今回ご紹介する言葉は、ことわざの「犬に論語(ろんご)」です。
言葉の意味や使い方・由来・類義語・英語訳についてわかりやすく解説します。
☆「犬に論語」をざっくり言うと……
読み方 | 犬に論語(ろんご) |
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意味 | 道理の通じない者には何を言っても無駄であるということ |
由来 | 論語は孔子の教えが書かれたありがたいものであるが、犬にいくら説き聞かせても無駄であるということから |
類義語 | 馬の耳に念仏、猫に小判、犬に小判など |
英語訳 | A dog does not understand.(犬は理解しない) |
「犬に論語」の意味をスッキリ理解!
「犬に論語」の意味を詳しく
「犬に論語」とは、道理の通じない者には何を言っても無駄であるということを意味することわざです。
「犬に論語」は、何かに対して理解する力が無かったり、そもそも聞く耳を持たなかったり、聞いたふりをして話を流したりするような人を批判する意味で使われます。したがって、このことわざは、基本的にはマイナスな意味合いになります。
たとえば、ある事柄に対して偏(かたよ)った考え方をしており、他の考え方を受けつけないような人に対しては、何を言っても意味は無いでしょう。いくら一生懸命話しても、他の考え方を受け入れないので、無駄に終わります。
このような場合に、「犬に論語」ということわざを使います。
また、自分の状態を言い表すときに「犬に論語」を使うこともあります。これは、自分にはその話は何らかの理由で理解することができないと伝えたい場合です。
理由として考えられるのは、話が専門的であることや、興味が無い分野であることです。このような使い方の場合には、謙遜(けんそん)や断り、自虐の意味が含まれます。
「馬の耳に念仏」との違い
似た意味を持つことわざに「馬の耳に念仏」があります。こちらも、「人の意見や忠告に耳を貸さず、何を言っても全く効果が無いということ」を意味することわざです。
一見、意味も同じであるため、完全な同義語であるように思えますが、「犬に論語」と「馬の耳に念仏」は使い方において違いがあるのです。
「馬の耳に念仏」は、目上の人に対して使うことができません。つまり、目下、もしくは同等の地位にいると考えられる人に対してしか使うことができないことわざなのです。
これは、「馬の耳に念仏」が、お坊さんが唱えるありがたい「念仏」を由来としていることわざであるからです。
基本的に、ありがたい念仏を唱えるお坊さんは、目上の存在であるといえます。逆に言うと、念仏を聞いている人の方が目下の人間に当たるのです。
逆に、「犬に論語」は、誰に対して使うかについての制限はありません。つまり、「馬の耳に念仏」とは異なり、目上の人に対しても使うことができるのです。
たとえば、上司が部下の意見を一切受け入れないような人であれば、その上司について「犬に論語」と表現することができます。ちなみに、この場面では「馬の耳に念仏」は使うことができません。
「犬に論語」の使い方
- あの大学教授は考えがあまりにも偏っており、何を言っても犬に論語だ。
- 僕にそんな難しい話をされても犬に論語だよ。
- 彼は仕事のやり方を一切覚える気が無い。どんなにわかりやすく説明したとしても犬に論語だ。
「犬に論語」の由来
「犬に論語」ということわざは、犬に論語を聞かせても理解できないことに由来しています。
「論語」は、中国の思想書であり、「儒教(じゅきょう)」の経典(きょうてん)(※)です。儒教は仏教とともに、東洋の文化を形成する上で基礎的な役割を果たしてきた宗教です。
「論語」には、儒教の祖と言える「孔子(こうし)」の教えが書かれています。
したがって、「論語」は「ありがたいもの」の代名詞なのです。キリスト教における「聖書」、イスラム教における「コーラン」のようなものです。
このことわざは、「論語」は非常にありがたいものではあるが、それを理解できない犬に読み聞かせても全く意味が無いということを表現しています。
- 経典(※):ある宗教において、信徒が守るべき教えを記した神聖な書
「犬に論語」の類義語
「犬に論語」には以下のような類義語があります。
- 馬の耳に念仏:人がいくら意見をしたとしても、全く効果の無いこと
- 猫に小判(こばん):価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 犬に小判:価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 兎(うさぎ)に祭文(さいもん):いくら意見をしたとしても無駄であること
- 牛に経文(きょうもん):いくら意見をしたとしても無駄であること
- 牛に説法(せっぽう)馬に銭:いくら意見をしたとしても無駄であること
- 馬に経文:いくら意見をしたとしても無駄であること
- 牛に対して琴を弾(だん)ず:志の低い人や愚かなものに対して高尚(こうしょう)な道理を説いても無駄であるということ
- 馬の耳に風:人の意見や忠告を聞き流すこと
- 馬耳東風(ばじとうふう):人の意見や忠告を聞き流すこと
- 豚に真珠(しんじゅ):価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 牛に麝香(じゃこう):価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 犬に星:価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 猫に胡桃(くるみ)を預ける:価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 犬に念仏猫に経:いくら意見をしたとしても無駄であること
- 犬の銭見たるが如(ごと)し:価値のわからない者には、どんな価値のあるものを与えても意味が無いこと
- 犬の前の説教:いくら意見をしたとしても無駄であること
「犬に論語」の英語訳
「犬に論語」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- A dog does not understand.
(犬は理解しない。) - Cast pearls before swine.
(豚に真珠を投げてやる。)
まとめ
以上、この記事では「犬に論語」について解説しました。
読み方 | 犬に論語(ろんご) |
---|---|
意味 | 道理の通じない者には何を言っても無駄であるということ |
由来 | 論語は孔子の教えが書かれたありがたいものであるが、犬にいくら説き聞かせても無駄であるということから |
類義語 | 馬の耳に念仏、猫に小判、犬に小判など |
英語訳 | A dog does not understand.(犬は理解しない) |
「犬に論語」の意味や使い方など理解することはできたでしょうか。マイナスな意味合いで使われることがほとんどであることわざであり、自分に対しては使われたくない言葉です。そのためにも、人の意見や忠告にはしっかり聞く耳をもつ姿勢は大事です。
また、「犬に論語」には類義語が数多くあります。どの類義語もただ暗記をするわけではなく、言葉の由来を頭でイメージしながら覚えると記憶にも残りやすいのではないかと思います。
「犬に論語」だけでなく、それ以外の類義語も知識として身につけておきたいですね。