畏敬の念は「崇高なものをおそれ敬う気持ち」という意味です。
この言葉の正しい使い方を説明することはできますか?
会話の中で急に難しい言葉を使われると、ドキッっとしますよね。「畏敬の念」も普段はあまり使わない言葉ですが、意味を知っておくと語彙力がグッとアップします。
この記事では、「畏敬の念」の意味や使い方を詳しく解説していきます。
☆「畏敬の念」をざっくり言うと……
読み方 | 畏敬の念(いけいのねん) |
---|---|
意味 | 崇高なものをおそれ敬う気持ち |
由来 | 畏:おそれうやまう 敬:うやまう 念:気持ち |
類義語 | 敬愛の念、崇敬の念、尊敬など |
対義語 | 軽蔑、軽侮、侮蔑など |
英語訳 | a feeling of awe(畏敬の念)など |
このページの目次
「畏敬の念」の意味
崇高なものをおそれ敬う気持ち
畏敬の念は「崇高なものをおそれ敬う気持ち」「圧倒的な存在を謹んで仰ぎ見る気持ち」を表します。
畏敬の念の表す「崇高なもの」としては以下のようなものが挙げられます。
- 神仏
- 大自然
- 偉大な人物 など
「畏敬の念」は、上記のような自分とかけ離れた存在や圧倒的なものをおそれ敬う気持ちを表すときに使う言葉です。
そのため、自分と対等な地位にあるものや身近な尊敬の対象に使われることはありません。
「おそれ敬う」の「おそれ」は、「恐れ」ではなく「畏れ」です。
恐怖心ではなく、相手を近づきがたいものとしてかしこまり敬う気持ちをいいます。
畏敬の念は、小学校や中学校の道徳教育でも取り扱われる概念です。
「生命に対する畏敬の念をもつこと」として学生指導要領に明記されており、道徳教育の学習内容の前提となっています。
「畏敬の念」の使い方
畏敬の念は、以下のように使います。
- 畏敬の念を持つ
- 畏敬の念を抱く
- 畏敬の念に打たれる
- 畏敬の念を覚える
- 畏敬の念を禁じ得ない
- 畏敬の念に堪(た)えない
- 畏敬の念を込める
それぞれの使い方について例文と一緒に見ていきましょう。
「畏敬の念を持つ」の使い方
「畏敬の念を持つ」は、崇高なものをおそれ敬う気持ちを持つことという意味です。
- 神仏の荘厳さに畏敬の念を持つ。
「畏敬の念を抱く」の使い方
「畏敬の念を抱く」は、崇高なものをおそれ敬う気持ちを持つことという意味です。
ひとつ前の畏敬の念を持つと同じ意味です。
- 初めて奈良の大仏を目にしたとき、私はその壮大さに畏敬の念を抱いた。
「畏敬の念に打たれる」の使い方
「畏敬の念に打たれる」は、崇高な存在に感動すること、心を動かされることという意味です。
- 命をかけて人命救助に臨む彼らの姿勢を目の当たりにし、畏敬の念に打たれた。
「畏敬の念を覚える」の使い方
「畏敬の念を覚える」は、自然と湧き上がったおそれ敬う気持ちを感じることという意味です。
- 富士山頂から拝むご来光に、畏敬の念を覚えた。
- ご来光
山頂で見る、尊く荘厳な日の出
「畏敬の念を禁じ得ない」の使い方
「畏敬の念を禁じ得ない」は、おそれ敬う気持ちを抱かずにはいられない様子という意味です。
- 一代で大企業を築き上げた彼には畏敬の念を禁じ得ない。
「畏敬の念に堪えない」の使い方
「畏敬の念に堪えない」は、おそれ敬う気持ちが抑えられないことという意味です。
- 地図を作るために日本中を歩いて回った伊能忠敬の偉業を思うと、畏敬の念に堪えない。
「畏敬の念を込める」の使い方
「畏敬の念を込める」は、崇高なものをおそれ敬う気持ちを込めることという意味です。
- 畏敬の念を込めて屋久杉に触れた。
「畏敬の念」の由来
「畏敬」の漢字には以下のような意味があります。
- 畏
おそれおおい、おそれうやまう - 敬
うやまう、うやまい謹む - 念
思い、気持ち
「畏」は、「かしこ」とも読みます。恐怖の感情ではなく、高貴な人物や自分よりも優れた相手を敬いかしこまる気持ちを表します。
これらの意味から、「畏敬」は崇高なものや偉大な人を、おそれうやまうことを表します。
さらに、「思い」「気持ち」という意味の「念」が合わさり、畏敬の念の「崇高なものをおそれ敬う気持ち」という意味が成り立っています。
「畏敬の念」の類義語
畏敬の念には以下のような類義語があります。
- 敬愛の念
「親しみを持って尊敬する」気持ち - 崇敬の念
「偉大な存在をあがめ敬う」気持ち - 尊敬
相手の人格や行動などを尊いもの・優れたものと認めて敬うこと
「畏敬の念」と「敬愛の念」の違い
敬愛の念は、「尊敬と親しみを持つ気持ち」という意味です。
畏敬の念と敬愛の念には以下のような違いがあります。
- 畏敬の念
「おそれ敬う」気持ち - 敬愛の念
「親しみを持って尊敬する」気持ち
敬愛の念には、「おそれ」という意味はありません。
畏敬の念よりも軽やかな印象を与えます。
「畏敬の念」と「崇敬の念」の違い
崇敬の念は、「偉大な存在をあがめ敬う気持ち」という意味です。
畏敬の念と崇敬の念には以下のような違いがあります。
- 畏敬の念
「おそれ敬う」気持ち - 崇敬の念
「偉大な存在をあがめ敬う」気持ち
崇敬の念は、敬愛の念と同様に「おそれ」という意味を持ちません。
神仏を深く信仰するように、尊んでありがたく思う様子を表します。
「畏敬の念」と「尊敬」の違い
尊敬は、「相手の人格や行動などを尊いもの・優れたものと認めて敬うこと」という意味です。
畏敬の念と尊敬には以下のような違いがあります。
- 畏敬の念
自分とかけ離れた崇高存在や圧倒的なもののみを指す - 尊敬
対象物に限定がなく、身近なものにも使える
上記のように、畏敬の念と尊敬は使える対象が異なります。
畏敬の念よりも尊敬の方が汎用性が高く、幅広い場面で使うことが可能です。
「畏敬」の類義語
畏敬には以下のような類義語があります。
- 崇拝(すうはい)
心から傾倒して敬うこと - 崇敬(すうけい)
あがめ敬うこと - 敬愛(けいあい)
尊敬し、親しみの気持ちを持つこと - 畏懼(いく)
おそれはばかること - 敬畏(けいい)
おそれ敬うこと、心から敬うこと - 敬仰(けいぎょう)
あおぎ敬うこと - 尊崇(そんすう)
尊びあがめること - 推尊(すいそん)
あがめ尊ぶこと - 讃仰(さんぎょう)
聖人や偉人などの徳をあおぎ尊ぶこと
「畏敬の念」の対義語
畏敬の念には以下のような対義語があります。
いずれも、相手を馬鹿にしたり、見下したりするニュアンスが共通しています。
- 軽蔑(けいべつ)
いやしいもの・劣ったものとしてさげすむこと - 軽侮(けいぶ)
人を軽んじたり見下したりしてばかにすること - 侮蔑(ぶべつ)
人を見下してさげすむこと - 蔑視(べっし)
相手をあなどり見下すこと - 軽視(けいし)
軽く見て価値を認めないこと - 卑しめる(いやしめる)、卑しむ(いやしむ)
下品なもの・価値のないものとしてさげすむこと - 侮る(あなどる)
人を軽く見てばかにすること - 蔑む(さげすむ)
相手を自分よりも劣るもの・価値の低いものとして見ること - 貶める(おとしめる)
劣ったものとしてさげすむこと - 見下す(みくだす)
相手をばかにして見ること - 見くびる
相手を軽く見てあなどること - 馬鹿にする
相手を軽く見てあなどること
「畏敬の念」の英語訳
畏敬の念を英語に訳すと、次のような表現になります。
- a feeling of awe
(おそれ敬う気持ち) - a sense of awe
(おそれ敬う気持ち) - be struck with awe
(畏敬の念に打たれる) - awesome
(畏敬の念に満ちた) - reverence
(崇敬、尊敬、敬意)
“awe” は、「おそれ」「畏敬」「畏怖」を意味します。
“awesome” は、 “awe” に形容詞化させる接尾辞 “some” がついた単語です。
“awesome” は上記の意味のほか、ネイティブスラングでは「最高」「かっこいい」「素晴らしい」という意味で使われています。
「崇高なものをおそれ敬う」という意味から派生した使い方です。
ただし、俗語のため、公の場面ではこの意味では使えません。
「尊敬」の英語訳
畏敬の念の類義語である「尊敬」を英語に訳すと、次のような表現になります。
- respect
(尊敬、敬意、尊敬する) - look up to〜
(〜を尊敬する)
「畏敬の念」と「畏怖の念」
畏敬の念と似た言葉に、畏怖(いふ)の念があります。
「畏怖の念」は漢字の通り、「人やものに対して恐怖を抱き、かしこまる気持ち」を表します。
「畏敬の念」と「畏怖の念」の違い
- 畏敬の念
崇高なものをおそれ敬って、かしこまる気持ち - 畏怖の念
人やものに対して恐怖を抱き、かしこまる気持ち
どちらも「かしこまる」という意味は共通していますが、その理由に違いがあります。
「畏敬の念」のまとめ
以上、この記事では「畏敬の念」について解説しました。
読み方 | 畏敬の念(いけいのねん) |
---|---|
意味 | 崇高なものをおそれ敬う気持ち |
由来 | 畏:おそれうやまう 敬:うやまう 念:気持ち |
類義語 | 敬愛の念、崇敬の念、尊敬など |
対義語 | 軽蔑、軽侮、侮蔑など |
英語訳 | a feeling of awe(畏敬の念)など |
日常的に登場する言葉ではありませんが、裏を返せば間違えることが許されないかしこまった場面で使われる言葉です。
この機会に意味や使い方を正しく押さえておきましょう。