全身全霊は「その人の持っているすべて」という意味です。
「全身全霊で頑張ります!」などの言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
しかし、全身全霊の「霊」がどんな意味か知っていますか?
このように、細かい知識までは知らない人が多いと思います。
そこで、この記事では全身全霊の意味から使い方まで詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
☆「全身全霊」をざっくり言うと……
読み方 | 全身全霊(ぜんしんぜんれい) |
---|---|
意味 | その人の持っているすべて |
語源 | 日本で生まれた言葉 |
類義語 | 全力投球 全身全力 全霊全力 など |
対義語 | 手抜き 手加減 いい加減 など |
英語訳 | complete devotion(全身全霊) body and soul(身体と魂) devote oneself to ~(~に専念する) など |
「全身全霊」の意味
その人の持っているすべて
全身全霊の「全」「身」と「霊」はそれぞれ以下のような意味を表します。
- 全:すべて
- 身:人の肉体
※もともとは「身ごもる」という意味だったのが派生して「肉体」という意味を持つようになった - 霊:精神・心
つまり、全身全霊は「全ての肉体と全ての心」という意味から、「その人の持っている全て」という意味になったのです。
「全身全霊」の使い方
全身全霊は何かに対して一生懸命打ち込む時に用いられます。
具体的には、全身全霊を使った具体的な言い回しと、その言い回しを使った例文は以下のとおりです。
- 全身全霊をかける
例:全身全霊をかけて新しい仕事に取り組む。 - 全身全霊をささげる
例:彼は高校最後の野球の試合に全身全霊をささげた。 - 全身全霊を打ち込む
例:全身全霊を打ち込んだこの作品は、自分史上最高傑作となった。 - 全身全霊を傾ける
例:医者になるという夢を持ち、全身全霊を傾けて勉強してきた。 - 全身全霊を注ぐ
例:全身全霊を注いで努力を続けた結果、営業成績1位になることができた。 - 全身全霊で
例:「この仕事に全身全霊で取り組む決意です」 - 全身全霊をもって
例:経営者として、新規事業に全身全霊をもって注力する。
「全身全霊」の語源
一般的に、四字熟語は中国から伝わったものが多いです。
しかし全身全霊は、詳しい語源は明らかでないものの、日本で生まれた言葉だとされています。
確認できる中で、全身全霊という言葉が最初に使われたのは、1919年の有島武郎(ありしまたけお)による小説『或る女』です。
『或る女』には以下のような文章がありました。
木部の全身全霊を爪の先き想ひの果てまで自分のものにしなければ
出典:有島武郎『或る女』
「全身全霊」の類義語
全身全霊には以下のような類義語があります。
- 全力投球(ぜんりょくとうきゅう)
すべての力を尽くして物事を行うこと - 全身全力(ぜんしんぜんりょく)
すべての力を出すこと - 全霊全力(ぜんれいぜんりょく)
心の中をあることでいっぱいにしてすべての力を注ぐこと - 粉骨砕身(ふんこつさいしん)
力の限りを尽くすこと - 一心不乱(いっしんふらん)
ひとつのことに集中して他のことに心を奪われないこと - 心血(しんけつ)を注ぐ
全力を尽くして取り組む - 全力(ぜんりょく)
出せる限りの力 - 精力(せいりょく / せいりき)
物事に力を尽くすこと - 渾身(こんしん)
からだ全体のこと - 必死(ひっし)
死にものぐるいで全力を出すこと - 全心全力(ぜんしんぜんりょく)
体力と気力のすべてのこと
「全力投球」の意味:すべての力を尽くして物事を行うこと
全力投球とは、「すべての力を尽くして物事を行うこと」という意味です。
野球で投手が全力で球を投げることをたとえて、「物事に全力であたる」という意味で使われるようになりました。
「全身全力」の意味:すべての力を出すこと
全身全力は「すべての力を出すこと」という意味です。
しかし、用例がほとんどなく、全身全霊と間違えて使われている可能性がある言葉です。
「全霊全力」の意味:心の中をあることでいっぱいにしてすべての力を注ぐこと
全霊全力は「心の中をあることでいっぱいにして、すべての力を注ぐこと」という意味です。
全身全霊とほぼ同じ意味で使われます。
「粉骨砕身」の意味:力の限りを尽くすこと
粉骨砕身は「力の限りを尽くすこと」という意味です。
「骨を粉にして身を砕く」ほど自分の力を出し尽くすというニュアンスになります。
「一心不乱」の意味:ひとつのことに集中して他のことに心を奪われないこと
一心不乱は「ひとつのことに集中して他のことに心を奪われないこと」という意味です。
全身全霊とほぼ同じ意味ですが、より「ひとつのことに集中する」というニュアンスが強い言葉になります。
「心血を注ぐ」の意味:全力を尽くして取り組む
「心血を注ぐ」は「全力を尽くして取り組む」という意味です。
「心や血を注ぐかのようにすべてを尽くす」という意味になります。
「全力」の意味:出せる限りの力
全力は「出せる限りの力」という意味です。
「自分が持っている100%の力」というニュアンスになります。
「精力」の意味:物事に力を尽くすこと
精力は「物事に力を尽くすこと」という意味です。
漢字からもわかるとおり、「精神的な力を出し切る」というニュアンスが強い言葉です。
「渾身」の意味:からだ全体のこと
渾身とはからだ全体のことです。
「渾身の力をふりしぼって」などの表現で、「全力を出す」という意味になります。
「必死」の意味:死にものぐるいで全力を出すこと
必死は「死にものぐるいで全力を出すこと」という意味です。
「必ず死ぬ覚悟」という強い意味を表せます。
「全心全力」の意味:体力と気力のすべてのこと
全心全力は体力と気力のすべてのことです。
全身全霊とほぼまったく同じ意味を表します。
「全身全霊」の対義語
全身全霊の対義語には以下のようなものがあります。
- 手抜き
しなければならない手続きを省くこと - 手加減
相手の状態に応じて扱いを甘くすること - いい加減
仕事を最後までやり遂げずに途中で投げ出すこと - 中途半端(ちゅうとはんぱ)
物事が未完成で不完全なこと - 怠慢(たいまん)
怠けてやるべきことを行わないこと - 手心(てごころ)を加える
相手の事情に合わせて手加減すること - サボる
仕事や授業などをなまける - 出し惜しみ
金品やモノを惜しんでなかなか出さないこと
どの対義語も「自分が持っている100%の力を出していない」というニュアンスになります。
「手抜き」の意味:しなければならない手続きを省くこと
「手抜き」は「しなければならない手続きを省くこと」という意味です。
「手抜き工事」などすべきことをしなかったばかりに何らかの問題が起こっている場面で用いられることが多いです。
「手加減」の意味:相手の状態に応じて扱いを甘くすること
手加減は「相手の状態に応じて扱いを甘くすること」という意味です。
たとえば、大人が小さい子供の遊びの相手をする時に全力を出さないことを言います。
「相手のことを考えて全力を出さない」というポジティブな意味合いで用いられることが多いです。
また、手加減には「手に持った感じで重さなどを測ること」という意味もあります。
「いい加減」の意味:仕事を最後までやり遂げずに途中で投げ出すこと
いい加減は「仕事を最後までやり遂げず、途中で投げ出すこと」という意味です。
「いい加減やめてほしい」など「相当な程度に達しているのでそろそろ終わってほしいこと」という意味で用いられることもあります。
また、「いい加減の湯」のように「ちょうどよい程度」という意味でも用いられます。
「中途半端」の意味:物事が未完成で不完全なこと
中途半端は「物事が未完成で不完全なこと」という意味です。
ほかの対義語と違って、ある物事が完成していない様子を表します。
「怠慢」の意味:怠けてやるべきことを行わないこと
怠慢は「怠けてやるべきことを行わないこと」という意味です。
「出来て当たり前のことをしない」というニュアンスがあります。
「手心を加える」の意味:相手の事情に合わせて手加減すること
「手心を加える」は「相手の事情に合わせて手加減すること」という意味です。
「相手に配慮して全力を出さない・甘い処置をする」というポジティブなニュアンスで用いられます。
「サボる」の意味:仕事や授業などをなまける
「サボる」は「仕事や授業などをなまける」という意味です。
労働者が雇用者に抗議する手段のひとつである、サボタージュを略した表現になっています。
通常、仕事や授業以外をなまける時には用いられません。
「出し惜しみ」の意味:金品やモノを惜しんでなかなか出さないこと
「出し惜しみ」は「金品やモノを惜しんでなかなか出さないこと」という意味です。
これが派生して「実力を出さない」というニュアンスで用いられることもあります。
「全身全霊」の英語訳
全身全霊を英語に訳すと、次のような表現になります。
- complete devotion
(全身全霊) - body and soul
(身体と魂) - devote oneself to ~
(~に専念する) - complete devotion
(完全な没頭) - do one’s level best
(全力を尽くす) - heart and soul
(熱心に)
“complete devotion” は、直訳すると「完全な献身」という意味です。
これは「身と心のすべてをかけて尽くす」という意味を持つ全身全霊の意味と一致します。
そのため、 “complete devotion” は「全身全霊」の英語訳として頻繁に利用されます。
「全身全霊」のまとめ
以上、この記事では全身全霊について解説しました。
読み方 | 全身全霊(ぜんしんぜんれい) |
---|---|
意味 | その人の持っているすべて |
語源 | 日本で生まれた言葉 |
類義語 | 全力投球 全身全力 全霊全力 など |
対義語 | 手抜き 手加減 いい加減 など |
英語訳 | complete devotion(全身全霊) body and soul(身体と魂) devote oneself to ~(~に専念する) など |
「ある人の身体と心のすべて」をかけることは、簡単に成せるものではなく、大きな力を要します。
しかし、それほど大きなパワーがあるからこそ達成できることもあるはずです。
全身全霊をかけて取り組めるものがあるのは素敵なことですね。