今回ご紹介する言葉は、故事成語の「獅子身中の虫(しししんちゅうのむし)」です。
「獅子身中の虫」の意味、例文、由来、類義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「獅子身中の虫」をざっくり言うと……
読み方 | (しししんちゅうのむし) |
---|---|
意味 | 内部にいながら害をもたらす人や恩を仇で返す人のたとえ |
由来 | 『梵網経』の「獅子身中の虫、自ら獅子の肉を食らい、余外の虫に非ざるが如し。是くの如く仏子自ら仏法を破り、外道・天魔の能く破壊するに非ず」という言葉から |
類義語 | 恩を仇で返す、飼い犬に手を噛まれる、庇を貸して母屋を取られる、など |
英語訳 | A thorn in one’s flesh. (体の中のとげ) |
このページの目次
「獅子身中の虫」の意味をスッキリ理解!
「獅子身中の虫」の意味を詳しく
「獅子身中の虫」とは、内部にいながら害をもたらす人や恩を仇で返す人のたとえです。
獅子の体内に寄生した虫が獅子を殺してしまうことがあることから、この言葉が生まれました。
そして、「獅子身中の虫」はもともと、仏教徒でありながら仏教に害をなす人々のことを指していました。
ちなみに、「獅子」とはライオンのことを表しています。
ちなみに、「獅子心中の虫」と表記するのは間違いなので注意が必要です。
そして、「獅子身中の虫獅子を食らう」と続けて言う場合もあります。
「獅子身中の虫」の例文
- 彼は獅子身中の虫なので、一刻もはやく会社から追い出したほうがいい。
- 獅子身中の虫には気を付けないと、致命的な事態になりかねない。
- 獅子身中の虫を見つける体制を整えるのは、会社にとって最も重要なことのひとつである。
「獅子身中の虫」の由来
「獅子身中の虫」の出典は『梵網経(ぼんもうきょう)』という仏典です。
この仏典の中に「獅子身中の虫、自ら獅子の肉を食らい、余外の虫に非(あら)ざるが如(ごと)し。是(か)くの如(ごと)く仏子自ら仏法を破り、外道(げどう)・天魔(てんま)の能(よ)く破壊するに非(あら)ず」という言葉が出てきます。
この言葉は「獅子は自身の体内に巣食う害虫に食われて死ぬのであり、外からの虫に食われるのではない。これと同じように悪い仏教徒が自ら仏法を破壊するのであり、外道や天魔が仏法を破壊するのではない」という意味を表しています。
これが「獅子身中の虫」の由来になっています。
「獅子身中の虫」の類義語
「獅子身中の虫」には以下のような類義語があります。
- 恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
- 飼い犬に手を噛(か)まれる
- 陰に居て枝を折る
- 片屋貸して母屋取られる(かたやかしておもやとられる)
- 鉈を貸して山を伐られる(なたをかしてやまをきられる)
- 軒を貸して母屋を取られる(のきをかしておもやとられる)
- 庇を貸して母屋を取られる(ひさしをかしておもやとられる)
- 煮え湯を飲まされる
- トロイの木馬
「獅子身中の虫」の英語訳
「獅子身中の虫」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- A thorn in one’s flesh.
(体の中のとげ) - Better an open enemy than a false friend.
(偽りの友よりの明らかな敵のほうがよい) - a treacherous friend
(味方でありながら味方に害をなす人) - a snake in its bosom
(ふところの中のヘビ)
ちなみに、 “a snake in its bosom” はイソップ童話の一節がもとになっています。
イソップ童話には、「ある日、農夫は寒さで弱っていたヘビをふところに入れて温めてやりました。すると、やがて目覚めたヘビは農夫を咬(か)み、致命傷を負わせてしまいました」という話があるのです。
まとめ
以上、この記事では「獅子身中の虫」について解説しました。
読み方 | (しししんちゅうのむし) |
---|---|
意味 | 内部にいながら害をもたらす人や恩を仇で返す人のたとえ |
由来 | 『梵網経』の「獅子身中の虫、自ら獅子の肉を食らい、余外の虫に非ざるが如し。是くの如く仏子自ら仏法を破り、外道・天魔の能く破壊するに非ず」という言葉から |
類義語 | 恩を仇で返す、飼い犬に手を噛まれる、庇を貸して母屋を取られる、など |
英語訳 | A thorn in one’s flesh. (体の中のとげ) |
「獅子身中の虫」は有名な故事成語なので聞いたことがあるという人も多かったのではないでしょうか。
そして、とても勉強になる言葉でもあります。
内部から組織に害をもたらそうとする人には注意したいものですね。