今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「天衣無縫(てんいむほう)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「天衣無縫」をざっくり言うと……
読み方 | 天衣無縫(てんいむほう) |
---|---|
意味 | 無邪気で飾り気が無く、ありのままの姿であること。また、芸術などにおいて、自然の状態で完成された美しさを持っていること。 |
由来 | 中国の唐代の小説『霊怪録』の話から。 |
類義語 | 天真爛漫、純真無垢、縦横無碍など |
対義語 | 自縄自縛、石部金吉、大言壮語など |
英語訳 | flawless(完璧な),appealingly artless(魅力的なほど純粋な)など |
このページの目次
「天衣無縫」の意味をスッキリ理解!
「天衣無縫」の意味を詳しく
「天衣無縫」という四字熟語は、「飾り気が無く無邪気である様子」「詩や文章などの芸術において、技巧(ぎこう)を凝らしておらず、自然の状態で完成された美しさを持っている様子」という2つの意味を持った四字熟語です。
自分を大きく見せたりせずに、無邪気でさっぱりとしている人は、老若男女問わず良い印象を持たれますよね。人からの賞賛を求めて自分を偽るより、自然な姿で人と付き合うことができることは人間関係において何よりも大切なことです。
「天衣無縫」の使い方
その意味から「天衣無縫」は褒め言葉として用いられることが多いです。使い方としては以下のようなものがあります。
- 彼女の性格はまさしく天衣無縫で、多くの人から愛されている。
- あの教授は非常に賢く優秀な人であり、また天衣無縫な一面も持ち合わせている。
- 彼の作り出す作品は天衣無縫で、他の誰にも真似することはできない。
このように、「天衣無縫」は人の性格や技術を賞賛する場合に使われることが多く、逆にマイナスの意味を持つことはほとんどありません。
①と②の例文は、人の性格や基質に対して「無邪気で飾り気がない様子」を表しています。また、③の例文では「技巧を凝らすことなく、自然に完成された美しさを持っている」という意味で使われています。両方の意味をしっかりと理解しておきましょう。
「天衣無縫」の由来
「天衣無縫」は中国の唐の時代の小説である『霊怪録(れいかいろく)』にその由来を持ちます。
昔、あるところに郭翰(かくかん)という青年がいました。郭翰が庭にいる時、不意に芳しい(かんばしい)香りがしたかと思うと、空から天女が舞い降りてきます。彼は天女と親交を深めていきますが、ある時何気なく天女の着ている美しい服をみると、全く縫い目がなかったのです。
彼は不思議に思い、天女になぜ服に全く縫い目がないのか尋ねると、天女は「天上の衣服は針で縫う必要はありません」と答えました。その時彼は「本当に美しいものには、人工の跡というものが無いのだ」と悟ったといいます。
このエピソードから、「天衣無縫」という四字熟語は「飾り気が無く、ありのままの状態であること」「手を加えずとも、自然な状態で完成された美しさを持っていること」といった意味で用いられるようになったのです。
「天衣」は天人や天女が羽織る衣のことで、「無縫」は縫い目が無いことをそれぞれ表しています。
「天衣無縫」の類義語
天衣無縫には以下のような類義語があります。
- 天真爛漫(てんしんらんまん):純粋かつ無邪気で、物事に拘ることがないこと。
- 純真無垢(じゅんしんむく):心にやましい部分がなく、綺麗であること。
- 縦横無碍(じゅうおうむげ):縛られることなく、自由自在であること。
- 自由自在(じゆうじざい):自分の思い通りにできる様子。
「天衣無縫」の類義語として、「心が綺麗で純粋である様子」を表すものと、「縛られることなく自由に振る舞えること」を表すものの2種類が挙げられます。共通しているのは「他からの影響を受けず、ありのままでいること」ということです。
やるべきことがたくさんある現代社会でも、こうありたいものですね。
「天衣無縫」の対義語
天衣無縫には以下のような対義語があります。
- 自縄自縛(じじょうじばく):自らの言動や心がけが原因で、身動きが取れなくなること。
- 石部金吉(いしべきんきち):考えが凝り固まっており、融通が利かない人のこと。
- 大言壮語(たいげんそうご):小さな物事を大げさに語ること。
どれも「天衣無縫」とはかけ離れた意味を持つ言葉ですね。1つのことに固執したり、誇張したりすることはあまり褒められたことではありません。そうならないように気をつけましょう。
「天衣無縫」の英語訳
天衣無縫を英語に訳すと、次のような表現になります。
- flawless
(完璧な) - appealingly artless
(魅力的なほど純粋な)
“flawless” は “perfect” と言い換えることもできます。「飾り気が無く無邪気」という意味で使うのか、「作品として完成されている」という意味で使うのかによって表現が異なります。
まとめ
以上、この記事では「天衣無縫」について解説しました。
読み方 | 天衣無縫(てんいむほう) |
---|---|
意味 | 無邪気で飾り気が無く、ありのままの姿であること。また、芸術などにおいて、自然の状態で完成された美しさを持っていること。 |
由来 | 中国の唐代の小説『霊怪録』の話から。 |
類義語 | 天真爛漫、純真無垢、縦横無碍など |
対義語 | 自縄自縛、石部金吉、大言壮語など |
英語訳 | flawless(完璧な),appealingly artless(魅力的なほど純粋な)など |
ありのままの自分で人と付き合うことができる「天衣無縫」な人は良好な人間関係を築くことができます。人と人との繋がりが希薄になりつつある現代だからこそ、自然な姿で人と繋がることができれば良いですね。