今回ご紹介する言葉は、熟語の「所謂(いわゆる)」です。
言葉の意味・使い方・語源・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「所謂」をざっくり言うと……
読み方 | 所謂(いわゆる) |
---|---|
意味 | 「世の中が言うところの」という意味の連体修飾語 |
語源 | 漢文由来の「所謂」と日本語の「いわゆる」の融合 |
類義語 | いわば、要するに、つまり、など |
英語訳 | so-called, what we(you, they) call, what is calledなど |
「所謂」の意味をスッキリ理解!
「所謂」の意味を詳しく
「所謂」とは、「世間が言うところの」や「俗に言う」という意味の言葉です。
「厳密に言えば異なるが、世間ではそう言われる」というニュアンスもあります。
ちなみに、「所謂」が漢字で表記されることは少なく、「いわゆる」とひらがなで表記されることが多いです。
これは、「所謂(いわゆる)」という読み方が常用漢字ではないからです。
「所謂」は後に続く体言(名詞、代名詞、数詞)を修飾する働きを持ちます。
「所謂」のあとには物事を簡潔にまとめた言葉が続きます。
たとえば、「彼はイケメンで背が高く、気遣いができる。所謂モテ男だ」と用います。
この場合は「イケメンで背が高く、気遣いができる」という長い内容を「モテ男」という言葉で簡潔にまとめています。
そんな「所謂」を使用する目的は以下の2つです。
- 前に出てきた言葉をわかりやすく説明すること
- 後に続く名詞に対する一般的な印象を呼び起こすこと
それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
「所謂」を用いる目的①:前に出てきた言葉をわかりやすく説明すること
「所謂」を用いる1つ目の目的は、前に出てきた言葉をわかりやすく説明することです。
たとえば、「彼は途中で顔色が悪くなって宿舎に戻ったが、所謂熱中症にかかったとのことだった」という文があったとします。
この例文では、「所謂」を用いることで、彼が置かれている状況を端的に「熱中症」というわかりやすい言葉で表現しています。
これにより、彼について漠然としたことしかわかっていなかったであろう聞き手は具体的な情報を得ることが出来ます。
「所謂」を用いる目的②:後に続く名詞に対する一般的な印象を呼び起こすこと
「所謂」を使用する2つ目の目的は、後に続く名詞に対する一般的な印象を呼び起こすことです。
「所謂」は「世間が言うところの」という意味であると説明いたしました。
「世間が言うところ」とは、もっと言えば「多くの人が言うところ」ということです。
したがって、「所謂」を使うことで、多くの人がその名詞に抱く一般的なイメージを聞き手に呼び起こすことが出来ます。
たとえば、「彼の表情は、所謂不合格者のそれとは違っていた」という文があったとします。この例文では、所謂は「不合格者」にかかっています。
この場合、話し手は不合格者そのものを強調しているのではありません。
不合格者というネガティブな響きから想像される落ち込んだ様子を聞き手に意識させているのです。
そうすることで、不合格者に対する一般的な印象と実際に不合格者となった彼の印象との対比を表現しています。
「所謂」の使い方
- 今彼女は、所謂脱水症状を起こしている。
- 彼の指導する姿は、所謂熱血教師そのものだった。
➊の例文では、彼女の現在の体調を、「脱水症状」であると端的に表現する目的で「所謂」が用いられています。
➋の例文では、熱血教師という言葉からイメージされる人物像を聞き手に喚起させる目的で「所謂」が用いられています。
「所謂」は便利な言葉ですが、多用すると印象が良くありません。
上から目線で述べているように感じられたり、知ったかぶりをしているように感じられるからです。
特に目上の人と話す時には注意しましょう。
「所謂」の語源
「所謂」は元々漢文で使用されていた言葉です。
意味は「多くの人がいうところの」ですが、「いわゆる」という読み方は当初されておらず、「謂(い)う所の」と書き下されていました。
というのも、「いわゆる」は元々日本で独自に用いられていた言葉だったからです。
「いわゆる」は「言う」と、受け身の意味を表す助動詞「ゆ」の連体形が組み合わさってできた言葉です。
ただ、持っている意味は「謂う所の」と同じく「多くの人が言うところの」でした。
そこで、同じ意味を持っているという理由で「いわゆる」を「所謂」と表記するようになりました。
「所謂(いわゆる)」は、出自が異なる言葉同士が合わさって出来たものだったのです。
「所謂」と間違えやすい言葉
「所謂」と間違えやすい言葉には以下のようなものが挙げられます。
- 所以(ゆえん)
- 所為(せい/しょい)
- 所詮(しょせん)
それぞれの言葉の意味について詳しく見ていきましょう。
所以(ゆえん)
「所以(ゆえん)」は「理由」という意味です。
その物事の根本にある原因のことを表します。
「〇〇が△△の所以だ」という形で用いることが多いです。
所為(せい/しょい)
「所為(せい/しょい)」は「しわざ」という意味です。
「良くない行い」というネガティブなニュアンスで用いられることが多いです。
「せい」と読む場合には、ひらがなで用いられることが多いです。
- 君の所為(せい)で会社の重大なプロジェクトが失敗してしまった。
- 自分の所為(しょい)を反省する。
所詮(しょせん)
「所詮」は「結局は」という意味です。
何か出来事や事実を総括する時に用いられます。
「思ったほどではなかった」というネガティブなニュアンスで用いられることが多いです。
「所謂」の類義語
所謂には以下のような類義語があります。
- 言わば:端的に言ってみれば
- 要するに:要約すると
- つまり:論理が最終的に落ち着くところでは
- 端的に言うと:物事を1語でまとめるさま
- 俗に言う:世間の人が言うところの
- 言うなれば:たとえて言うと
「所謂」の英語訳
所謂を英語に訳すと、次のような表現になります。
- so-called
(いわゆる) - what we(you, they) call
(世間(私たち、あなたたち、彼ら)が言うところの) - what is called
(世間が言うところの) - so to speak
(いわば)
“so-called” には「本当のところはわからないが」という否定的なニュアンスも含まれています。
使う時には注意しましょう。
まとめ
以上、この記事では「所謂」について解説しました。
読み方 | 所謂(いわゆる) |
---|---|
意味 | 「世の中が言うところの」という意味の連体修飾語 |
語源 | 漢文由来の「所謂」と日本語の「いわゆる」の融合 |
類義語 | いわば、要するに、つまり、など |
英語訳 | so-called, what we(you, they) call, what is calledなど |
「所謂」はいくつかの用法があるため、意味を知っておくと多くの場面で使える言葉です。
ぜひ、使い方等覚えてみてください。