敬語「寡聞(かぶん)にして知らない」とは?意味や用例から英語まで

言葉

「寡聞にして知らない」とは「自分の知識が不足しているため、知らない」という意味です。

「知らない」という部分は理解できても、「寡聞にして」が難しいですよね。

また、例文がイメージしづらいという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、「寡聞にして知らない」の意味や使い方、類義語、対義語などについて詳しく解説します。

☆「寡聞にして知らない」をざっくり言うと……

読み方寡聞(かぶん)にして知(し)らない
意味自分の知識が不足しているため、知らない
類義語寡聞少見
寡聞浅学
浅見寡聞 など
対義語博覧強記
博識
博学 など
英語訳I’ve heard nothing about it yet.
(それについてはまだよく聞いたことがない。)
I have little knowledge of it.
(それについてはあまり知識がない。)
I don’t know.
(知らない。)

「寡聞にして知らない」の意味

ぶんにしてらない

自分の知識が不足しているため、知らない

「寡聞にして知らない」は、「自分の無知のせいで、よく知らない」という意味です。

単に「知らない」「わからない」と言うよりも、「それは知りません、勉強不足なもので…」というような謙遜(けんそん)を表すことができます。

「寡聞にして知らない」のそれぞれの語を分解すると、以下のようになります。

  • 寡聞
    知識が少ない
  • にして
    〜であるため
  • 知らない
    見聞きしたことがない

つまり、「寡聞にして知らない」は、「知識が少ないため、見聞きしたことがない」ということを表しているのです。

「寡聞」の意味を詳しく

「寡聞にして知らない」の「寡聞」は、知識が少ないことを表します。

「寡」と「聞」には、それぞれ以下のような意味があります。


  • 少ない

  • 聞いて知る=見識

「寡」と「聞」の意味をさらに詳しく見てみましょう。

「寡」の意味を詳しく

「寡」は「少ない」という意味です。

「寡」は、屋根の下に1人の頭がある様子をかたちにした漢字です。

家に1人しかいない状況を表す「寡」は、夫を亡くした女性を表す言葉でした。

この「たった1人」という意味が転じて、「少ない」という意味ももつようになりました。

「寡」が使われる言葉として有名なのは、寡黙(かもく)です。

寡は「少ない」、黙は「だまる」という意味をもっているため、口数が少ないという意味になります。

「聞」の意味を詳しく

「聞」は「聞いて知る」という意味です。

「寡聞」においては、「聞」は「見聞、知識」という名詞としての意味合いで使われています。

「寡聞にして知らない」の使い方


「寡聞にして知らない」は、以下のように使うことができます。

  1. このような前例は寡聞にして知らない
  2. そのニュース、寡聞にして知らなかったよ。
  3. 彼の伝記の存在は寡聞にして知りませんでした
皮肉としての意味で使われることもある

「寡聞にして知らない」は、自分が知らないことをへりくだる言葉ですが、ありえないようなことに対する皮肉・嫌味を言うときに使われることもあります。

  • へー、そんなに簡単にタイムスリップできる方法なんて、寡聞にして知らないなあ。
    (=タイムスリップできるなんて、ありえないよ)

「寡聞にして知らない」を使うときの注意点


「寡聞にして知らない」を使うときには、以下の点に気をつけましょう。

  1. より丁寧な表現は「寡聞にして存じない」
  2. ストレートに「わからない」と言うべき場合もある

注意点①より丁寧な表現は「寡聞にして存じない」

1つ目の注意点は、「寡聞にして知らない」をより丁寧にした表現は「寡聞にして存じない」であるという点です。

「存じない」は、「知らない」を丁寧にした表現です。

よりあらたまった場面や、目上の人との会話では、「寡聞にして存じない」を使いましょう。

例文
  • 先生がかつてA大学で勤務なさっていたことを寡聞にして存じませんでした。
  • A:君はこの標本が何の化石かわかるかな?
    B:いえ、寡聞にして存じません

注意点②ストレートに「わからない」と言うべき場合もある

2つ目の注意点は、「寡聞にして知らない」ではなく、ストレートに「わからない」と言うべき場合もあるであるという点です。

「寡聞にして知らない」を使うと、たとえ悪気がなくても、受け取り方によっては、「難しい言い回しを使うことで、皮肉や嫌味を表しているのでは?」と勘違いされてしまうこともあります。

そのため、「この点については勉強不足で、詳しくないです」などと、ストレートな表現を使って、誤解を防ぐこともときには必要です。

「寡聞にして知らない」の類義語

「寡聞にして知らない」の類義語は、以下の2つのパターンに分けることができます。

  1. 「寡聞」が含まれる類義語
  2. 「寡聞」が含まれない類義語

1つずつ見ていきましょう。

類義語①「寡聞」が含まれる類義語

「寡聞」が含まれる類義語には、以下のようなものがあります。

  • 寡聞少見(かぶんしょうけん)
    自分の見識や考えが浅い
  • 寡聞浅学(かぶんせんがく)
    自身の知識や経験が少ない
  • 浅見寡聞(せんけんかぶん)
    自分の知識が浅いこと

上記の言葉はすべて、「寡聞にして知らない」の代わりとして使うことができます。

自分の知識不足をへりくだるときに使うことが多いからです。

ちなみに、寡聞少見は、古代中国の歴史書『漢書』の「匡衡伝(きょうこうでん)」で初めて使われるようになりました。

類義語②「寡聞」が含まれない類義語

「寡聞」が含まれない類義語には、以下のようなものがあります。

  • 管見(かんけん)
    狭い見識
  • 浅見(せんけん)
    浅い考え
  • 不案内(ふあんない)
    ある分野のことについて詳しくない
  • 無知(むち)
    知識がない
  • 無学(むがく)
    知識がない
  • 疎い(うとい)
    知識や理解が足りていない
  • 不勉強(ふべんきょう)
    勉強が足りない
  • 勉強不足(べんきょうぶそく)
    勉強が足りないさ
  • 無知蒙昧(むちもうまい)
    知恵や知識がなく、浅はかであること
  • 一知半解(いっちはんかい)
    本質を理解していないこと

上記の言葉もすべて、自分の知識が足りていないときに使うことができるため、「寡聞にして知らない」の類義語といえます。

ただし、これらの言葉は、謙遜する場面だけでなく、あらゆる場面で使うことができます。

「杳(よう)として知れない」は類義語ではない

「寡聞にして知らない」と「杳として知れない」は言い回しが似ていますが、意味が異なるため類義語とはいえません。

  • 寡聞にして知らない
    自分の知識が不足していて、よく知らない
  • 杳として知れない
    事情や状況がはっきり見えてこないため、よくわからない

「寡聞にして知らない」では、よく知らないことの原因が “自分の知識が不足していること” です。

一方で、「杳として知れない」では、よくわからないことの原因が “状況がはっきりと見えてこないこと” なのです。

「寡聞にして知らない」の対義語

「寡聞にして知らない」には以下のような対義語があります。

  • 博覧強記(はくらんきょうき)
    知識が広いこと
  • 博識(はくしき)
    知識が広いこと
  • 博学(はくがく)
    知識が広いこと
  • 物知り(ものしり)
    知識が広いこと
  • 碩学(せきがく)
    学問が広く深いこと
  • 知悉(ちしつ)する
    細かいところまで知りつくす
  • 精通(せいつう)する
    ある分野の物事を詳しく知っている
  • 生き字引(いきじびき)
    知識が広い人
  • 多聞(たぶん)
    多くの物事を知っていること

上記の言葉はすべて、知識が充分に備わっていることを表します。

そのため、「知識が不足していて、よく知らない」ということを表す「寡聞にして知らない」の対義語といえます。

「寡聞にして知らない」の英語訳

「寡聞にして知らない」を英語に訳すと、次のような表現になります。

  • I’ve heard nothing about it yet.
    (それについてはまだよく聞いたことがない。)
  • I have little knowledge of it.
    (それについてはあまり知識がない。)
  • I don’t know.
    (知らない。)
  • I don’t really know a lot about〜
    (〜についてはよく知らない。)
  • I don’t know much about〜
    (〜についてはよく知らない。)
  • I am not certain about〜
    (〜についてはよく知らない。)
  • My knowledge of 〜 is poor.
    (私は〜についての知識が乏しい。)

「寡聞にして知らない」のまとめ

以上、この記事では「寡聞にして知らない」について解説しました。

読み方寡聞(かぶん)にして知(し)らない
意味自分の知識が不足しているため、知らない
類義語寡聞少見
寡聞浅学
浅見寡聞 など
対義語博覧強記
博識
博学 など
英語訳I’ve heard nothing about it yet.
(それについてはまだよく聞いたことがない。)
I have little knowledge of it.
(それについてはあまり知識がない。)
I don’t know.
(知らない。)

「寡聞にして知らない」は、「自分の知識が足りていないために、知らない」という謙遜を表すことができるため便利です。

少し難しい言葉であるため、日頃から無理に使う必要もありませんが、普段とは違う言い方をしてみたいときには「寡聞にして知らない」を使ってみましょう。

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