今回ご紹介する言葉は、ことわざの「恩(おん)を仇(あだ)で返す」です。
言葉の意味や使い方・由来・類義語・対義語・英語訳について分かりやすく解説します。
☆「恩を仇で返す」をざっくり言うと……
読み方 | 恩(おん)を仇(あだ)で返す |
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意味 | 自分が受けた恩に感謝するどころか、恩人に対して害となるような仕打ちをすること |
由来 | 他人から受ける感謝すべき行為や、情けという意味のある「恩」と、仕返しや恨み、害のあるものという意味を持つ「仇」を組み合わせたことわざ |
類義語 | 飼い犬に手を嚙まれる、愛犬に手を噛まれる、鉈を貸して山を伐られるなど |
対義語 | 仇を恩で報ずる、恨みに報ゆるに徳を以てす、恩を以て恨みに報ず |
英語訳 | The axe goes to the wood where it borrowed its helve.(斧は自分に柄を与えてくれた森に行く) |
このページの目次
「恩を仇で返す」の意味をスッキリ理解!
「恩を仇で返す」の意味を詳しく
「恩を仇で返す」とは、自分が受けた恩に感謝するどころか、恩人に対して害となるような仕打ちをすることを意味することわざです。「仇」は「かたき」と読まない点には注意が必要です。
恩をくれた人に対しては、「恩返し」をするのが基本的な道理です。例えば、大切に育ててくれた両親に対して感謝の気持ちを伝えたり、何か贈り物をしたりなどです。
しかし、世の中にはその道理に反する行動をしばしば見かけます。もう少し具体的に言うと、恩をくれた人に対してその恩に報いるどころか、ひどい仕打ちをしてしまう場面は意外と珍しくないのです。
例えば、子供が親を殺害する事件があったり、親身に相談に乗ってあげていた親友に裏切られたりなどです。
以上のように、「恩を仇で返す」とは、「恩に報いる」という常識とは対極にある言葉なのです。
ただ、「恩を仇で返す」ような行動は、意図的なものと意図的ではないものに分けて考えることができます。
意図的に「恩を仇で返す」時は、恩人に対して何かしらの恨(うら)みがある場合が多いです。確かに恩はあるものの、恨みの念もあり、仕返しや裏切りなどによってひどい仕打ちを与えるのです。
しかし、中には恨みなど無いにも関わらず、意図的に恩人に対してひどい仕打ちを与える人もいます。これについては、非常識であり、失礼極まりない行動であるため、批判の対象に晒(さら)されることも多いです。
どちらにせよ、意図的に「恩を仇で返す」ことの悪意性は、意図的ではない場合と比較して高いと言えます。
意図せずに「恩を仇で返す」場面では、その行動の主体は恩人に対して悪気は一切なく、いつの間にかひどい仕打ちを与えてしまっているのです。悪意性は確かに高いとは言えません。
しかし、恩に報いるというのが常識であるにも関わらず害を与えることは、それが意図的であるかどうか問わず非常識なことです。
したがって、「恩を仇で返す」ような行為は、意図的であろうとなかろうと、非常に失礼であり避けるべきことであると言えます。
「恩を仇で返す」の使い方
- 入社時から面倒を見てくれた上司の悪口を広めるなんていう恩を仇で返す行為はいかがなものか。
- 1番お世話になった先輩の彼女に手を出してしまうという恩を仇で返すことをしてしまった。
- 「恩を仇で返すような子には育つな」が父親の口癖だった。
「恩を仇で返す」の由来
「恩を仇で返す」は、その言葉そのものに由来があると言えます。
「恩」とは、他人から受ける感謝すべき行為や、情けという意味のある言葉です。「仇」とは、仕返しや恨み、害のあるものという意味を持つ言葉です。
「恩」と「仇」という、ほぼ対極の意味がある言葉を使い、「感謝すべき行為をしてくれた人に対して害を与える」という意味を表す「恩を仇で返す」ということわざが生まれました。
「恩を仇で返す」の類義語
「恩を仇で返す」には以下のような類義語があります。
- 飼い犬に手を噛まれる:日頃可愛がったり面倒を見たりしている者からひどく裏切られたり、害を受けたりすること
- 愛犬に手を噛まれる:日頃可愛がったり面倒を見たりしている者からひどく裏切られたり、害を受けたりすること
- 鉈(なた)を貸して山を伐(き)られる:恩を仇で返されること
- 軒(のき)を貸して母屋(おもや)を取られる:一部を貸したばかりに全部を取られることのたとえ
- 煮え湯を飲まされる:信頼している人に裏切られて、ひどい仕打ちを食らうこと
- 陰(かげ)に居て枝を折る:恩を仇で返すこと
- 獅子身中(しししんちゅう)の虫:組織などの内部にいながら、その組織に害をなすもの
- 後足(あとあし)で砂をかける:恩に報いるどころか、去り際に迷惑や損害を与えたり、裏切ったりすることのたとえ
「恩を仇で返す」の対義語
「恩を仇で返す」には以下のような対義語があります。
- 仇を恩で報ずる:ひどい仕打ちを受けても、それを恨みに思わずに温かく接すること
- 怨(うら)みに報ゆるに徳を以(もっ)てす:ひどい仕打ちを受けても、仕返しをするのではなく 許しの心で温かく接するべきだということ
- 恩を以て怨みに報(ほう)ず:恨みのある者に対して復讐するのではなく、恩徳を施すような温かい心で接すること
「恩を仇で返す」の英語訳
「恩を仇で返す」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- The axe goes to the wood where it borrowed its helve.
(斧は自分に柄を貸してくれた森へ行く) - Don’t bite the hand that feeds you.
(食事を与えてくれる手を噛むな)
まとめ
以上、この記事では「恩を仇で返す」について解説しました。
読み方 | 恩(おん)を仇(あだ)で返す |
---|---|
意味 | 自分が受けた恩に感謝するどころか、恩人に対して害となるような仕打ちをすること |
由来 | 他人から受ける感謝すべき行為や、情けという意味のある「恩」と、仕返しや恨み、害のあるものという意味を持つ「仇」を組み合わせたことわざ |
類義語 | 飼い犬に手を嚙まれる、愛犬に手を噛まれる、鉈を貸して山を伐られるなど |
対義語 | 仇を恩で報ずる、恨みに報ゆるに徳を以てす、恩を以て恨みに報ず |
英語訳 | The axe goes to the wood where it borrowed its helve.(斧は自分に柄を与えてくれた森に行く) |
「恩を仇で返す」の意味や使い方など理解することはできたでしょうか。
「恩を仇で返す」ような行為は非常識かつ失礼なものです。時に、意図せずに行ってしまうこともあるかもしれません。しかし、自分自身の行動を客観視して、それが恩のある人に対して害を与えるようなものではないか考えるなどすると防げるはずです。
恩を与えてくれた人には、それに報いていきたいものですね。