今回ご紹介する言葉は、ことわざの「暖簾に腕押し(のれんにうでおし)」です。
言葉の意味や使い方、由来、類義語、対義語、英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「暖簾に腕押し」をざっくり言うと……
読み方 | 暖簾に腕押し(のれんにうでおし) |
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意味 | こちらが何をしても反応や手応えが無く、張り合いが無いこと。 |
由来 | 暖簾をくぐる際、抵抗が一切ないことから。また、暖簾のようなものと腕相撲しても張り合いが無いことから。 |
類義語 | 豆腐に鎹、糠に釘、生壁に釘など |
対義語 | 大黒柱と腕押し、打てば響くなど |
英語訳 | All is lost that is given to a fool. (悪人に与えられるものはすべて無駄になる)など |
このページの目次
「暖簾に腕押し」の意味をスッキリ理解!
「暖簾に腕押し」の意味を詳しく
「暖簾に腕押し」とは、こちらが何をしても反応や手応えが無く、張り合いが無いことを意味します。
たとえば、チームを鼓舞するために声を出したのにスルーされてしまった時には反応が薄く「張り合いがない」と感じます。
この「張り合いがない」ことを「暖簾に腕押し」と表現します。
また、「暖簾に腕押し」には「効果がない」という意味もあります。
たとえば、新しいCMを放映したのに売上が変化しなかった場合は「暖簾に腕押し」と表現できます。
また、「暖簾に腕押し」は恋愛で用いられることもあります。
恋愛の場面では「アピールしても無意味である様子」を表します。
たとえば、片思いの相手にアピールしても全然気づいてもらえなかった時には「暖簾に腕押し」と表現できます。
「暖簾に腕押し」の使い方
- やる気のない生徒にいくら熱心に勉強を教えても、それは暖簾に腕押しだ。
- 同じミスの多い社員に注意しても暖簾に腕押しで、全く改善されない。
- 上司に企画を提案しても、暖簾に腕押しで全く通してもらえなかった。
- 疲れ切った相手と試合をしても暖簾に腕押しだ。
- 部下の仕事がいくら教えても上達せず、暖簾に腕押し状態だ。
上記の例文のように、「暖簾に腕押し」は「暖簾に腕押しだ」という言い回しで用いられることが多いです。
⑤の例文のように「暖簾に腕押し状態(効果がない状態のこと)」という形で用いられることもあります。
➀の例文では、やる気のない生徒に熱心に勉強を教えても、生徒にやる気が無ければ意味がないものになるので、「暖簾に腕押し」と言えます。
➁の例文では、同じミスの多い社員が注意しても同じミスを繰り返すことから、その注意は「暖簾に腕押し」と言うことができます。
➂の例文では、上司に対して企画を提案しても、受け入れてくれなかったことから「暖簾に腕押し」の場面と言うことができます。
➃の例文では、疲れ切った相手との試合は、張り合いがないものになることが予想され、「暖簾に腕押し」と言うことができます。
「暖簾に腕押し」の由来
暖簾とは、居酒屋や旅館、温泉などの入り口に掛かっている布のことです。
温泉であれば、「男湯」「女湯」と書かれた布がイメージしやすいと思います。
現代の家庭の中では見かけることはほとんどありません。
その暖簾が由来なのですが、具体的には以下の2通りの説があります。
- 「暖簾をくぐってもほとんど抵抗がない」のが由来という説
- 「腕押しが腕相撲を意味している」という説
それぞれの説について詳しく見ていきましょう。
由来の説①:「暖簾をくぐってもほとんど抵抗がない」のが由来という説
「暖簾に腕押し」の1つ目の説は「暖簾をくぐってもほとんど抵抗がない」ことが由来だという説です。
暖簾はただのぶら下がっている布なので、腕で押しても抵抗を感じることはほとんどありません。
この、「暖簾を腕で押しても抵抗がない様子」が「暖簾に腕押し」の由来になったのです。
由来の説②:「腕押しが腕相撲を意味している」という説
「暖簾に腕押し」の2つ目の説は、「腕押し」が「腕相撲」を意味していると考える説です。
暖簾のように力の入っていない相手と腕相撲をしても、手ごたえはありません。
「暖簾(のように力がこもってない相手)と腕相撲をする」様子が「暖簾に腕押し」の由来になったのです。
「暖簾に腕押し」の類義語
「暖簾に腕押し」には以下のような類義語があります。
- 豆腐に鎹(とうふにかすがい):手ごたえが全くないこと
- 糠に釘(ぬかにくぎ):手ごたえが全くないこと
- 生壁に釘(なまかべにくぎ):手ごたえが全くないこと
- 泥に杭(どろにくい):手ごたえが全くないこと
- 石に灸(いしにきゅう):何の効き目も反応も無いこと
- 暖簾と相撲(のれんとすもう):張り合いが無いこと
- 馬の耳に念仏(うまのみみにねんぶつ):言っても全然聞いてくれないこと
- カエルの面に水:どんな仕打ちを受けてもいっこうに平気なこと
- 対牛弾琴(たいぎゅうだんきん):何の効果もなく無駄なこと
- 沢庵(たくあん)のおもしに茶袋(ちゃぶくろ):効き目がないこと
- 土に灸(きゅう):何も効果がないこと
- 暖簾と臑(すね)押し:反応がなく張り合いがないこと
- 馬耳東風(ばじとうふう):他人の意見を気にもせず受け流すこと
- 柳に風:何事も気にしないで受け流すこと
「暖簾に腕押し」と「柳に風」の違い
「柳に風」は「何事も気にしないで受け流すこと」という意味です。
「暖簾に腕押し」と「柳に風」には以下のような違いがあります。
- 暖簾に腕押し:ネガティブなニュアンスで用いる
- 柳に風:ポジティブなニュアンスで用いる
「暖簾に腕押し」と「柳に風」はどちらも「相手の働きかけを受け流す」という点は共通しています。
しかし、「暖簾に腕押し」がこれを「効果がない」とネガティブなニュアンスで用いるのに対して、「柳に風」は「つまらないことを気に留めない賢い態度」というポジティブなニュアンスで用いているのです。
「暖簾に腕押し」の対義語
「暖簾に腕押し」には以下のような対義語があります。
- 大黒柱と腕押し(だいこくばしらとうでおし):とてもできないこと。また、力量に大きな差があること
- 打てば響く:すぐに反応が返ってくること
「暖簾に腕押し」の英語訳
「暖簾に腕押し」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- All is lost that is given to a fool.
(悪人に与えられるものはすべて無駄になる。) - It is like beating the air.
(空気を叩くようだ。) - He catches the wind with a net.
(網で風を捕らえる。) - It’s like water off a duck’s back.
(アヒルの背中から水が出るようなもの) - It is like plowing the sand.
(砂を耕すようなもの) - It’s like taking candy from a baby.
(赤ん坊からキャンディを取り上げるようなもの) - It’s no compertition.
(競争にもならない)
まとめ
以上、この記事では「暖簾に腕押し」について解説しました。
読み方 | 暖簾に腕押し(のれんにうでおし) |
---|---|
意味 | こちらが何をしても反応や手応えが無く、張り合いが無いこと。 |
由来 | 暖簾をくぐる際、抵抗が一切ないことから。また、暖簾のようなものと腕相撲しても張り合いが無いことから。 |
類義語 | 豆腐に鎹、糠に釘、生壁に釘など |
対義語 | 大黒柱と腕押し、打てば響くなど |
英語訳 | All is lost that is given to a fool. (悪人に与えられるものはすべて無駄になる)など |
「暖簾に腕押し」の意味や使い方を理解することができたでしょうか。
自分が相手に対して何か言ったり、行動を起こしたりしたにもかかわらず、相手の反応が薄く、張り合いが無い時に使います。このような場面は、結構辛いものがあると思います。
自分が何か言われたり、されたりした時は、少しでも反応してあげるといいかもしれませんね。