このように、一蓮托生は、心や絆の非常に強い結びつきを表しています。
そのため、以下のような近しい人どうしの関係を指すことが多いです。
- 婚姻関係にある者どうし
- 恋人どうし
- 親子
- 上司と部下
- 先輩と後輩
- 親分と弟子
- 監督と選手
「一蓮托生」の例文
一蓮托生は、おもに以下のような言い回しが用いられます。
例文とともに見てみましょう。
- 一蓮托生だ
例:私とあなたは一蓮托生だ。 - 一蓮托生なので
例:私は恋人と一蓮托生なので、これからどんなことがあっても2人で乗り越えていきたい。 - 一蓮托生で
例:今日、私は社長に就任しました。社員のみなさん、一蓮托生で会社を動かしていきましょう。 - 一蓮托生の関係
例:彼は常に「漫才コンビは一蓮托生の関係」と考えていたため、相方の不祥事も一緒に解決してきた。 - 一蓮托生の仲
例:彼女たちは喧嘩してばかりだが、いざというときは支え合っているので、一蓮托生の仲といえるだろう。 - 一蓮托生の間柄(あいだがら)
例:一蓮托生の間柄をもてる人と出会いたい。 - 一蓮托生の道
例:あの日を境に、僕たちは一蓮托生の道を進むことになった。 - 一蓮托生の生活
例:あの俳優は無名の頃から、信頼するマネージャーと一蓮托生の生活を送ってきた。 - 一蓮托生の覚悟
例:彼女は一蓮托生の覚悟で、親の介護に取り組んだ。 - 一蓮托生の契り(ちぎり)
※契り:約束や誓いのこと
例:私たちは結婚式で、一蓮托生の契りを結んだ。 - 夫婦は一蓮托生
※「夫婦は仲良く運命を共有するものだ」という意味
例:「夫婦は一蓮托生」というけれど、問題が起きて関係が悪化したら、無理に仲良くする必要もないだろう。
「一蓮托生」の由来
「一蓮托生」は、仏教の考えから生まれた言葉です。
「良い行いをした者たちは死後、極楽浄土のなかで、同じ蓮華に座って過ごすことができる」という仏教の考えから生まれました。
仏教は他の国でも信仰されていますが、一蓮托生は、日本仏教にしかない考え方だと言われています。
ちなみに蓮華とは、ハスの花のことです。
仏教において蓮華は、以下の理由から非常に神聖な花とされています。
- 釈迦が生まれたとき、足跡から蓮華が咲いたと言われているため
- 釈迦は、蓮華のかたちをした台座に座ると考えられているため
仏教を信じていて、なおかつ互いに愛情をもっている人々は、「死んだあとも極楽浄土で一緒に暮らそう」と誓う際に「一蓮托生」を使っていました。
「一蓮托生」の意味の変化
一蓮托生は仏教用語として生まれましたが、時代の変化とともに意味合いが変化していきました。
良い行いをした者たちは死後、極楽浄土で一緒に過ごせる
↓
江戸時代
事情があって恋人になれない者同士が、「現世では結ばれなかったが、来世は一緒になろう」という意味で使うようになる
※心中(しんじゅう)をする際によく使われた
※人形浄瑠璃(じょうるり)でもこの意味で使われるようになる
↓
その後
相手と行動や運命を共有するときに広く使うようになる
↓
現代
元々の仏教用語として使う場合もあるものの、ほとんどの場合で「何があっても、最後まで運命を共にする」の意味で使われている
このように、江戸時代を機に、仏教用語としてのニュアンスが薄れ、運命を共にすることを広く指すようになったのです。
「一蓮托生」の類義語
一蓮托生には以下のような類義語があります。
- 一心同体(いっしんどうたい)
複数の人の心と体が、強く結びついていること - 連帯責任(れんたいせきにん)
組織の誰かが問題を起こした際、皆で責任を負担すること - 運命共同体(うんめいきょうどうたい)
運命を共有する関係にある人、または組織 - 死なば諸共(もろとも)
死ぬときは一緒である - 道連れ(みちづれ)
一緒に行動する - 桃園(とうえん)の誓い
生死を共にする - 蓮(はす)の台(うてな)の半座(はんざ)を分かつ
夫婦の仲が良いこと - 同腹一心(どうふくいっしん)
同じ志をもつこと - 一致団結(いっちだんけつ)
多くの人が1つの目的のために集まること
「一蓮托生」と「一心同体」の違い
一蓮托生の類義語のなかで、意味が最も近いのは一心同体です。
どちらも、心の強い結びつきを表しているからです。
しかし、厳密には、「一蓮托生」と「一心同体」には以下のような違いがあります。
- 一蓮托生
心が強く結びついていて、運命を共にする - 一心同体
心が強く結びついている
一心同体は単に絆が深いことのみを表し、一蓮托生のように「運命を共にする」というところまでは意味しませんから、気をつけましょう。
また、一心同体を一“身”同体と書くのは誤りです。
「一蓮托生」の対義語
一蓮托生には以下のような対義語があります。
- 分崩離析(ぶんぽうりせき)
組織がばらばらになること - 同床異夢(どうしょういむ)
考え方や目的とすることが違うこと
「一蓮托生」の英語訳
一蓮托生を英語に訳すと、次のような表現になります。
- share the same fate
(運命を共にする) - in the same boat
(同じ状況にある) - share my lot with another
(運命を違いに共有する) - common destiny
(運命共同体) - share one’s lot with another
(運命を共有する) - die all together
(死なばもろとも)
このように、「一蓮托生」には様々な英語訳があります。
ここからは、一見しただけでは意味が理解しづらい “share the same fate” と “in the same boat” について、さらに詳しく解説します。
“share the same fate” について詳しく
“share the same fate” は、運命を共にするという意味を表します。
この英語表現は、大変な運命や、逃れられない運命を共有するという場面で使います。
なぜなら、 “fate” は「ネガティブな意味での運命」を指す言葉だからです。
“share the same fate” を用いた例文を見て見ましょう。
- We share the same fate.
(我々は運命を共にしている。) - Live or die, they prepared to share the same fate.
(生きるも死ぬも、彼らは運命を共にすることを誓っている。)
“in the same boat” について詳しく
“in the same boat” を直訳すると、「同じ船の中」となります。
同じ船の中にいる人々は、船が荒波に逃れたとしても、順調に航海をしたとしても、同じ状況を共有することになりますね。
そのため、“in the same boat” は、「同じ状況下にある」という意味を表すのです。
- We are now in the same boat.
(私たちは今、同じ状況にある。) - I think the United States and England are in the same boat.
(私は、アメリカとイギリスは同じ状況にあると思う。) - We have to sail in the same boat.
(私たちは同じ状況にいなければならない。)
※“sail in the same boat”
=同じボートを漕ぐ
=同じ状況にある
なお、“in the same boat” は、「お互い様」という意味で用いられることもあります。
「一蓮托生」のまとめ
以上、この記事では「一蓮托生」について解説しました。
読み方 | 一蓮托生(いちれんたくしょう) |
---|---|
意味 | 極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わる 何があっても運命を共にする |
由来 | 仏教の考えから生まれた |
類義語 | 一心同体 連帯責任 運命共同体 など |
対義語 | 分崩離析 同床異夢 |
英語訳 | share the same fate (運命を共にする) in the same boat (同じ状況にある) share my lot with another (運命を違いに共有する) など |
「何があっても運命を共にする」と思い合える存在がいれば、生きていくうえで心強いですね。
正しい意味や使い方をふまえたうえで、一蓮托生という四字熟語を使いこなしましょう。