固定概念とは「定着している考え、変わらない考え方」という意味です。
日常でよく使用する四字熟語のひとつですが、実は正式な日本語ではないことをご存知でしたか。
今回はそんな固定概念の意味や使い方について詳しく解説します。
☆「固定概念」をざっくり言うと……
読み方 | 固定概念(こていがいねん) |
---|---|
意味 | 定着している考え、変わらない考え方 |
由来 | 固定観念の誤用 |
類義語 | 先入観、固着観念、ステレオタイプなど |
英語訳 | fixed idea、stereotypedなど |
メリット | 確固たる信念が持てること |
脱却方法 | ゴードン法、ターンオーバー法 |
このページの目次
「固定概念」の意味
定着している考え、変わらない考え方
固定概念は「定着している考え、変わらない考え方」という意味です。
しかし、固定概念という日本語は正式には存在しません。
固定観念という単語を使う際に、固定概念が誤用され始めて結果的に浸透してしました。
そのため、固定概念の意味も固定観念と同じで、「自分の中で固まって定着した考えや考え方」です。
固定観念との違い
固定概念と固定観念の違いを読み解くために、「概念」と「観念」に分解して考えてみましょう。
違いは以下の通りです。
- 概念
ある物事についての客観的な説明や定義 - 観念
ある物事について抱くイメージや考え
概念は人々の認識がある程度共通していますが、観念は人によって考え方が異なります。
概念はもともと考えが固定化されているので、固定概念という表記は正しくありません。
一方で、観念の場合はさまざまな種類があるので、「観念が凝り固まっている」という意味で固定観念という表現は適切です。
概念と観念についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
概念
概念は「ある物事についての客観的な説明や定義」を指します。
概念を用いて物や事の説明が可能で、逆に聞き手側は誰であっても理解ができて共通の認識にいたります。
たとえば、「小学生」の概念は「初等教育である小学校に通う児童」です。
観念と違って自分のイメージそのものが入っていません。
観念
観念は「ある物事について抱くイメージや考え」のことです。
たとえば、「小学生」と聞いて、「ランドセル」「黄色い帽子」と抱くイメージです。
観念は主観的な一方で、概念は客観的。
そのため、「概念が固定される」というのは間違い。
「固定概念」の使い方

固定概念は以下のような言い回しで使用されます。
- 固定概念に囚われる
- 固定概念を形成する
- 固定概念が強い
- 固定観念を覆す
- 固定概念を壊す
- 固定概念を捨てる
それぞれの例文を見てきましょう。
「固定概念に囚われる」の使い方
「固定概念に囚われる」は「凝り固まった考えから脱却できない」という意味です。
- 彼は固定概念にずっと囚われている。
「固定概念を形成する」の使い方
「固定概念を形成する」は「考え方が凝り固まってしまう」という意味です。
- 幼い頃のできごとがきっかけで、固定概念を形成してしまった。
「固定概念が強い」の使い方
「固定概念が強い」は「思い込みが激しい」という意味です。
- 彼女は人生観に対する固定概念が強い。
「固定観念を覆す」の使い方
「固定観念を覆す」は「自分の思い込みを塗り替える」という意味です。
- 地球は平面という固定概念を覆せた。
「固定概念を壊す」の使い方
「固定概念を壊す」は「自分の凝り固まった考えを刷新する」という意味です。
- 自分の固定概念を壊すような講義を受ける。
「固定概念を捨てる」の使い方
「固定概念を捨てる」は「自分の凝り固まった考えを新しくする」という意味です。
- 固定概念を捨てるのは難しい。
「固定概念」の由来

固定概念は同じ四字熟語の固定観念の誤用がきっかけで一般的に使われるようになりました。
しかし、固定概念は現在でも正式には誤った日本語の表記です。
「固定概念」の類義語

固定概念には以下のような類義語があります。
「先入観」の意味
先入観は「自分が思い込んでしまっていること」という意味です。
たとえば、「カレーはいつも辛い」と思い込んでしまっていることです。
「固着観念」の意味
固着観念は「根付いた考え方やイメージ」です。
固定観念や固定概念とほぼ同じ意味合いで使用します。
「ステレオタイプ」の意味
ステレオタイプは「定着している考え、変わらない考え方」です。
「思い込みが激しい人」を「ステレオタイプ人間」と表現します。
「既成概念」の意味
既成概念は「すでにできあがった概念、考え方」です。
ちなみに、「既成観念」という言葉は誤用です。
「思い込み」の意味
思い込みは「深く信じ込むこと」で、「思い込みが激しい」などと使用します。
「イデオロギー」の意味
イデオロギーは「論理的にまとめた考え」という意味です。
特に政治や宗教などで使用し、「こうあるべき(考え方)」というニュアンスが強いです。
たとえば、「独裁的なイデオロギー」とは、「優秀なリーダーが人民を統治するべき」という考え方です。
「固定概念」の英語訳

固定概念を英語に訳すと、次のような表現になります。
- fixed idea
(固まった考え) - stereotyped
(ステレオタイプ)
「固定概念」があるメリット

固定概念があることには以下の2つのメリットがあります。
- 確固たる信念が持てる
- 物事の予測をしやすくなる
それぞれのメリットについて詳しく見てきましょう。
メリット①:確固たる信念が持てる
固定概念のメリットのひとつめは、周りに流されず確固たる信念が持てることです。
簡単に考えが変わらないので流されにくいでしょう。
メリット②:物事の予測をしやすくなる
ふたつめは固定概念があると、物事の予測をしやすくなります。
たとえば、交通量の多い道路を見ただけで、「危ない」と思うようになり事故の防止になります。
物事を予測しやすくなることはメリットですが、これは「視野が狭くなる」というデメリットと表裏一体です。
たとえば、車に乗ったことがなく「車は危ない乗り物」という固定概念を持っていたとします。
そうすると、どうしても車に乗車すること自体を拒んでしまい、行動や思考が停止してしまいがちです。
「固定概念」からの脱却方法

固定概念から脱却するためには主にふたつの方法があります。
- ゴードン法
- ターンオーバー発想法
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ゴードン法
ゴードン法は、連想を重ねて新しい考えを生み出し、固定概念を脱却する手法です。
具体的には以下の手順を実施します。
- 固定概念から脱却したい対象を設定する
- その対象を抽象化する
- 抽象化したものをさらに連想する
- 連想したものと最初に設定した対象を結びつける
たとえば、「新しいカレー料理」について企画するします。
すでに「カレーは辛い食べ物」という固定概念が定着していると、アイデアも生まれません。
そこで「思わず食べてみたくなる料理」と抽象化した問いに変えてみます。
そうすると「珍しい味」「見た目が美しい料理」といった考えが浮かびます。
これらを利用して最終的に、たとえば「綺麗に盛り付けされた酸っぱいカレー」という料理を思い浮かべられます。
連想を重ねて新しい考えを生み出し、固定概念を脱却可能なのがゴードン法です。
ターンオーバー法
ターンオーバー法は、逆の発想をあえて行うことで新しい考え方を生み出す手法です。
具体的には以下の手順を実施します。
- 固定概念から脱却したい対象を設定する
- その対象の特徴と逆の特徴を列挙する
- 逆の特徴から新しい発見を導き出す
たとえば、「新しいカレー料理」について考えるとするとまず、カレーの特徴を列挙します。
できるだけ当たり前と言われている事柄がよくて、たとえば、「辛い」「ご飯やナンと一緒に食べる」などです。
そして、それを今度は裏返して逆にします。
「辛い」ならば「甘い」、「ご飯やナンと一緒に食べる」ならば「ご飯やナン以外の食べ物と一緒に食べる」などです。
この作業ができたら次は逆の発想からアイデアを生み出します。
この場合だと、たとえば「甘くて麺と一緒に食べるカレー」というようにアイデアを生み出せます。
ターンオーバー法のポイントは、日々思っていることや常識となっていることの逆から発想してみることです。
「固定概念」のまとめ
以上、この記事では「固定概念」について解説しました。
読み方 | 固定概念(こていがいねん) |
---|---|
意味 | 定着している考え、変わらない考え方 |
由来 | 固定観念の誤用 |
類義語 | 先入観、固着観念、ステレオタイプなど |
英語訳 | fixed idea、stereotypedなど |
メリット | 確固たる信念が持てること |
脱却方法 | ゴードン法、ターンオーバー法 |
固定概念は正しい日本語の表記ではありませんが、日常でよく使います。
ぜひ、この記事を参考にして意味や使い方を覚えましょう。