今回ご紹介する言葉は、四字熟語の「深謀遠慮(しんぼうえんりょ)」です。
言葉の意味、使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「深謀遠慮」をざっくり言うと……
読み方 | 深謀遠慮(しんぼうえんりょ) |
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意味 | 遠い先の事までよく考えて、綿密な計画を立てること |
由来 | 中国の古書『文選」から |
類義語 | 思慮分別、百術千慮、千思万考、千方百計 |
対義語 | 軽挙妄動、軽率短慮、軽慮浅望、軽佻浮薄、鼻先思案 |
英語訳 | far sight and deep design, long future with deep thought, long-sightednes(深謀遠慮) |
このページの目次
「深謀遠慮」の意味をスッキリ理解!
「深謀遠慮」の意味を詳しく
「深謀遠慮」とは、遠い先の事までよく考えて、周到綿密な計画を立てることという意味を表す四字熟語です。
「遠謀深慮(えんぼうしんりょ)」や「遠慮深謀(えんりょしんぼう)」などのように言われることもあります。
「深謀遠慮」の「深謀」は、深く考えられた綿密な謀(はかりごと)を意味しており、「遠慮」は、遠い先の事まで見通してよく考えることを表しています。
「謀」とは、「事がうまくゆくように、前もって考えた手段・方法・計画」のことです。
また、「深謀遠慮」の「遠慮」は、「相手に対して気をつかい、自分の言動を控えるようにすること」や「相手の誘いや提案を断ったり、辞退することを遠回しに表現したりすることば」という一般的な意味ではありません。
ここでは、「現在のことだけでなく、遠く先の未来のことまで深く考慮すること」という3つ目の意味で使われています。
もともと「遠慮」は「遠い先のことを思うこと」という意味が語源でした。そこから、「未来のことを考えて、すぐには行動に移さない」という意味で使われるようになりました。
そして、江戸時代のころには現代で使われている「遠慮」の意味合いが強くなっていったのです。
「深謀遠慮」の使い方
- いい加減、お父さんのような深謀遠慮の人になってもらいたいものだ。
- 兵士の命を預かっているのだから、深謀遠慮して作戦を練らなければならない。
- 彼が命令に背いたのは、彼なりの深謀遠慮の結果であった。
- 深謀遠慮して、はじめて成功することができる。
書籍の中では、➌のように「深謀遠慮の結果」という形で使われることが多いです。
また、➍のように「深謀遠慮する」という動詞形で使うこともできます。
「深謀遠慮」の由来
「深謀遠慮」という四字熟語の由来は、『文選(もんぜん)』という中国の書物です。
『文選』は、南北線時代の中国の書物で、複数の文学者の詩や文章がまとめられているものです。その中の賈誼(かぎ)という人物が書いた「過秦論(かしんろん)」という作品の中に登場します。
「秦」という国を批判する文章です。「秦」を滅ぼす戦いの際に活躍した陳勝(ちんしょう)という人物について述べる部分に登場します。現代語訳では、以下のような意味です。
秦王朝を倒す戦いの口火を切った陳勝の地位は、他の国や時代の諸侯より低いものでした。陳勝の軍の武器が他より強かったわけでありません。
深謀遠慮する(深く謀りごとをめぐらし、遠い先々のことまで思いをめぐらして、軍を進め兵を用いる)点でも陳勝はかつての諸侯たちには及びませんでした。それにもかかわらず、陳勝は成功し、諸侯国は失敗したのです。
「陳勝は、地位が低く軍隊も弱かったが、深謀遠慮があったため勝つことができた」という内容ではないので、注意が必要です。
「陳勝は、深謀遠慮の点でも、ほかの諸侯と比べて特別優れていたわけではないのですが、なぜか秦を滅ぼしてしまった」という内容です。
「深謀遠慮」の類義語
「深謀遠慮」には以下のような類義語があります。
- 思慮分別(しりょぶんべつ):物事に注意深く考えをめぐらし、判断すること。
- 百術千慮(ひゃくじゅつせんりょ):さまざまな方法や手段を探り、しっかりと注意深く考えること。
- 千思万考(せんしばんこう):何度も深く考えること。
- 千方百計(せんぽうひゃっけい):ありとあらゆる方法を使って行動すること。
「深謀遠慮」の対義語
「深謀遠慮」には以下のような対義語があります。
- 軽挙妄動(けいきょもうどう):軽はずみに何も考えずに行動すること。
- 軽率短慮(けいそつたんりょ):よく考えないで、軽はずみに物事を決めたり、行動したりすること。
- 軽慮浅謀(けいりょせんぼう):あさはかで軽々しい考えや計略。
- 軽佻浮薄(けいちょうふはく):考えや行動などが軽はずみで、浮ついている様子。
- 鼻先思案(はなさきじあん):目先のことだけにとらわれた考え。単なる思いつき。
「軽挙妄動」の「軽挙」は深く考えずに行動することを表します。また、「妄動」は分別なくみだりに行動することという意味です。
「軽率短慮」の「軽率」は、物事の善悪や成否などをよく考えずに決めたり、行動したりすることです。「短慮」は、せっかちで慎重さや思慮に欠けることを意味する言葉です。
「軽慮浅謀」の「軽慮」は軽々しい考えを表します。そして、「浅謀」はあさはかな計画を意味します。
「軽佻浮薄」の「軽佻」は落ち着きがなく、よく考えないで言動する様子のことを指します。「浮薄」は浮ついて軽々しい様子を表します。また、信念がなく他に動かされやすい様子という意味もあります。
「鼻先思案」は「はなさきしあん」と読むこともあります。
「深謀遠慮」の英語訳
「深謀遠慮」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- far sight and deep design
(深謀遠慮) - long future with deep thought
(深謀遠慮) - long sightednes
(深謀遠慮)
far sight が「遠く先のことを見ること(考えること)」を意味します。そして、 deep design が「深い考え」を表します。
“He is man far sight and deep design.(彼は深謀遠慮な人物だ。)” などのように使います。
まとめ
以上、この記事では「深謀遠慮」について解説しました。
読み方 | 深謀遠慮(しんぼうえんりょ) |
---|---|
意味 | 遠い先の事までよく考えて、綿密な計画を立てること |
由来 | 中国の古書『文選」から |
類義語 | 思慮分別、百術千慮、千思万考、千方百計 |
対義語 | 軽挙妄動、軽率短慮、軽慮浅望、軽佻浮薄、鼻先思案 |
英語訳 | far sight and deep design, long future with deep thought, long-sightednes(深謀遠慮) |
「深謀遠慮」という四字熟語は、日常生活の中で頻繁に使われるものではありません。しかし、日々の生活の教訓になる言葉です。
ただやみくもに努力しても、いい成果は生まれないでしょう。落ち着いて深謀遠慮し、先の計画を立て直すことも重要です。
「深謀遠慮」の正しい使い方や、言葉の成り立ちをきちんと理解しましょう。