水天一碧とは「海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること」という意味です。
水天一碧は、日常会話ではほとんど使わないため、どんな意味なのかわかりにくいですよね。
「自然を表す四字熟語はたくさんあって、覚えるのが大変」と思っている人もいるかもしれませんね。
この記事では、水天一碧の意味や使い方に加えて、自然の景色から生まれた語についても解説します。
☆「水天一碧」をざっくり言うと……
読み方 | 水天一碧(すいてんいっぺき) |
---|---|
意味 | 海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること |
語源 | 王勃が書いた『滕王閣序』 |
類義語 | 秋天一碧 水天一色 水天彷彿 など |
英語訳 | unity of the sky and the sea(空と海の統一) what the sky and the sea merge(空と海がとけ合っていること) |
自然の景色から生まれた語 | 白砂青松 日月星辰 行雲流水 など |
このページの目次
「水天一碧」の意味
海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること
水天一碧は、「晴れた日などに、水平線が見えなくなって、海と空がひと続きに見えること」という意味です。
水平線とは、空と海の境として見える平らな線のことです。
以下の画像のように、水平線が見えなくなるほど、海と空の青色が綺麗にとけ合っていることを表します。
ここからは、水天と一碧の意味をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
「水天」の意味
- 水(海)と天(空)のこと
- 海に映る空のこと
- (仏教用語で)水をつかさどる神様。西の守護神でもある
水天一碧では、①の意味で使われています。
「一碧」の意味
海や空が青色になること
一碧は、水面(すいめん)や、空の色が青色一色になることを表します。
ちなみに、碧という漢字は以下のような意味があります。
- 深い青色。青緑色
- 青くて美しい石
碧がつく語には以下のようなものがあります。
- 紺碧(こんぺき)
やや黒っぽい藍色 - 碧眼(へきがん)
青色の目。西洋人 - 碧落(へきらく)
青空。遠い場所
「水天一碧」の使い方
水天一碧は、以下のような言い回しで使います。
- 水天一碧の〇〇
- 水天一碧である〇〇
〇〇には名詞が入ります。
例文を見てみましょう。
- 沖縄の海は、水天一碧の風景だった。
- 水天一碧の代表といえば、ボリビアにあるウユニ塩湖だ。
- 水天一碧である景色は、私の心を安らかにした。
「水天一碧」の使い方の注意点
水天一碧の間違った使い方には以下のようなものがあります。
- 人やものに対して使わない
- 動詞のように使わない
注意点①人やものに対して使わない
水天一碧は、景色を表す言葉です。
そのため、人やものを例える時に水天一碧を使うことは誤用です。
注意点②動詞のように使わない
水天一碧は、景色の”状態”を指す言葉です。
そのため、「水天一碧する」という言い回しは誤用です。
「水天一碧」の語源
水天一碧の語源は、中国の唐代初期の詩人である王勃(おうぼつ)が書いた文章『滕王閣序(とうおうかくのじょ)』にあります。
滕王閣(とうおうかく)は、中国に実在する高く立派な建物です。
この文章の中に、以下のような一文があります。
落霞与孤鶩斉飛、秋水共長天一色
書き下し文:夕焼けと鴨(かも)一羽共に来たり、秋水は長天と共に一色なり
意味:秋の空のもとで、川と空が一つになっている
秋の空が空に、川が海に変わり、水天一碧が「海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること」を表すようになりました。
「水天一碧」の類義語
水天一碧には以下のような類義語があります。
- 水天彷彿(すいてんほうふつ)
海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること - 煙波縹緲(えんぱひょうびょう)
水面がもやなどでぼやけて、海と空の境目がわからなくなっていること - 水光接天(すいこうせってん)
①川の水面に映る月の光が、遥か遠くで空と接していること
②感動する景色 - 上下天光(しょうかてんこう)
空と水がひとつになって、明るく輝くこと - 一碧万頃(いっぺきばんけい)
海などの水面が、遥か彼方まで青々と広がっていること - 水天一色(すいてんいっしき/すいてんいっしょく)
海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること - 秋天一碧(しゅうてんいっぺき)
雲ひとつない、すっきりと晴れた秋の空
「水天彷彿」を詳しく
水天彷彿は、「海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること」という意味です。
以下の2語から成り立っています。
- 水天
水(海)と天(空)のこと - 彷彿
ぼんやり見えること
※髣髴とも書く
水天彷彿の語源は、江戸時代後期の詩人である頼山陽(らいさんよう)が書いた詩『泊天草洋(あまくさなだにはくす)』です。
「煙波縹緲」を詳しく
煙波縹緲は、「水面がもやなどでぼやけて、海と空の境目がわからなくなっていること」という意味です。
以下の2語から成り立っています。
- 煙波
①もやの立ちこめた水面
②水面がけぶるように波立っていること - 縹緲
かすかで、はっきりしないこと
煙波縹緲は、以下のように表記することもあります。
- “烟” 波縹緲
- 煙波縹 “渺”
- 煙波縹 “眇”
「水光接天」を詳しく
水光接天は、「川の水面に映る月の光が、遥か遠くで空と接していること」「感動する景色」という意味です。
水光は、「水面に太陽や月の光が反射してきらきらと輝く光」を表します。
水光接天の語源は、中国の文章家である蘇軾(そしょく)が書いた文章『前赤壁賦(ぜんせきへきのふ)』にあります。
「上下天光」を詳しく
上下天光は、「空と水がひとつになって、明るく輝くこと」という意味です。
以下の2語から成り立っています。
- 上下
空と地のこと。空と海のこと - 天光
空一面に輝く太陽の光
上下天光の語源は、中国の文人である范仲淹(はん ちゅうえん)が書いた散文『岳陽楼記(がくようろうのき)』にあります。
「一碧万頃」を詳しく
一碧万頃は、「海などの水面が、遥か彼方まで青々と広がっていること」という意味です。
以下の2語から成り立っています。
- 一碧
海や空が青色になること - 万頃
とても広いこと
※「頃」は古代中国における面積の単位
一碧万頃の語源は、中国の文人である范仲淹(はん ちゅうえん)が書いた散文『岳陽楼記(がくようろうのき)』にあります。
「水天一碧」の英語訳
水天一碧を英語に訳すと、次のような表現になります。
- unity of the sky and the sea
(空と海の統一) - what the sky and the sea merge
(空と海がとけ合っていること)
“what the sky and the sea merge” の “merge” は、「併合する」「とけ合わせる」という意味です。
関連:自然の景色から生まれた語
水天一碧と同じく、自然の景色から生まれた語はたくさんあります。
以下の2パターンに分けて紹介します。
- 自然の景色を表すもの
- 人の性格を表すもの
それぞれ見ていきましょう。
関連語①自然の景色を表すもの
- 白砂青松(はくしゃせいしょう)
白い砂浜に青い松が生えている海岸の美しい風景 - 日月星辰(じつげつせいしん)
①太陽や月、星などの天体が交わるところ
②空のこと - 万里鵬翼(ばんりほうよく)
はるか遠くまで広がる広大な天空 - 波の花(なみのはな)
①塩
②波が白く泡立ったり砕けたりするさま - 夕凪(ゆうなぎ)
夕方、波風が立たないこと
関連語②人の性格を表すもの
- 行雲流水(こううんりゅうすい)
①物事にこだわらず、自然に成り行きをまかせること
②自由気ままに行動すること - 天空海闊(てんくうかいかつ)
広々とした空や海のように、おおらかな性格 - 海闊天空(かいかつてんくう)
広々とした空や海のように、おおらかな性格
「水天一碧」のまとめ
以上、この記事では水天一碧について解説しました。
読み方 | 水天一碧(すいてんいっぺき) |
---|---|
意味 | 海と空の青色が美しくとけ合って、境目がわからなくなっていること |
語源 | 王勃が書いた『滕王閣序』 |
類義語 | 秋天一碧 水天一色 水天彷彿 など |
英語訳 | unity of the sky and the sea(空と海の統一) what the sky and the sea merge(空と海がとけ合っていること) |
自然の景色から生まれた語 | 白砂青松 日月星辰 行雲流水 など |
水天一碧は、美しい景色を例える時に使います。
海と空がひと続きになっている景色を見た時には、水天一碧を思い出してみましょう。