今回ご紹介する言葉は、熟語の「猜疑心(さいぎしん)」です。
言葉の意味・使い方・「猜疑心」が強い人の特徴・強くなる原因・克服する方法・対処法・語源・類義語・対義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「猜疑心」をざっくり言うと……
読み方 | 猜疑心(さいぎしん) |
---|---|
意味 | 人を疑う気持ち |
類義語 | 不信感、懐疑心、疑心暗鬼など |
対義語 | 信用、信頼、信任など |
英語訳 | suspicion(猜疑心)など |
このページの目次
「猜疑心」の意味をスッキリ理解!
「猜疑心」の意味を詳しく
「猜疑心」とは、人を疑う気持ちのことです。
特に、人の言動を素直に受け取らずに、何か裏があるのではないかと疑うことを言います。
この疑う気持ちの中には、妬む気持ちが含まれていることがあります。
また、相手の言動によって自分に不利益が生じるのではないかと考えたりすることを言います。
「猜疑心」の例
では、具体的にどのような気持ちを「猜疑心」と言うのでしょうか。
具体例をあげて考えてみましょう。
そこまで親しいわけではない知人や会社の同僚から誕生日プレゼントをもらったとします。
「猜疑心」が強い人は「急に誕生日プレゼントをくれるなんて、何か裏があるのだろうか」と感じます。
しかし、プレゼントを渡した本人としては、純粋にお祝いしたいという気持ちだったのかもしれません。
このように、相手の言動の裏側を疑う気持ちを「猜疑心」言います。
「猜疑心」の使い方
「猜疑心」は以下のような言い回しで用いられることが多いです。
- 猜疑心が強い
- 猜疑心を抱く
- 猜疑心の塊
- 猜疑心に苛まれる
それぞれの言い回しの使い方について、例文と一緒に見ていきましょう。
「猜疑心が強い」の使い方
「猜疑心が強い」は「人を疑いやすい」という意味です。
すぐ人のことを疑ってしまう人や、他人の行動に裏があるのではないかと考えてしまう人に対して使われることが多い言い回しです。
「猜疑心を抱く」の使い方
「猜疑心を抱く」は「人を疑う気持ちを持つ」という意味です。
相手を疑ったり、相手の行動になにか裏があるのではないかと勘ぐったりした時に用いられる言い回しです。
- すぐに猜疑心を抱いてしまう自分が嫌いだ。
- 異様にニコニコしている営業マンに猜疑心を抱く。
「猜疑心の塊」の使い方
「猜疑心の塊」は猜疑心がとても強い状態のことを表します。
特に、いつも人を疑ってばかりいる人のことを指すことが多いです。
- 常に人を疑い、信じることがない彼は猜疑心の塊と言える。
- 信じていた人全員に裏切られ、今の私は猜疑心の塊だ。
「猜疑心に苛まれる」の使い方
「猜疑心に苛まれる」は人を疑ってしまい、悩んだり苦しんだりする状態を指します。
- 5年付き合った彼氏に振られて以来、猜疑心に苛まれるようになった。
- この会社は皆が皆を出し抜くことを考えているため、私は猜疑心に苛まれてしまった。
「猜疑心」が強い人の11個の特徴
「猜疑心」が強い人には以下のような特徴があります。
- 自分に自信がない
- ネガティブ思考
- 人に裏切られた経験がある
- 自己中心的
- コミュニケーション能力が低い
- 相手を試してしまう
- 些細なことを心配しすぎてしまう
- 冗談が通じない
- 余裕がない
- ストレスが貯まっている
- 自分が相手を裏切ったり、嘘をついたりする
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
特徴①:自分に自信がない
「猜疑心」が強い人の最大の特徴は自分に自信がないことです。
以下のような理由で、自分に自信がない人は「猜疑心」が強くなりがちです。
自分に自信がない
↓
価値が低い自分に人が何かしてくれるわけがない
↓
自分に何かしてくれる人には裏の目的があるはずだ
特徴②:ネガティブ思考
「猜疑心」が強い人は物事をネガティブに考えることが多いです。
何事もネガティブに考えてしまうため、相手に何かしてもらった時にも、何か裏があるのではないかと考えてしまうのです。
特徴➂:人に裏切られた経験がある
「猜疑心」が強い人は人に裏切られた経験がある場合が多いです。
特に親友や恋人など、強く信頼していた人から裏切られると、大きなショックを受けてしまいます。
そして、誰のことも信頼できなくなり、「猜疑心」が強くなって誰でも疑うようになってしまうのです。
特徴④:自己中心的
自己中心的な人は「猜疑心」が強くなる場合が多いです。
なぜなら、自己中心的な人は、他者もまた自己中心的であり、他人のために何かすることはないと考えるからです。
そのため、人に何かしてもらった時に、「何か自己中心的な目的があるのではないか」と考えてしまうのです。
特徴⑤:コミュニケーション能力が低い
コミュニケーション能力が低い人は「猜疑心」が強くなりやすいです。
コミュニケーション能力が低いと他の人の考え方や価値観を深く知ることができません。
そのため、相手の行動の理由がすぐわからなくなり、不安になってしまいます。
そして、人に何かしてもらった時も理由がわからないので、信じて傷つかないように、「裏の目的があるに違いない」と考えるのです。
特徴⑥:相手を試してしまう
「猜疑心」が強い人は相手を試してしまうことが多いです。
「猜疑心」が強い人はすぐ人のことを疑ってしまい、不安になるので、不安を解消するために相手を試すのです。
具体的には、相手にわざと嫌われる行動をしたりして、その人が本当はどう思っているのか確かめようとします。
しかし、このような行動は相手から見ればただ嫌なことをされているだけなので、関係を悪化させやすく注意が必要です。
特徴⑦:些細なことを心配しすぎてしまう
「猜疑心」が強い人には些細なことを心配しすぎてしまう特徴があります。
細かいことに気づく性格なので、相手のちょっとした行動が気になり、自分のことを嫌っているのではないかと心配してしまうのです。
しかも、細かいことに気づく人は多くの場合ネガティブ思考を持っているので、悪い方向に心配してしまうことが多いです。
特徴⑧:冗談が通じない
「猜疑心」が強い人は冗談が通じない場合が多いです。
コミュニケーション能力が低くてネガティブなので、相手が冗談を言っていることに気づかず、本気で受け取ってしまうのです。
そして、冗談の種類によっては「悪口を言われた」と傷ついてしまうのです。
特徴⑨:余裕がない
「猜疑心」が強い人は余裕がない場合が多いです。
「猜疑心」が強い人は細かいことを気にしすぎてしまうため、考えることが多く、余裕がなくなってしまいます。
そして、余裕がないために相手の行動を悪い方向に単純化して考えてしまうのです。
特徴⑩:ストレスが貯まっている
「猜疑心」が強い人はストレスが貯まっていることが多いです。
人間にとって、ネガティブなことを考えたり、心配しすぎたりすることはストレスのもとだからです。
そして、ストレスが貯まっているとますます思考はネガティブになってしまいます。
特徴⑪:自分が相手を裏切ったり、嘘をついたりする
「猜疑心」が強い人は自分も相手を裏切ったり、嘘をついたりすることが多いです。
「猜疑心」が強い人は人から裏切られることに過度に恐怖しているので、自分が傷つけられないように、先に自分から裏切ったりするのです。
しかし、これは逆効果で、裏切ったり嘘をついたりする人の周りには同じような人が集まります。
「猜疑心」が強くなる3つの原因
「猜疑心」が強くなる原因には以下のようなものがあります。
- 信頼していた人から裏切られた
- 競争が激しい環境にいる
- もともとの性格
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
原因①:信頼していた人から裏切られた
「猜疑心」が強くなる大きな原因のひとつが信頼していた人から裏切られた経験です。
信頼していた人から裏切られると、誰も信頼できないように感じてしまい、人を疑うようになってしまうのです。
原因②:競争が激しい環境にいる
競争が激しい環境にいる場合も「猜疑心」が強くなってしまう場合があります。
競争が激しい環境では、皆が他人より上位に立つために、自分を高めるばかりでなく、人のことを蹴落とそうとします。
そのため、競争が激しい環境にいると裏切られることが多く、「猜疑心」が強くなる原因になってしまうのです。
原因➂:もともとの性格
生まれた時から「猜疑心」が強い性格をしている人もいます。
この場合は遺伝が原因になるので、環境が原因の場合と比べて「猜疑心」の強さを直すのが難しくなります。
「猜疑心」が強くなるのは、以下のような生まれ持った性格を持っている人です。
- ネガティブ思考
- 内向的でコミュニケーション能力が低い
- 細かいことによく気づく
「猜疑心」を克服する6つの方法
「猜疑心」を克服する方法としては以下のようなものが挙げられます。
- 「猜疑心」の強さを自覚する
- 「猜疑心」が強くなった原因を突き止める
- 裏表がない人と積極的に関わる
- 成功体験を積み上げて自信をつける
- 人の良い所を書き留める
- 不安に思ったことを人に聞いてみる
それぞれの方法の詳細について詳しく見ていきましょう。
方法①:「猜疑心」の強さを自覚する
「猜疑心」を克服するためにまず大切なのは、自分の「猜疑心」の強さを自覚することです。
「猜疑心」の強さに気づいていないうちは改善しようという気も起きないため、克服はできません。
人からよく「猜疑心が強い」と言われる場合は、なぜそのように言われるのか考えてみましょう。
具体的には、これまでの経験の中で、人を疑った経験を書き出し、その疑いが本当に正しいものなのか考えるところから始めましょう。
方法②:「猜疑心」が強くなった原因を突き止める
「猜疑心」を克服するためには「猜疑心」が強くなった原因を突き止めるのも大切です。
「猜疑心」が強くなった原因がわかれば、対処法も自然に出てくるからです。
上でも解説しましたが、「猜疑心」が強くなる原因としては以下のようなものが挙げられます。
- 信頼していた人から裏切られた
- 競争が激しい環境にいる
- もともとの性格
方法➂:裏表がない人と積極的に関わる
「猜疑心」を克服するためには、裏表がない人や他者貢献が好きな人と積極的に関わるのが重要です。
このような人と関わることで、「何の打算もなく人に何かしてあげる人もいる」と実感することができるからです。
と言っても、「猜疑心」が強い人は裏表がない人や他者貢献が好きな人が誰なのか判別できないと思います。
そんな時には、他の人に聞いたり、どう考えてもその人には直接的なメリットがない行動をしている人を見つけたりすると良いでしょう。
方法④:成功体験を積み上げて自信をつける
「猜疑心」を克服するためには、成功体験を積み上げて自信をつけることが重要になってくる場合も多いです。
なぜなら、「猜疑心」が強い人は自分に自信がない場合が非常に多いからです。
自分に自信を持つと「猜疑心」が克服できるだけでなく、ポジティブに考えられるようになるなど、さまざまなメリットがあります。
成功体験はどんどん新しいことに挑戦して、自分が得意なことや好きなことを見つけて、それを努力することで積み上げることができます。
方法⑤:人の良い所を書き留める
人の良い所を書き留めるのも「猜疑心」を克服する方法として有効です。
人の良い所を書き留める習慣をつけると物事の良い側面を見ることができるようになり、物事をポジティブに捉えられるようになります。
そうすれば相手に何かしてもらった時にも、その好意を素直に受け取ることができます。
方法⑥:不安に思ったことを人に聞いてみる
「猜疑心」を克服するためには、不安に思ったことを人に聞いてみるのも大切です。
「猜疑心」は不安に思ったことを人に聞かずに「こうに違いない」と思い込むことで起こることが多いです。
不安に思ったことを人に聞いてみると、自分が思っていたのと全然違う答えが返ってくることも多いです。
今までの自分の思考が思い込みに過ぎなかったことがわかるようになります。
「猜疑心」が強い人への3つの対処法
「猜疑心」が強い人への対処法には以下のようなものがあります。
- 深く関わりすぎない
- 自分の情報をできるだけ話さない
- 何を言われても気にしない
それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。
対処法①:深く関わりすぎない
「猜疑心」が強い人への対処法としては、深く関わりすぎないことが一番簡単かつ有効です。
無理に付き合って自分まで悪い影響を受ける必要はありません。
適度な距離感をもって接するのが重要です。
「この人の猜疑心の強さを変えてあげたい」と思う方もいるかもしれませんが、相当難しいと覚悟しておいたほうが良いです。
人を変えるには自分を変えるよりはるかに大変な努力が必要ですし、その努力が実るとも限りません。
自分が変わって、その人との関わりを減らすほうがずっと簡単です。
対処法②:自分の情報をできるだけ話さない
「猜疑心」が強い人には自分の情報をできるだけ話さないのも重要です。
「猜疑心」が強い人は物事をネガティブに捉える天才なので、いくらポジティブな情報でもすべてネガティブに捉えられてしまいます。
そのため、情報を与えれば与えるほど、あなたのイメージは悪くなります。
「猜疑心」が強い人と一番うまく関わる方法は、相手に情報を与えないことなのです。
対処法➂:何を言われても気にしない
「猜疑心」が強い人には何を言われても気にしないのも重要です。
「猜疑心」が強い人は何事も悪い見方をするので、いちいち真に受けているとストレスが貯まってしまいます。
「猜疑心」が強い人から言われたことはすぐに忘れてしまうのが得策です。
「猜疑心」の語源
「猜疑心」を構成する漢字には以下のような意味があります。
- 猜:うたがう
- 疑:うたがう
- 心:こころ
つまり、「疑う」という意味の言葉を2つ重ねた「猜疑」に、「心」をつけて「猜疑心」という言葉が生まれたのです。
「猜疑心」の類義語
「猜疑心」には以下のような類義語があります。
- 不信感(ふしんかん):信用できない気持ち
- 懐疑心(かいぎしん):物事を疑う心、信頼できない気持ち
- 疑心暗鬼(ぎしんあんき):一度疑い始めると、何でもないことまで疑問や不安を感じたり、恐ろしく感じたりすること
- 警戒心(けいかいしん):危険に備えて用心する気持ち
- 疑念(ぎねん):あることが本当か疑う心
- 疑心(ぎしん):うたがう心
「猜疑心」と「懐疑心」の違い
「懐疑心」は、何かを疑ったり、物事の意味や価値に対して否定的に思うことを言います。
「猜疑心」と「懐疑心」は漢字も似ていますが、以下のような違いがあります。
- 猜疑心:人の善意に裏があると疑ったり、妬んだりする気持ち
- 懐疑心:単に疑う根拠があり、信頼できないと感じる気持ち
要するに、「懐疑心」には根拠がありますが、「猜疑心」は根拠がない場合にも用いるのです。
「猜疑心」の対義語
「猜疑心」には以下のような対義語があります。
- 信用(しんよう):確かなものだと信じて受け入れること
- 信頼(しんらい):信じて頼りにすること
- 信任(しんにん):その人を信用して物事を任せること
- 親愛(しんあい):その人に親しみと愛情を持っていること
「猜疑心」の英語訳
「猜疑心」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- skepticism
(懐疑論) - doubt
(疑問に思う) - jealous
(嫉妬する) - suspicion
(猜疑心) - suspicious
(猜疑心が強い)
“He is suspicious of everything.” (彼は猜疑心が強い。)
まとめ
以上、この記事では「猜疑心」について解説しました。
読み方 | 猜疑心(さいぎしん) |
---|---|
意味 | 人を疑う気持ち |
類義語 | 不信感、懐疑心、疑心暗鬼など |
対義語 | 信用、信頼、信任など |
英語訳 | suspicion(猜疑心)など |
猜疑心は、人の言動の裏側に何かあるのではないかと疑ってしまうことです。
ただし、「猜疑心」を抱かずに、相手の好意を素直にありがたいと受け取れられた方が幸せではないでしょうか。
「猜疑心」の意味をきちんとおさえ、正しく使いこなせるようにしましょう