今回ご紹介する言葉は、故事成語の「比翼連理」です。
この言葉は日常会話でもたまに使われることがあります。
意味は知らなくても聞いたこと自体はある、という人も多いのではないでしょうか。
そこで、「比翼連理」の意味、由来、例文、類義語、英訳についてわかりやすく解説します。
☆「比翼連理」をざっくり言うと……
読み方 | 比翼連理(ひよくれんり) |
---|---|
意味 | 男女の情愛が深いことのたとえ |
由来 | 「長恨歌」のフレーズ |
類義語 | お前百までわしゃ九十九まで、偕老同穴、水魚の交わり、など |
英語訳 | marital vows |
「比翼連理」の意味をスッキリ理解!
「比翼連理」の意味を詳しく
「比翼連理」とは、男女の情愛が深いことのたとえです。
ちなみに、「比翼」とは比翼の鳥のことで、オスとメスそれぞれ目と翼が1つづつの想像上の鳥です。
比翼の鳥は地上ではそれぞれで歩くことができますが、空を飛ぶ時には助け合い、一体となって飛ばなければなりません。
また、「連理」とは連理の枝という想像上の植物のことです。
連理の枝の根元は別々の2本の木ですが、幹や枝は途中で寄り添うようにくっついています。
そして、木目まで相通じていると言われています。
ちなみに、「連理比翼」と表記されることもあります。
そして、「飛翼連理」と表記するのは間違いなので注意が必要です。
また、相思相愛の男女が心中などで亡くなった後、それを弔うために築く塚のことを「比翼塚」と言います。
これも「比翼連理」という言葉がもとになっています。
「比翼連理」の由来
「比翼連理」の出典は白居易(はくきょい)の「長恨歌(ちょうごんか)」という詩です。
この詩の中に「天に在りては比翼の鳥となり、地に在りては連理の枝とならん」という言葉が出てくるのです。
そして、「比翼の鳥」と「連理の枝」についても、それぞれ由来があります。
次はそれぞれについて見ていきましょう。
長恨歌とは、白居易によって作られた長編の漢詩です。
唐代の玄宗(げんそう)と世界三大美女のひとりとも呼ばれる楊貴妃(ようきひ)との間の悲恋を描いています。
平安時代以降の日本文学にも大きな影響を与えました。
「比翼の鳥」の由来
「比翼の鳥」は中国の伝説上の生き物で、明確な由来があるわけではありません。
そして、書物の中では『山海経(さんがいきょう)』という中国の地理書や、『爾雅(じが)』という中国最古の語釈辞典などに登場しています。
「連理の枝」の由来
「連理の枝」の出典は『捜神記(そうしんき)』です。
この本は東晋(317年~420年)の時代に書かれた本なのですが、この本の説話の中に、「連理の枝」が登場するのです。
詳しく見ていきましょう。
戦国時代、宋の国の大臣である韓凭(かんひょう)と何氏(かし)は仲のいい夫婦でした。
しかし、酒と女におぼれて非道だった宋の王様の康王(こうおう)は何氏の美貌が気に入り、手に入れたいと思いました。
そこで、彼は韓凭を監禁し、何氏を手に入れました。
愛する夫が監禁され、会うことができない状況に絶望した何氏は、「雨が降り続き、川の水かさが深くなっています。出かける時は気を付けてください」という手紙を夫に書きました。
この手紙は康王によって握りつぶされ、韓凭に届くことはありませんでしたが、この詩は何氏の絶命詩でした。
「出かける時は気を付けてください」という部分は自殺の覚悟を示していたのです。
そして、何氏は康王に連れられて出かけた時、高台から飛び降りて自殺してしまいます。
その後、何氏の自殺を聞きつけた韓凭も、後を追って自害します。
このことに康王は激怒し、2人を同じ墓に入れず、わざとすぐそばに別々に埋葬しました。
これは、お互いがすぐそばにいるのにもかかわらず、いつまでも一緒になれない辛さを味わわせるためです。
しかし、数日後には2つの墓から木が生え、枝と葉っぱが抱きあうように絡み合い、根もつながって絡みつきました。
そして、その木の上では、つがいの鳥がなんとも物悲しい声でさえずっていたのです。
これが、「連理の枝」の由来です。
「比翼連理」の例文
- 彼とその妻は比翼連理の仲だ。
- あの夫婦は常に一緒にいる。比翼連理の仲なのだろう。
- 比翼連理の仲になれる妻が欲しい。
このように、「比翼連理」は「比翼連理の仲」という表現で使われることが多いです。
「比翼連理」の類義語
「比翼連理」には以下のような類義語があります。
- お前百までわしゃ九十九まで
- 水魚の交わり
- 偕老同穴(かいろうどうけつ)
- 琴瑟相和(きんしつそうわ)
- 双宿双飛(そうしゅくそうひ)
「比翼連理」の英語訳
「比翼連理」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- marital vows
(比翼連理)
まとめ
以上、この記事では「比翼連理」について解説しました。
読み方 | 比翼連理(ひよくれんり) |
---|---|
意味 | 男女の情愛が深いことのたとえ |
由来 | 「長恨歌」のフレーズ |
類義語 | お前百までわしゃ九十九まで、偕老同穴、水魚の交わり、など |
英語訳 | marital vows |
「比翼連理」の出典は悲しい物語ですが、誉める時に使われる言葉だったんですね。
もし生涯を共にしたいと思うパートナーが見つかったら、「比翼連理」になりたいものです。