今回ご紹介する言葉は、熟語の「皮肉(ひにく)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「皮肉」をざっくり言うと……
読み方 | 皮肉(ひにく) |
---|---|
意味 | 遠回しに嫌味を言うこと。また、期待とは逆の結果になること。 |
語源 | 「皮肉骨髄」という達磨大師の言葉から |
類義語 | 毒舌、風刺など |
対義語 | 世辞、激賛、会心など |
英語訳 | irony(皮肉) |
このページの目次
「皮肉」の意味をスッキリ理解!
「皮肉」の意味を詳しく
皮肉には、以下のような3つの意味があります。
- 遠回しに嫌味を言うこと
- 期待とは逆の結果になる
- 皮と肉・からだ・うわべ
それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
意味①:遠回しに嫌味を言うこと
「皮肉」の一番よく使われる意味は「遠回しに嫌味を言うこと」です。
「遠回しに嫌味を言う」とは、直接的な言葉を使わずに間接的に意地悪なことを言うことです。
つまり、肯定しているように聞こえるけれど、実は否定しているという状態です。
この場合の「皮肉」には、必ず悪意が含まれます。
意味②:期待とは逆の結果になること
「期待とは逆の結果になること」という意味もよく使われます。
「期待とは逆の結果になる」とは、想定外の結果が生じるということです。
この場合、悪意は含まれません。
また、生じた結果により、得をすることも損をすることもあります。
意味③:皮と肉・からだ・うわべ
「皮肉」には「皮と肉」「からだ」「うわべ」という意味もあります。
これらの意味はあまり使われません。
「皮と肉」は字の通り、人間の皮と肉のことです。この意味から転じて「からだ」という使い方も生まれました。
さらに、「皮と肉」が骨や髄(ずい)などの中心部にまで達していないことから、「うわべ」という意味でも使われるようになりました。
「皮肉」の例
「皮肉」の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- あんなシュートを外すなんてなかなかできることじゃない、才能あるよ!
- 道に迷ったおかげで足の筋肉がつきそうだよ、ありがとう。
- 君が遅刻してくれたおかげでゆっくり考え事をする時間ができたよ。
- 選択式のテストで0点取れるなんてすごいね!
- これは掃除のしがいがある部屋だね。
どの例も相手を遠回りに非難していることがわかります。
皮肉を作るポイントは、あえて思っていることと逆の言葉を使うことです。
「皮肉」の使い方
「皮肉」は以下のような言い回しで使われることが多いです。
- 皮肉な〇〇
- 皮肉を言う
- 皮肉が効く
- 皮肉にも
それぞれの言い回しについて、例文を交えて詳しく見ていきましょう。
「皮肉な〇〇」の使い方
「皮肉」は「皮肉な〇〇」として、形容詞として使うことができます。
「皮肉な〇〇」とした場合には、「遠回しに嫌味を言うこと」という意味になるのが普通です。
しかし、「皮肉な結果」など、「期待とは逆の結果になること」という意味になることもあります。
- 彼はよく皮肉な言葉をかけてくるので苦手だ。
- 深夜までお酒を飲んで帰宅したら、妻が皮肉な笑みを浮かべて待っていた。
- 私たちのチームが勝ったことで、ライバルチームの優勝が確定した。これは皮肉な結果だ。
「皮肉を言う」の使い方
「皮肉を言う」は「遠回しに嫌味を言う」という意味になります。
「皮肉が効く」の使い方
「皮肉が効く」とは、「遠回しな嫌味が相手にダメージを与える」という意味です。
「皮肉」により、言われた相手が傷ついたり、イライラしたりした時に使えます。
「皮肉にも」の使い方
「皮肉にも」が使われていた場合は、「期待とは逆の結果になること」という意味になります。
「皮肉」の語源
「皮肉」は、仏教用語の「皮肉骨髄(ひにくこつずい)」に由来します。
6世紀頃の中国に、達磨大師(だるまだいし)という僧がいました。
達磨大師は禅宗の祖と言われています。
達磨大師が4人の弟子に禅の教えに関する質問をした際、弟子達はそれぞれ違う答えを言いました。
すると達磨大師は、「私の皮を得た。」「私の肉を得た。」「私の骨を得た。」「私の髄を得た。」とそれぞれの弟子を評価をしたのです。
そして達磨大師は、全員違う答えにも関わらず全員を合格にしました。
このように、「1つの事に対して様々な捉え方がある」と全員を評価したというのが、「皮肉骨髄」のストーリーなのです。
しかし、皮と肉が骨と髄に比べて表面に近いことから、本来とは違う解釈が生まれました。
「皮と肉を得たと言われた2人の弟子は、実は不出来だと言われている」と考えられるようになったのです。
褒めながらも「実は不出来だ」という評価をしたという解釈から、「遠回しに嫌味を言う」という意味が生まれたのです。
「皮肉」の類義語
皮肉には以下のような類義語があります。
「皮肉」と「嫌味」の違い
「皮肉」と「嫌味」には以下のような違いがあります。
- 皮肉:遠回しに悪口を言うこと
- 嫌味:直接的に悪口を言うこと
たとえば、待ち合わせをしていた相手が遅れてきた時に、「遅かったね」と言うのが「嫌味」で、「早かったね」と言うのが「皮肉」です。
「皮肉」は遠回しに悪口を言うため、相手の意図に後になって気づくこともあります。
一方、「嫌味」は直接的な表現で悪口を言うので、その場で気づくことがほとんどです。
「皮肉」の対義語
皮肉には以下のような対義語があります。
- 世辞:必要以上に相手を褒めること
- 激賛:非常に褒めること
- 会心:期待通りの結果に満足すること
「世辞」と「激賛」は、「遠回しに嫌味を言う」という意味での「皮肉」の対義語です。どの表現も「非常に褒める」という意味を持ちます。
「世辞」は「人の機嫌を取るために褒める」という意味がある一方、「激賛」は純粋に「非常に褒める」という意味です。
ニュアンスが少し違うため、注意しましょう。
「会心」は、「期待とは逆の結果になる」という意味での「皮肉」の対義語です。
「皮肉」の英語訳
皮肉を英語に訳すと、次のような表現になります。
- ironic
(皮肉な) - sarcastic
(嫌味な) - cynical
(あざける)
“ironic” と “sarcastic” はどちらも「皮肉な」という意味ですが、違いがあります。
「期待とは逆の結果になる」という意味での「皮肉」を英訳する場合に、 “ironic” を使います。
一方、辛辣な言葉で「嫌味を言う」という意味を英訳すると “sarcastic” になります。
また、 “cynical” は、「態度や表現が人を見下すようなさま」という意味で使われます。
まとめ
以上、この記事では「皮肉」について解説しました。
読み方 | 皮肉(ひにく) |
---|---|
意味 | 遠回しに嫌味を言うこと。また、期待とは逆の結果になること。 |
語源 | 「皮肉骨髄」という達磨大師の言葉から |
類義語 | 毒舌、風刺など |
対義語 | 世辞、激賛、会心など |
英語訳 | irony(皮肉) |
「皮肉」は日常的によく使われる熟語です。
いくつかある意味の違いを意識して使うと、表現がより豊かになりますね。
ぜひ覚えてみましょう。