醸成とは「原料を発酵させて酒などを造ること」「少しずつある状態をつくり出すこと」という意味です。
元々はお酒に関係する言葉ですが、「少しずつある状態をつくり出すこと」という意味でよく使われます。
2つある意味を、どちらもしっかり覚えたいですよね。
この記事では、醸成の意味や使い方を詳しく解説します。
☆「醸成」をざっくり言うと……
読み方 | 醸成(じょうせい) |
---|---|
意味 | 原料を発酵させて酒などを造ること 少しずつある状態をつくり出すこと |
語源 | 醸:発酵させて酒をつくる、時間をかけて自然につくり出す 成:出来上がる |
類義語 | 醸造 醸し出す 醸出 など |
対義語 | 急拵え 即効 速効 など |
英語訳 | ferment(発酵) brew(醸造する) nurture(育成) など |
「醸成」の意味
- 原料を発酵させて酒などを造ること
- 少しずつある状態をつくり出すこと
醸成は、①の「原料を発酵させて酒などを造ること」から転じて、②の「少しずつある状態をつくり出すこと」という意味ももちます。
一般的には、②の「少しずつある状態をつくり出すこと」という意味でよく使われます。
ここからは、それぞれの意味を詳しく解説します。
意味①原料を発酵させて酒などを造ること
1つ目は、「原料を発酵させて酒や醤油や味噌などを造ること」という意味です。
発酵とは、微生物によって物質が変化することです。
発酵して変化するものには、以下のようなものがあります。
大豆 | 醤油、味噌、納豆 |
蒸し米 | 日本酒 |
大麦 | ビール |
牛乳 | チーズ、ヨーグルト |
意味②少しずつある状態をつくり出すこと
2つ目は、「徐々にある状態や雰囲気をつくり出すこと」という意味です。
ある状態とは、その場にいる人々の雰囲気のことです。
元々の状態から、何かがきっかけとなり、別の状態に少しずつ変化することを表します。
醸成は、「徐々にある状態や雰囲気をつくり出すこと」という意味です。
一気に何かがつくり出される場合には、醸成とは言いませんので注意しましょう。
「醸成」の使い方
醸成は、やや硬い言葉です。
醸成の使い方を、以下の2つの場合に分けて見ていきましょう。
- 「原料を発酵させて酒などを造ること」の意味の使い方
- 「少しずつある状態をつくり出すこと」の意味の使い方
使い方①「原料を発酵させて酒などを造ること」の意味
「原料を発酵させて酒などを造ること」という意味の例文には以下のようなものがあります。
- ここは味噌を醸成している工場だ。
- 職人が醸成した高級なお酒を飲む。
使い方②「少しずつある状態をつくり出すこと」の意味
「少しずつある状態をつくり出すこと」という意味の例文には以下のようなものがあります。
よく使う言い回しと一緒に例文を見ていきましょう。
- 意識を醸成する
例:同じ課題に取り組むことで、彼らの仲間意識が醸成された。 - 機運を醸成する
例:来週のプレゼンに向けて、部署内の機運を醸成する。
(※)機運:時のめぐりあわせ - 連帯感を醸成する
例:部員の連帯感を醸成するために合宿を計画する。
(※)連帯感:1つにまとまっている感 - 危機感を醸成する
例:新型コロナウィルスの感染拡大によって、国民の危機感が醸成された。 - 文化を醸成する
例:若手の人材を採用することで、組織文化を新しいものに醸成したい。 - 関係を醸成する
例:教師の熱い指導により、生徒との信頼関係が醸成された。
「醸成」の語源
醸成は以下の語から成り立っています。
- 醸
①発酵させて酒をつくる
②時間をかけて自然につくり出す - 成
出来上がる
つまり、「ゆっくりと時間をかけてつくり上げること」を表します。
「醸成」の類義語
醸成の類義語を、以下の2つの場合に分けて見ていきましょう。
- 「原料を発酵させて酒などを造ること」の意味の類義語
- 「少しずつある状態をつくり出すこと」の意味の類義語
①「原料を発酵させて酒などを造ること」の意味の類義語
- 醸造(じょうぞう)
原料を発酵させて酒などを造ること - 醸酒(じょうしゅ)
発酵させて酒を造ること - 吟醸(ぎんじょう)
よく調べた原料を使って丁寧に醸造すること - 醸す(かもす)
①原料を発酵させて酒などを造ること
②少しずつある状態をつくり出すこと
「醸す」は、醸成と同じ2つの意味をもちます。
②「少しずつある状態をつくり出すこと」の意味の類義語
- 醸し出す
少しずつある状態をつくり出すこと - 醸出(じょうしゅつ)
少しずつある状態をつくり出すこと - 惹起(じゃっき)
事件や問題などを引き起こすこと - 涵養(かんよう)
自然に水がしみこむように、徐々に養い育てること - 教育
教えて知能をつけること - 養成(ようせい)
教育や訓練でによって、一定の技能をつけること - 育成
育てて大きく立派にすること - 育て上げる
育てて大きく立派にすること - 養う(やしなう)
少しずつつくり出すこと
「醸成」と「惹起」の違い
醸成と惹起には以下のような違いがあります。
醸成 | 惹起 | |
---|---|---|
意味 | 原料を発酵させて酒などを造ること 少しずつある状態をつくり出すこと | 事件や問題などを引き起こすこと |
つくり出すもの | ある状態や雰囲気 | 事件や問題 |
かかる時間 | 長い | 短い |
醸成と惹起は、つくり出すものとかかる時間が異なります。
醸成は別の状態に少しずつ変化することを表します。
一方、惹起はよくないことを短時間で引き起こすことを表します。
例文を見てみましょう。
- 発言しやすい雰囲気を醸成した。
- 民族争いにより内戦が惹起した。
「醸成」と「涵養」の違い
醸成と涵養には以下のような違いがあります。
醸成 | 涵養 | |
---|---|---|
意味 | 原料を発酵させて酒などを造ること 少しずつある状態をつくり出すこと | 自然に水がしみこむように、徐々に養い育てること |
つくり出すもの | ある状態や雰囲気 | よいとされること |
醸成と涵養は、つくり出すものが異なります。
醸成はその場にいる複数の人々によって別の状態に少しずつ変化させることを表しますが、涵養は一般的によいものに育っていくことを表します。
そのため、「Aさんの読解力を涵養する」は自然ですが、「Aさんの読解力を醸成する」は自然ではありません。
「醸成」の対義語
醸成には以下のような対義語があります。
- 急拵え(きゅうごしらえ)
間に合わせるために、急いでつくること - 即効
すぐに効き目が現れること - 速効
はやく効き目が現れること - 拙速(せっそく)
出来はよくないが、仕事が早いこと
「醸成」の英語訳
醸成を英語に訳すと、次のような表現になります。
- ferment
(発酵) - brew
(醸造する) - nurture
(育成) - foster
(育成する) - develop
(発展させる) - create
(作成する)
「醸成」のまとめ
以上、この記事では醸成について解説しました。
読み方 | 醸成(じょうせい) |
---|---|
意味 | 原料を発酵させて酒などを造ること 少しずつある状態をつくり出すこと |
語源 | 醸:発酵させて酒をつくる、時間をかけて自然につくり出す 成:出来上がる |
類義語 | 醸造 醸し出す 醸出 など |
対義語 | 急拵え 即効 速効 など |
英語訳 | ferment(発酵) brew(醸造する) nurture(育成) など |
醸成は、お酒などをつくり出す意味と、雰囲気を作り出す意味があります。
状況に応じて、きちんと使い分けましょう。